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焼きそばとスープと彼女
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シューッ!
電気ポットから蒸気が上がる。沸騰したようだ。
俺はカップ焼きそばの蓋を開け、ソースとかやくの袋を取り出す。
そして麺を持ち上げて、その下にかやくを入れる。湯切りのときに流れないようにするためだ。
「先輩、意外とそういうとこマメですよね」
横で見ていた後輩がつぶやく。
この焼きそばは、昨夜彼女を迎えに行ったときに買ってきたものだ。
「まあな、こぼれるともったいないし」
「なるほどー」
彼女も俺の真似をして、麺の下にかやくを入れる。
「慣れてないと、ここで一緒にソースを入れちゃう人っているんですよねー」
「ま、最悪でも湯切りした後にウスターソースとか味塩コショウを絡めれば形になるからな」
「先輩って料理のリカバリー上手ですからね。この前も私が卵焼きの味付け失敗したときにケチャップでごまかしてくれたりとか」
「なんだよ、褒めてもなにもやらんぞ」
「えー、ケチですねえ」
彼女はにやにやしながらこちらを見る。
「わかったよ、一口ずつ交換しよう、な?」
「わーい。私は塩味にしたけどソースのほうも気になってたんですよね」
*
そうこうしているうちに、そろそろ3分が過ぎようとしている。
「わかめスープあるけど、飲むか?」
「あ、いただきます」
俺はマグカップを2つ用意し、スープの素を入れる。そして、そこにポットのお湯ではなく、焼きそばから湯切りしたお湯を注ぎ込んだ。
「あ、それって北海道方式ですね?」
「よく知ってるな」
「食べたことはないんですけどね。前に友達が話してたのを思い出して」
北海道には、最初から(湯切りしたお湯で作るための)スープの素が付属する焼きそばが主流だという話だ。
近くには売っていないが、前に物産展で買ってきたことがある。麺の油分を含んだお湯で作るスープは、少しジャンキーだが絶妙な味なのだ。
「なるほど、油が浮いてるわけですね。ちょっと塩分とカロリーが気になるんですが」
「昨夜はたくさん運動したから大丈夫だろ、たぶん」
「もう、先輩ったら」
彼女は照れくさそうに目をそらす。
*
「それじゃ、いただきまーす」
時計は11時を過ぎたところ。遅く起きた休日。二人とも、起きてから初めて口に入れる食べ物だ。
しばらく無言ですする音が響く。
「あ、先輩キャベツついてる」
彼女はそう言いながら、俺の口元に指を伸ばし、キャベツのかすをつまんで口に運ぶ。
「……なあ、そろそろ俺のことを名前で呼んでくれてもいいんじゃないか?」
「えー、私にとって先輩は先輩ですよ」
笑いながらはぐらかす彼女。この部屋で二人で朝を迎えたのは何度目だろうか。
俺たちの関係は進むようで進まないが、今はこれでもいいのかもしれない。
電気ポットから蒸気が上がる。沸騰したようだ。
俺はカップ焼きそばの蓋を開け、ソースとかやくの袋を取り出す。
そして麺を持ち上げて、その下にかやくを入れる。湯切りのときに流れないようにするためだ。
「先輩、意外とそういうとこマメですよね」
横で見ていた後輩がつぶやく。
この焼きそばは、昨夜彼女を迎えに行ったときに買ってきたものだ。
「まあな、こぼれるともったいないし」
「なるほどー」
彼女も俺の真似をして、麺の下にかやくを入れる。
「慣れてないと、ここで一緒にソースを入れちゃう人っているんですよねー」
「ま、最悪でも湯切りした後にウスターソースとか味塩コショウを絡めれば形になるからな」
「先輩って料理のリカバリー上手ですからね。この前も私が卵焼きの味付け失敗したときにケチャップでごまかしてくれたりとか」
「なんだよ、褒めてもなにもやらんぞ」
「えー、ケチですねえ」
彼女はにやにやしながらこちらを見る。
「わかったよ、一口ずつ交換しよう、な?」
「わーい。私は塩味にしたけどソースのほうも気になってたんですよね」
*
そうこうしているうちに、そろそろ3分が過ぎようとしている。
「わかめスープあるけど、飲むか?」
「あ、いただきます」
俺はマグカップを2つ用意し、スープの素を入れる。そして、そこにポットのお湯ではなく、焼きそばから湯切りしたお湯を注ぎ込んだ。
「あ、それって北海道方式ですね?」
「よく知ってるな」
「食べたことはないんですけどね。前に友達が話してたのを思い出して」
北海道には、最初から(湯切りしたお湯で作るための)スープの素が付属する焼きそばが主流だという話だ。
近くには売っていないが、前に物産展で買ってきたことがある。麺の油分を含んだお湯で作るスープは、少しジャンキーだが絶妙な味なのだ。
「なるほど、油が浮いてるわけですね。ちょっと塩分とカロリーが気になるんですが」
「昨夜はたくさん運動したから大丈夫だろ、たぶん」
「もう、先輩ったら」
彼女は照れくさそうに目をそらす。
*
「それじゃ、いただきまーす」
時計は11時を過ぎたところ。遅く起きた休日。二人とも、起きてから初めて口に入れる食べ物だ。
しばらく無言ですする音が響く。
「あ、先輩キャベツついてる」
彼女はそう言いながら、俺の口元に指を伸ばし、キャベツのかすをつまんで口に運ぶ。
「……なあ、そろそろ俺のことを名前で呼んでくれてもいいんじゃないか?」
「えー、私にとって先輩は先輩ですよ」
笑いながらはぐらかす彼女。この部屋で二人で朝を迎えたのは何度目だろうか。
俺たちの関係は進むようで進まないが、今はこれでもいいのかもしれない。
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