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ドラゴンクエスト1
第26話:過去と今を結ぶ復活の呪文
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予報通り、昭和の日(両親などは未だに「みどりの日」と言ったりする)の土曜日は雨だった。今日は家で過ごそうかと思う。早起きしたので、前に少しだけプレイした『ドラゴンクエスト』をやってみよう。
この前はハルキから送られてきたパスワードを入れてスタートしたが、今回はコンティニューではなくニューゲームで序盤だけでも触ってみることにした。
始まりは王様の前。竜王を倒すというゲームの目的が告げられる。さらに兵士に話を聞くと、姫がさらわれたことも教えてくれた(敢えて王様本人に言わせないのが上手だと思った)。
室内の宝箱を取り(真上に移動した上で「とる」コマンドが少々手間だとは思った)、人の話を聞いて宝箱を開け、鍵を使って扉を開けるまでがチュートリアルとなっているようだ。たいまつや鍵は必要のない場面で使おうとしても消えたりはしない。
リセットして実験。今度は鍵だけ取って外に出てみる。すると残った宝箱は消えてしまった。なるほど、だから鍵の宝箱だけ奥の方に置いてあったということか。これなら、わざとスルーしない限り120ゴールドとたいまつを取り逃すことはない。宝箱自体を残しておけば問題ないのだろうが、おそらく容量の都合で残せないのだろう。
再びリセットして、お金を回収して隣町へ。120ゴールドでどの武器と防具を買うのか、選択肢が豊富だ。ハルキは棍棒と布の服を買ったみたいだが、竹ざお+皮の服という防御重視のパターンや、竹ざお+布の服+皮の盾でとりあえずフル装備というのも考えられる。道具屋で売っている竜のうろこも、装飾品として守備力を高められるようだ。
**
「今度はドラクエ1か。レベル上げがとにかく大変だった覚えがあるなぁ」
朝食を食べながら父と会話する。昨夜、FF1についてはクリア報告をした。ついでにエンディングまで「実演」して見せたら、すごく喜んでくれた。
「父さんも最初は自力で進めようとしてたけど、結局、友達だか兄貴だかに聞いたパスワードでクリアしちゃったんだよな」
*
「ほりいゆうじ、えにつくす、どらごくえすと、だよ……よし、通ったな」
朝食後、父が僕の部屋に来てそのパスワードとやらを試した。レベル25の勇者が登場する。経験値は5万を超えている。
「たしか、ここから始めてエンディングまで見たんだっけかな」
「メーカーの名前とか入ってるけど、仕込んだやつなのかな」
「いや、偶然だろう。狙ってたならちゃんとした名前にすると思うぞ」
勇者の名前は「おっ゜て」と表記されている。たしかに、こんなの読めない。
「こういうのもあるぞ。”だいすけと ゆうきとかなえ それとみるくだぞ”、っと」
「なんで?!」
ダイスケ(伯父)、ユウキ(父)、カナエ(叔母)、ミルク(猫)の名前が入った復活の呪文に僕は驚いた。勇者の名前は「0つぬょ」と、また読めないやつだったが。
「復活の呪文はゲームの現在の状態を文字列に置き換えたものなんだ。だから、偶然意味が通ってしまうこともあるんだよ」
「でも、偶然こんなのが出来るの?」
「高校生くらいの頃かな、兄貴がネットで復活の呪文作成ツールってのをダウンロードして、色々作って遊んでたんだ。こんなふうに、きょうだいの名前が入るパターンもツールで検索してたな」
驚く僕に対して、父が種明かしをする。
「ま、これはあくまで邪道だからな。正規の方法でプレイしたほうが達成感はあるだろう。友達とリレー方式で進めるってのも面白そうだな」
*
父が部屋を出ていった後、僕は改めて交換日記のページを見る(なお日記自体は今は日々木さんの手元にある。僕が見たのはスマホで撮影したページである)。
ぜだびろぐ ぬりそてぬわと
ねふむゆぎ いとり
日々木さんがプレイしていた冒険の続き。日記では、リムルダールまで到達して帰ってきたという。説明書の地図によるとラダトームの南東に位置するようだ。まずは、そこを目指してみようと思う。
***
注:
DQ1については、前章のFF1と並行しつつ何度か触れているので、この章から読み始めた方は以下の話も読んでいただけるとありがたいです。
第18話:パスワードは時空をワープ
第19話:息抜きのレベル上げと写メ
第24話:二大作品の黎明と最終決戦
この前はハルキから送られてきたパスワードを入れてスタートしたが、今回はコンティニューではなくニューゲームで序盤だけでも触ってみることにした。
始まりは王様の前。竜王を倒すというゲームの目的が告げられる。さらに兵士に話を聞くと、姫がさらわれたことも教えてくれた(敢えて王様本人に言わせないのが上手だと思った)。
室内の宝箱を取り(真上に移動した上で「とる」コマンドが少々手間だとは思った)、人の話を聞いて宝箱を開け、鍵を使って扉を開けるまでがチュートリアルとなっているようだ。たいまつや鍵は必要のない場面で使おうとしても消えたりはしない。
リセットして実験。今度は鍵だけ取って外に出てみる。すると残った宝箱は消えてしまった。なるほど、だから鍵の宝箱だけ奥の方に置いてあったということか。これなら、わざとスルーしない限り120ゴールドとたいまつを取り逃すことはない。宝箱自体を残しておけば問題ないのだろうが、おそらく容量の都合で残せないのだろう。
再びリセットして、お金を回収して隣町へ。120ゴールドでどの武器と防具を買うのか、選択肢が豊富だ。ハルキは棍棒と布の服を買ったみたいだが、竹ざお+皮の服という防御重視のパターンや、竹ざお+布の服+皮の盾でとりあえずフル装備というのも考えられる。道具屋で売っている竜のうろこも、装飾品として守備力を高められるようだ。
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「今度はドラクエ1か。レベル上げがとにかく大変だった覚えがあるなぁ」
朝食を食べながら父と会話する。昨夜、FF1についてはクリア報告をした。ついでにエンディングまで「実演」して見せたら、すごく喜んでくれた。
「父さんも最初は自力で進めようとしてたけど、結局、友達だか兄貴だかに聞いたパスワードでクリアしちゃったんだよな」
*
「ほりいゆうじ、えにつくす、どらごくえすと、だよ……よし、通ったな」
朝食後、父が僕の部屋に来てそのパスワードとやらを試した。レベル25の勇者が登場する。経験値は5万を超えている。
「たしか、ここから始めてエンディングまで見たんだっけかな」
「メーカーの名前とか入ってるけど、仕込んだやつなのかな」
「いや、偶然だろう。狙ってたならちゃんとした名前にすると思うぞ」
勇者の名前は「おっ゜て」と表記されている。たしかに、こんなの読めない。
「こういうのもあるぞ。”だいすけと ゆうきとかなえ それとみるくだぞ”、っと」
「なんで?!」
ダイスケ(伯父)、ユウキ(父)、カナエ(叔母)、ミルク(猫)の名前が入った復活の呪文に僕は驚いた。勇者の名前は「0つぬょ」と、また読めないやつだったが。
「復活の呪文はゲームの現在の状態を文字列に置き換えたものなんだ。だから、偶然意味が通ってしまうこともあるんだよ」
「でも、偶然こんなのが出来るの?」
「高校生くらいの頃かな、兄貴がネットで復活の呪文作成ツールってのをダウンロードして、色々作って遊んでたんだ。こんなふうに、きょうだいの名前が入るパターンもツールで検索してたな」
驚く僕に対して、父が種明かしをする。
「ま、これはあくまで邪道だからな。正規の方法でプレイしたほうが達成感はあるだろう。友達とリレー方式で進めるってのも面白そうだな」
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父が部屋を出ていった後、僕は改めて交換日記のページを見る(なお日記自体は今は日々木さんの手元にある。僕が見たのはスマホで撮影したページである)。
ぜだびろぐ ぬりそてぬわと
ねふむゆぎ いとり
日々木さんがプレイしていた冒険の続き。日記では、リムルダールまで到達して帰ってきたという。説明書の地図によるとラダトームの南東に位置するようだ。まずは、そこを目指してみようと思う。
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注:
DQ1については、前章のFF1と並行しつつ何度か触れているので、この章から読み始めた方は以下の話も読んでいただけるとありがたいです。
第18話:パスワードは時空をワープ
第19話:息抜きのレベル上げと写メ
第24話:二大作品の黎明と最終決戦
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