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本編
王道海鮮!あさりのボンゴレ
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「おはようございます、砂は抜けましたか?」
「ああ、一晩経ったからな。もう食べられると思う」
昨日、新鮮な活アサリを買ったことを伝えている。今日のパスタはもちろんボンゴレだ。殻付きで250グラムあるので、2人分にはちょうどいいだろう。
「貝の砂抜き、失敗することが多いんですけど先輩はどうしてます?」
「俺はこれを使ってる。ザル付きのボウルだな」
「野菜の水切りに使うやつですね」
「そう。あとはフタをして暗くするのもポイントだ」
テーブルの上に取り出して説明する。ザルを持ち上げると、ボウルの底にはまだ少し砂があった。
「貝が呼吸できるように、水は浅めに張るんだ。ただし水の量が少なくてもいけないから、ザルで底上げしておく」
「なるほど、これなら砂も下に落ちてきれいになりますからね」
「ボウルに入れただけだと、せっかく吐いた砂をまた吸い込むからな」
「確かに!」
「あと水はこまめに取り替えること。昨夜寝る前と、今朝起きた後に替えておいた」
「塩の加減はどうしてます?」
「海水と同じ約3%だな。1カップの水に小さじ1杯の塩がわかりやすい目安だ」
「200ml、つまり200グラムの水に対して6グラムの塩ってことですね」
算数のテストでよく見るパターンだが、これだと実際の濃度は3%より少し低くなる。もっとも海水の塩分だって環境によって異なるし、長期的に飼育するわけでもないので大雑把でいいだろう。
*
「さて、さっそく作るか。今回はワンパン方式でいく」
アサリを軽く洗って、火を入れたフライパンの中に入れていく。同時に日本酒を注ぎ込んでフタをする。
「酒蒸しにするんですね」
「ああ、そのままおかずとしても食べられるぞ」
このレシピは、実家で多めに作った酒蒸しをパスタにアレンジしたのが始まりである。
*
「わかってはいるんですけど、ちょっとかわいそうですよね」
「まあ、これが生き物を食べるってことだからな」
貝の料理というのは、家庭において「生き物を殺して食べる」というのを実感する数少ない機会である。塩抜きの過程で、元気に管を伸ばしている姿を見ているとなおさらだ。
「殻が開いてきたら、なるべく早く取り上げていくぞ」
大きさが不揃いだと、殻が開くまでの時間に差が出やすい。火が通り過ぎると硬くなるので、順次取り上げていくのが望ましい。
「あ、手伝います」
次々に殻が開いていく。幸い、死んでいた貝はないようだ。
「それじゃ、パスタを茹でていくか」
「フライパン、そのまま使うんですね」
「ああ、貝の旨味が出ているからな」
200グラムのパスタに対し、2倍+150である550mlのお湯を量り、フライパンの中に入れる。沸騰したら半分に折ったスパゲッティを入れる。
「今のうちに貝の身を取っておくぞ」
「あ、殻付きのまま使うんじゃないですね」
「もう一度炒め合わせるし、単純に食べづらいからな」
店でボンゴレを頼むと殻付きのまま出てきたりするが、食べやすさを考えるのならば身取っておくべきだろう。
「貝柱が美味いからな。スプーンで全部こそげとっていくんだ」
「結構、大変ですね」
「まあパスタが茹だるまでに時間はある。俺がやっとくから、パスタのほうをかき混ぜておいてくれるか?」
「はーい!」
こういう時、手がもう一つあるのは助かる。一人だと同時進行するのが難しい。俺は身取りを終えると、唐辛子とニンニクを刻んでおいた。
*
「先輩、そろそろいいんじゃないですか?」
すでにパスタは規定の茹で時間を過ぎた。お湯も煮詰まって少なくなっている。
「そうだな。そろそろ仕上げるか」
フライパンの中にオリーブオイルを注ぎ、アサリの身と薬味を入れる。
「味付けはどうします?」
「基本的には貝の塩気だけでも十分だけど……少し醤油入れるか」
味見をして、やや物足りなかったので醤油を足す。鍋肌から入れて香りを付ける。
「最後に、これを少し入れる」
「出ました、味の素!」
「貝の旨味を引き立てるには、余計な風味のない純粋なアミノ酸が一番だからな」
味の素は妥協でも手抜きでもない。今回のように単一の食材を使うような場合、余計な風味を足さずに純粋に旨味を補える調味料こそがベストな選択肢となるのである。
「最後にもう少し煮詰めて……こんなところか」
火を止めて、二つの皿に均等に盛り付ける。
「最後に、これを散らそうか」
俺はベランダに出してあったバジルの鉢植えから葉っぱを少し摘み取って、軽く水で洗うと細かく刻んで振りかけた。
「いい香りですね」
「ああ、今はまだ小さいけど、大きくなったらジェノベーゼでも作りたいな」
先々週に苗を買ってきたバジル。すくすくと育ってきた。
*
「お酒と醤油、和風ボンゴレって感じですね」
「まあベースは酒蒸しだからそうなるな。白ワインとか使ってもいいかも知れない」
いつものように、まずは半分ほど平らげてから彼女が言う。
「そういえば本格的な海鮮パスタって初めてですね」
「確かにな。コスパを考えるとあんまり海産物は買わないからなぁ」
「先輩の実家、確か海の近くでしたよね」
「ああ。この季節になると近所の漁師さんにハマグリ分けてもらったりしてたな」
ハマグリはアサリよりもさらに高価なのでまず買わないが、このレシピは本来はハマグリで作っていたものだ。
「海、いいですね。ちょっと気が早いですけど、夏休みに行ってみたいなぁ」
**
「それじゃ先輩、また明日!」
「ああ、気をつけて帰れよ」
あれから夏休みの計画について少し話をした。同じ講義で仲良くなったグループで行こうか、泊まるならどこにしようか等。3年生はそろそろ就職活動で忙しくなるので、うまく予定を合わせられるかはわからないが。
大学生活はモラトリアムとも言われて、いくらでも時間があるように錯覚してしまうのだが、決してそんなことはない。今できること……いや、今しかできないことを全力でやっていきたいと改めて思うのであった。
「ああ、一晩経ったからな。もう食べられると思う」
昨日、新鮮な活アサリを買ったことを伝えている。今日のパスタはもちろんボンゴレだ。殻付きで250グラムあるので、2人分にはちょうどいいだろう。
「貝の砂抜き、失敗することが多いんですけど先輩はどうしてます?」
「俺はこれを使ってる。ザル付きのボウルだな」
「野菜の水切りに使うやつですね」
「そう。あとはフタをして暗くするのもポイントだ」
テーブルの上に取り出して説明する。ザルを持ち上げると、ボウルの底にはまだ少し砂があった。
「貝が呼吸できるように、水は浅めに張るんだ。ただし水の量が少なくてもいけないから、ザルで底上げしておく」
「なるほど、これなら砂も下に落ちてきれいになりますからね」
「ボウルに入れただけだと、せっかく吐いた砂をまた吸い込むからな」
「確かに!」
「あと水はこまめに取り替えること。昨夜寝る前と、今朝起きた後に替えておいた」
「塩の加減はどうしてます?」
「海水と同じ約3%だな。1カップの水に小さじ1杯の塩がわかりやすい目安だ」
「200ml、つまり200グラムの水に対して6グラムの塩ってことですね」
算数のテストでよく見るパターンだが、これだと実際の濃度は3%より少し低くなる。もっとも海水の塩分だって環境によって異なるし、長期的に飼育するわけでもないので大雑把でいいだろう。
*
「さて、さっそく作るか。今回はワンパン方式でいく」
アサリを軽く洗って、火を入れたフライパンの中に入れていく。同時に日本酒を注ぎ込んでフタをする。
「酒蒸しにするんですね」
「ああ、そのままおかずとしても食べられるぞ」
このレシピは、実家で多めに作った酒蒸しをパスタにアレンジしたのが始まりである。
*
「わかってはいるんですけど、ちょっとかわいそうですよね」
「まあ、これが生き物を食べるってことだからな」
貝の料理というのは、家庭において「生き物を殺して食べる」というのを実感する数少ない機会である。塩抜きの過程で、元気に管を伸ばしている姿を見ているとなおさらだ。
「殻が開いてきたら、なるべく早く取り上げていくぞ」
大きさが不揃いだと、殻が開くまでの時間に差が出やすい。火が通り過ぎると硬くなるので、順次取り上げていくのが望ましい。
「あ、手伝います」
次々に殻が開いていく。幸い、死んでいた貝はないようだ。
「それじゃ、パスタを茹でていくか」
「フライパン、そのまま使うんですね」
「ああ、貝の旨味が出ているからな」
200グラムのパスタに対し、2倍+150である550mlのお湯を量り、フライパンの中に入れる。沸騰したら半分に折ったスパゲッティを入れる。
「今のうちに貝の身を取っておくぞ」
「あ、殻付きのまま使うんじゃないですね」
「もう一度炒め合わせるし、単純に食べづらいからな」
店でボンゴレを頼むと殻付きのまま出てきたりするが、食べやすさを考えるのならば身取っておくべきだろう。
「貝柱が美味いからな。スプーンで全部こそげとっていくんだ」
「結構、大変ですね」
「まあパスタが茹だるまでに時間はある。俺がやっとくから、パスタのほうをかき混ぜておいてくれるか?」
「はーい!」
こういう時、手がもう一つあるのは助かる。一人だと同時進行するのが難しい。俺は身取りを終えると、唐辛子とニンニクを刻んでおいた。
*
「先輩、そろそろいいんじゃないですか?」
すでにパスタは規定の茹で時間を過ぎた。お湯も煮詰まって少なくなっている。
「そうだな。そろそろ仕上げるか」
フライパンの中にオリーブオイルを注ぎ、アサリの身と薬味を入れる。
「味付けはどうします?」
「基本的には貝の塩気だけでも十分だけど……少し醤油入れるか」
味見をして、やや物足りなかったので醤油を足す。鍋肌から入れて香りを付ける。
「最後に、これを少し入れる」
「出ました、味の素!」
「貝の旨味を引き立てるには、余計な風味のない純粋なアミノ酸が一番だからな」
味の素は妥協でも手抜きでもない。今回のように単一の食材を使うような場合、余計な風味を足さずに純粋に旨味を補える調味料こそがベストな選択肢となるのである。
「最後にもう少し煮詰めて……こんなところか」
火を止めて、二つの皿に均等に盛り付ける。
「最後に、これを散らそうか」
俺はベランダに出してあったバジルの鉢植えから葉っぱを少し摘み取って、軽く水で洗うと細かく刻んで振りかけた。
「いい香りですね」
「ああ、今はまだ小さいけど、大きくなったらジェノベーゼでも作りたいな」
先々週に苗を買ってきたバジル。すくすくと育ってきた。
*
「お酒と醤油、和風ボンゴレって感じですね」
「まあベースは酒蒸しだからそうなるな。白ワインとか使ってもいいかも知れない」
いつものように、まずは半分ほど平らげてから彼女が言う。
「そういえば本格的な海鮮パスタって初めてですね」
「確かにな。コスパを考えるとあんまり海産物は買わないからなぁ」
「先輩の実家、確か海の近くでしたよね」
「ああ。この季節になると近所の漁師さんにハマグリ分けてもらったりしてたな」
ハマグリはアサリよりもさらに高価なのでまず買わないが、このレシピは本来はハマグリで作っていたものだ。
「海、いいですね。ちょっと気が早いですけど、夏休みに行ってみたいなぁ」
**
「それじゃ先輩、また明日!」
「ああ、気をつけて帰れよ」
あれから夏休みの計画について少し話をした。同じ講義で仲良くなったグループで行こうか、泊まるならどこにしようか等。3年生はそろそろ就職活動で忙しくなるので、うまく予定を合わせられるかはわからないが。
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