Hな短編集・プロポーズ編

矢木羽研

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同窓会でお持ち帰りした女子にプロポーズしたら玉砕したけどフラグは折れてない模様

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「……は?私があんたのために毎日味噌汁を作れって?絶対ヤダし」

***

事の起こりは数時間前に遡る。久しぶりに高校の同窓会があり、当時はあまり仲が良かったわけでもない女の子と意気投合。
身の上話をするうちにお互いにフリーということがわかり、俺の部屋にお持ち帰りすることに成功した。

いい雰囲気だし、お互い三十路ということもあり、お付き合いを飛び越えてプロポーズしてやろうかと思った。

「毎朝、俺のために味噌汁を作ってくれないか?」

とっさに出たセリフがこれである。そして、彼女に鼻で笑われたというわけだ。

「だいたい、私に主婦になれっての?言っちゃなんだけど、私のほうが稼いでると思うからね?」
「うっ……それは、まあ確かに」

お互い、同じくらいの規模の中小企業に勤めているらしいことはわかっている。しかし、俺の会社は自動車のエンジン周りの部品を扱う会社で、彼女の会社は成長著しいAI技術系のベンチャー企業。将来性の違いは明らかだ。しかも俺のところでは、近いうちに早期退職者を募るという噂まで流れている。

「そもそもねぇ、いくら酔ってるとはいえプロポーズの言葉としてはあんまりじゃない?古すぎるというか……」
「ごめん……」

子供の頃にドラマか何かで見て憧れていたセリフだった。時代錯誤な感じはしていたが、一度言ってみたかったというやつだ。

「ま、そういうわけで残念でした!今後に良い出会いがあることをお祈りいたしまーす♪」

彼女は、俺の用意した缶ビールを傾け、ケラケラと笑いながらそう言った。

「……出ていかないのかよ?」
「えー、だって泊めてくれるって言ったのはあんたのほうでしょ。それに寒空の下に女の子をほっぽり出すとかあり得ないよね?」
「まあ、そりゃそうだな……」

俺が勝手に招き入れて、勝手に告白して玉砕した。それだけの話だ。今さら追い出すことなんて出来るはずがない。

「そういうわけで、今夜は一晩お世話になるからね」
「あーもう、勝手にしてくれよ」

ソファーに深く腰掛ける彼女を見ながら俺は言った。

「なに釣れない返事なんかしちゃってるの。逃した魚に興味はないタイプ?」
「逃げたのはお前のほうだろ……」

そもそも、それを言うなら「釣った魚に興味はない」ではないのか。まあ状況的には彼女の言う通りだが。

「あはは、そりゃ確かにそうだね」

彼女は手を叩きながら大笑いをしてはしゃぐ。脚が宙を蹴り上げ、フレアスカートがふわりとめくれあがった。

「あー、見たでしょ、エッチ」

俺の視線に気づくと、彼女はやはり笑いながらスカートを押さえる。

「なんだよ、わざとかと思ったぞ」
「そんなわけないでしょ。だいたいあんたに見せる必要なんてないのに。それにしても男子って子供の頃から変わらないよね、パンツが見えたとかで大騒ぎしてさ」
「そういえばそうだな。なんだか懐かしいなぁ」

彼女のスカートの中が見えたこともあったっけか。そもそもスパッツで完全防備してパンツが見える機会なんてなかったっけか……。

「……ねえ、私のパンツに興味ある?」
「なんだよ、急に……」
「だから、興味があるかどうか聞いてるんだけど」

なんなんだこの流れは。もちろんパンツというか、彼女の体に興味がないと言ったら嘘になる。

「ああ、あるけど?」

今さら取り繕っても仕方ないので正直に答えることにした。

「うわ、即答しちゃった!本当に変わってないんだから」

彼女は相変わらず笑っている。しかし先ほどとは違う、少しだけ淫靡な匂いが漂う気がした。

「いいよ?見ても」

彼女は相変わらずソファに腰掛けている。

「いいって、何が?」
「だから、スカートをめくってもいいって言ってるの」

彼女は両手を体の横に付けている。スカートは無防備だ。

「本当にいいんだな?」

俺は彼女の横に腰掛け、スカートの裾に手を上げながら言う。さらさらしたストッキングの感触が心地よい。

「今さら遠慮なんかしてるの?もともと私を連れ込んでエッチするつもりだったくせに」
「はっきり言うなあ」
「っていうかバレバレだから。男の家に上がり込むのがどういうことかぐらい、今さらわからないわけないでしょ」

そうだ。すっかり子供の気分に戻ったりしていたが、お互いいい年した大人なのである。高校の頃には女子に縁がなかった俺ですら、今では片手で数えられるくらいとはいえ恋愛経験はある。当時からちょっとはモテていた彼女なら言うに及ばずだろう。

「それじゃ、いくぞ……」

俺は両手で彼女のスカートの裾をつまみ、少しずつ引き上げていく。

「薄紫色、かぁ」

ちらりと見えた下着の色を声に出して確認する。

「やん♪」

わざとらしい恥じらいとは裏腹に、彼女はソファからお尻を持ち上げた。そのタイミングで、俺はスカートを完全に捲り上げる。これで彼女のパンツが露わになった。

「……かわいいの履いてるんだな」

薄紫色のショーツはレースがあしらわれている。特に面積が小さかったり、生地が透けているわけではないが、普段遣いとは違う勝負下着であることくらいは察せられる。

「まあね。せっかくの同窓会だし、いい出会いがあるかもって期待してたし……ちょっと、じろじろ見過ぎだってば」
「ごめん」

俺はとっさに目をそらす。

「まあ、その期待も裏切られちゃったわけだけど」

彼女は笑いながら言う。スカートを直したりはしない。

「やっぱり、上もお揃いのブラ付けてたりするのか」
「もちろん!……って、何脱がせようとしてるの変態」

俺は彼女の返事を待たずにブラウスのボタンを外しにかかった。

「ちょっと、脱がしていいなんて私は言ってないんだけど?」
「気にするな、俺が個人的に見たいだけだから」
「なにそれ……ちょっとやめてよ変態」

そうは言うものの、彼女は言葉とは裏腹に、ブラウスを脱がせやすいように両手を後ろに伸ばす。

「へへへ、良いではないか」

俺も悪ノリをしながら、彼女のベージュのキャミソールに手をかけると、丁寧にも両手を上げてバンザイのポーズをとってくれたのでスムーズに脱がせることができた。

「もう、しょうがないんだから……」

彼女は呆れながらも、今度は自ら立ち上がってスカートと、厚手のストッキングを脱いだ。そして、先ほど俺が脱がせたブラウスとキャミソールとともに丁寧に畳んで、ソファの上に重ねる。

俺のほうからは彼女の後ろ姿、つまり下着越しの尻がぷりぷりと動くのが丸見えとなる。正面から見ると生地は透けていなかったが、裏面はうっすらと透けているのがエロい。

「どう?男から見てもかわいいって思う?」

彼女は改めて振り返り、問いかけてきた。

「確かに、よく似合ってると思うぞ。一見すると清楚で大人っぽくて、それでいて後ろから見ると透け透けなんだよな」
「あ、ちゃんと見てくれてた!どうかな、狙い過ぎかもって思ったんだけど?」

彼女は下着姿になりながらも、先ほど見せた淫靡さはどこかに消えてしまい、あくまでも爽やかな笑顔で聞いてきた。

「狙いすぎ、っていうか、俺は完全に狙われて落とされたんだけどな」

そこまで言うと、俺は彼女を抱き寄せ、唇を重ねた。

「……ちょっと、キスしていいなんて言った覚えはないんだけど?」

彼女は口を尖らせて抗議をする。その尖った口に、俺は再び唇を重ねる。そして舌をねじ込む。

「……ぷはぁ!もう、何考えてるのよぉ」

今度は、とろんとした甘い声で返す。

「別に、俺は最初からお前と寝るつもりだったが?」
「うわぁ。居直っちゃってるよぉ!」

呆れたように言う彼女の手を取って、ベッドまで導く。俺が布団をまくり上げると、彼女は自らベッドの上で仰向けになった。

「嫌なら逃げてもいいんだぞ」

服を脱ぎながら俺は言った。

「別に、嫌だなんて言ってないし。プロポーズが無理ってだけだし……って、いきなり全部脱いでるし!」
「もう、ここまで来たら引き返せないからな」

彼女の背中に手を伸ばし、ホックを外す。

「うわ、手慣れてる!なんかムカつくかも」

ブラを抜き取ると、彼女は両手で胸を隠す。その隙に下の方も脱がせてやる。

「やん! 躊躇なくパンツ脱がすなんて! この変態!ケダモノ!」

彼女は罵りながら俺の胸を叩くが、わざわざ腰を浮かせて脱がせやすくしてくれる。顔も笑っており、敵意なく受け入れてくれるようだった。

「……さて、勢いで脱がしちゃったけど、ゴムとってくるわ」

こんなこともあろうかと、常に避妊具は用意してある。男の嗜みというやつだ。

「あ、そのことなんだけどね」

彼女が口を挟む。

「私の会社って育休制度とか完備してるから」
「……つまり?」
「わかってるくせに。あんたの子を産んであげてもいい、って言ってるのよ」

「……マジか」
「マジよ。私を妊娠させてくれたら結婚してあげてもいいよ」

俺は言葉を返す前に、彼女の体を強く抱きしめていた。

「もう、そんなにがっつかなくていいってば。私は逃げないから」

彼女は俺の首に手を回す。そして今度は彼女のほうから口づけをする。

「……だから、あんたも私から逃げたりしちゃ駄目よ」

彼女が美しく、淫らに微笑む。
この瞬間、俺は悟った。彼女のために生きていくことになるのだと。

**

「……おはよ、なんかいい匂いがする……」
「お、起きたか。朝飯もうすぐできるからな」

翌朝。一足先に目覚めた俺は、いつもどおりに朝飯の支度に取り掛かることにした。昨夜は彼女が寝てから米を研いで炊飯器をセットしたのでご飯も炊けている。あとは味噌汁とおかずを作るだけだ。

*

「へえ、料理できるんだね。なんか意外な感じ」

まだ寝ぼけまなこで顔も洗っていない彼女は、俺が用意した大根の味噌汁と、大根の葉と卵の炒めもの、そして自家製のきゅうりのぬか漬けが並んだ食卓を見て感心している。

「まあな。俺も一人暮らししてから長いし」
「そういうもんなの?私なんか料理は全然駄目なのに」
「意外な弱点があるもんだな。弱みを握れて嬉しいぞ」
「もう、意地悪!」

*

「ん、おいしい」

俺の作った味噌汁をすすりながら彼女は言う。

「味付けはどうだ?最近は健康に気を使って少し薄めで作るようにしてるんだけど」
「私はこのくらいでちょうどいいよ」

どうやら、俺は彼女の弱みだけでなく胃袋も握ったのかも知れない。

「これって大根の葉っぱなの?食べるの初めてかも」

大根の葉っぱと卵のオイスターソース炒めもお気に召したようだ。

「美味いもんだろ?いつも農家の直売所で葉っぱ付きのを買ってくるんだ。安くて栄養満点だからな」
「へえ、そういうのちゃんと気を使ってるんだね」
「まあな。30を過ぎると生活習慣がモロに出るって言うくらいだし」

「ねえ、このお漬物も自家製なの?」
「ああ、ぬか床も自分で作ってるからな。ご飯も自家精米だし」
「あー、そういえば、このご飯もめちゃくちゃ美味しいかも」
「だろ?親戚の農家から取り寄せてるいい米なんだ」

遊びに来た友達にも米が美味いとよく言われる。これを常備しているのはうちの自慢の一つだ。

*

「ごちそうさまでした!」

彼女は俺の用意した朝食を平らげ、ご飯を1杯おかわりまでした。

「お粗末様。気に入ってくれて良かった」

思えば、実家の家族以外に料理を振る舞うなんて何年ぶりだろう。喜んでくれたようで、本当に嬉しい。

「ところで、お願いがあるんだけど」
「どうした?」
「これからも私のために、お味噌汁……というか朝ごはんを毎日作ってくれる?いや朝ごはんに限らないんだけどさ」

「……つまり、それってどういうこと?」

俺はわざととぼけてみた。

「もう、意地悪。あんたを私のお婿さんにしたい、って言ってるの!」

そういう彼女は起き抜け。昨夜風呂に入ったきり、ノーメイクで髪もボサボサ。裸の上に俺のTシャツを羽織っただけという、限りなくだらしない姿だ。おおよそプロポーズにふわさしい姿とは思えない。しかしもちろん、俺としては断る理由はない。そもそも俺の方から持ちかけようとした話なのだから。

「わかった。俺のほうこそよろしく」
「ありがと。……そうだ、昨夜は勢いで、妊娠させてくれたら結婚してあげるとか言っちゃったけど、あれは無しでいいからね」

酔った勢いもあったとはいえ、無茶な発言だったと反省しているのだろう。

「別に、俺はかまわないけどな。妊娠させる気は満々だし!」
「もう、ケダモノ!」

彼女は笑いながら、俺の腹をどついてきた。俺も、それを笑って受け止めるのだった。
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