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7話
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警戒心を残しながらも、跳一は親戚からの説得にもようやく耳を傾けるようになり、何人かの女性と会ってみることにした。
それでも最初は及び腰で、なかなか踏み出せなかった。
「この女は危険ではないか?」
「この女は不倫しそうなタイプではないか?不倫の子を産む可能性が大きいのでは?」
という疑惑でブレーキ作動が頻発してしまった。
相手の女性にしても、跳一のことを、何か奥歯にものがはさまっているような話し方をする者に見えて、話が続かず、いつの間にかお互いに沈黙してしまうありさまだった。
それでも何人もの女性と見合いをしていくうちに跳一の女性に対する見方も変化してきた。
「『女だからこうだ』と、一律に決めつけるべきでない」
と考えるようになってきた。
二十五人目に会った女性の蔦野耀子と会った時のことである。
天真爛漫という程ではないが、耀子から自然と発せられる明るい笑顔が跳一の疑惑の刃を無力化してしまい、何か話が合うようになっていった。
跳一には疑うべく理由を見つけられず、
「これはいったい、どういうことだ。どうなっているのだ」
と、焦りや困惑の気分に襲われたが、そのうちに
「この女なら大丈夫かな?」
と思えるようになり、結婚することになった。
耀子との結婚が決まった後、跳一は航太の墓参りに出掛けて、結婚することを報告した。
「航太君、君のお蔭で結婚できるよ」
跳一はそう呟いて、線香をあげた。
跳一にとっては、百パーセント自信があるわけではなかったが、とにかくこの道を進んでみよう、と航太の墓前で改めて自分に誓った。
跳一が住んでいたマンションの部屋は二人で住むには狭かったので、結婚を機に別のマンションに引っ越すことになった。
その引っ越しの日に耀子も手伝いに来た。
引っ越しの作業を終えると、跳一は耀子と一緒に斎藤宅にも挨拶に行った。
既に高校生になっていた翔介は、
「おめでとうございます。よかったですね。航太もあの世で、鷹山さんの結婚を、きっと喜んでいると思います」
と、お祝いの言葉を述べた。
母親のよし子は耀子を見て、
「あら、鷹山さん、素敵な人と一緒になるのですね。よかったですね。航太君のお母さんとは大違い。翔介の言うように、航太君もあの世で鷹山さんの結婚を心から喜んでいると思いますよ。おめでとうございます。幸せになってくださいね」
と、航太の名前を出して跳一を祝福した。
その後で跳一は耀子から
「ねえ、航太君って、誰なの?」
と、尋ねられた。
「かつて、このマンションに住んでいた小学生さ。さっきの男の子と同級生だったのさ。僕がよく、キャッチボールの相手をしてあげたんだ。ところが、僕とキャッチボールをするはずだった日の前日、交通事故で亡くなったんだよ。僕はよくわからないけど、あの子のお母さんはあまり評判のいい人ではなかったんだよ。特にさっきの子のお母さんは、航太君のお母さんのこと、とにかく嫌っていたね」
と、説明した。
航太の母親のことを詳しく説明する気にはなれなかった。
「可哀想な子だったのねえ」
耀子は会ったこともない航太に同情した。
結婚後も跳一は時折、航太の墓参りに出掛けた。
耀子にも事情を話したこともあって、耀子を連れて墓参りをしたこともあった。
耀子もまた、一度も会ったことのない航太の冥福を祈った。
それでも最初は及び腰で、なかなか踏み出せなかった。
「この女は危険ではないか?」
「この女は不倫しそうなタイプではないか?不倫の子を産む可能性が大きいのでは?」
という疑惑でブレーキ作動が頻発してしまった。
相手の女性にしても、跳一のことを、何か奥歯にものがはさまっているような話し方をする者に見えて、話が続かず、いつの間にかお互いに沈黙してしまうありさまだった。
それでも何人もの女性と見合いをしていくうちに跳一の女性に対する見方も変化してきた。
「『女だからこうだ』と、一律に決めつけるべきでない」
と考えるようになってきた。
二十五人目に会った女性の蔦野耀子と会った時のことである。
天真爛漫という程ではないが、耀子から自然と発せられる明るい笑顔が跳一の疑惑の刃を無力化してしまい、何か話が合うようになっていった。
跳一には疑うべく理由を見つけられず、
「これはいったい、どういうことだ。どうなっているのだ」
と、焦りや困惑の気分に襲われたが、そのうちに
「この女なら大丈夫かな?」
と思えるようになり、結婚することになった。
耀子との結婚が決まった後、跳一は航太の墓参りに出掛けて、結婚することを報告した。
「航太君、君のお蔭で結婚できるよ」
跳一はそう呟いて、線香をあげた。
跳一にとっては、百パーセント自信があるわけではなかったが、とにかくこの道を進んでみよう、と航太の墓前で改めて自分に誓った。
跳一が住んでいたマンションの部屋は二人で住むには狭かったので、結婚を機に別のマンションに引っ越すことになった。
その引っ越しの日に耀子も手伝いに来た。
引っ越しの作業を終えると、跳一は耀子と一緒に斎藤宅にも挨拶に行った。
既に高校生になっていた翔介は、
「おめでとうございます。よかったですね。航太もあの世で、鷹山さんの結婚を、きっと喜んでいると思います」
と、お祝いの言葉を述べた。
母親のよし子は耀子を見て、
「あら、鷹山さん、素敵な人と一緒になるのですね。よかったですね。航太君のお母さんとは大違い。翔介の言うように、航太君もあの世で鷹山さんの結婚を心から喜んでいると思いますよ。おめでとうございます。幸せになってくださいね」
と、航太の名前を出して跳一を祝福した。
その後で跳一は耀子から
「ねえ、航太君って、誰なの?」
と、尋ねられた。
「かつて、このマンションに住んでいた小学生さ。さっきの男の子と同級生だったのさ。僕がよく、キャッチボールの相手をしてあげたんだ。ところが、僕とキャッチボールをするはずだった日の前日、交通事故で亡くなったんだよ。僕はよくわからないけど、あの子のお母さんはあまり評判のいい人ではなかったんだよ。特にさっきの子のお母さんは、航太君のお母さんのこと、とにかく嫌っていたね」
と、説明した。
航太の母親のことを詳しく説明する気にはなれなかった。
「可哀想な子だったのねえ」
耀子は会ったこともない航太に同情した。
結婚後も跳一は時折、航太の墓参りに出掛けた。
耀子にも事情を話したこともあって、耀子を連れて墓参りをしたこともあった。
耀子もまた、一度も会ったことのない航太の冥福を祈った。
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