あの世からの贈り物

越地八郎

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最終話

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 跳一と耀子との結婚生活だが、喧嘩もあったが、離婚するかしないかの次元にまで進むこともなく続いた。

 耀子は二人の子を産んだ。
「もしかしたら、俺の子ではないのでは……」
 跳一には、そのような不安も全くなかったわけではなかった。

 生まれてからも、時折子どもらの顔を疑って見てみたこともあった。だが、絶対に自分の子ではない、と思えるものが見つからなかった。

 また、無意識に子どもの顔を見た時、ふと、跳一や跳一の両親の面影のようなものを感じたこともあった。

「どうやら、耀子は俺の子を産んだのだ。本来、それが当たり前なのだろう。航太君の母親のような妻は少数なのだろう」

 跳一はそのように考えるようになった。

 ある日のこと、一つの調査結果が報道された。
 それによると、独身男性の中には、不幸な結婚を恐れて、結婚しようとしない人が増えているとのことだった。

 かつての跳一は、結婚すれば航太の母親のような女が妻になり、間男の子を産み、自分の子でない子の養育義務を背負わされるという不幸な結婚を恐れていただけに、そのような気持ちに陥っている者のことが痛いようにわかるような気がした。

 さらに、独身男性に対して不幸な結婚を恐れさせているのが航太の母親のような女だと、その種の女性に対して激しい怒りや憎しみのようなものを抱いた。

 世間では、妻の立場にある人の十人に一人は、間男の子を産むとも言われている。

「自分はその十人に一人の確率のはずれくじを引かずに済んだと考えるべきなのだろうか? だけどその数字の信ぴょう性はどうなのだろうか?もしかすると、もっと多いのかもしれないし、少ないのかもしれない」

 そのように考えていたら、どこからか

「おじさん、その子達はおじさんの子だよ。だって、僕がそうなるようにしたんだもの」

 と、航太の声が聴こえてきたような気がした。

「不倫の子を産む女を妻にするかもしれないというリスクに怯えながらも、俺は結婚した。結婚しようという勇気を与えてくれたのは、幼くしてあの世にいった航太君ではないだろうか?航太君が、俺をそのような女性と結婚しないように導いてくれたのかもしれない。俺は航太君があの世から贈ってくれた励ましのおかげで結婚できたのかもしれない。自分の結婚生活そのものが、航太君のあの世からの贈り物だったのかもしれない。だから俺はこの航太君からの贈り物を粗末にしてはいけないなのだ。耀子や子どもたちも大切にすべきなのだ」

 跳一はそのように考えた。

「おじさん、よかったね」

 航太があの世でにっこり微笑んでいる姿が浮かんできた。

「ありがとう、航太君。君も早く、まともな夫婦の子として生まれ変わりなさい。そしてもう一度、野球選手を目指してごらん」

 そんな言葉を返したい気分だった。


                   完
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