群雄割拠した異世界では訳アリな人物で溢れていた

霧矢風月

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第104話 エルフの里 演劇②

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 人気がある演劇とあって、、会場は満員御礼となった。
 シェーナはお金を払って演劇を見るのは初めてなので、密かにプロの演技に期待している。
 数人の売り子が飲食物の提供に会場内を回って、こちらも盛況の様子だ。

「お姉さん、麦酒エール四つとグレープジュース一つ」

 グラナは近くを通りかかった売り子に注文すると、グラスに冷えた麦酒エールとグレープジュースが注がれる。
 ルトルスにグレープジュースと四人に麦酒エールが渡ると、ささやかな乾杯の音頭を取った。

「意外と酒を飲みながら観賞する客は多いな」
「酒と演技に酔って下さいって事だろ」

 シェーナは周囲を見渡すと、酒を交わしている女性が多い事に驚いた。
 場内は酔った客が騒いだり、暴れたりと演劇の妨げになるかもしれないアルコールは禁止だと思っていたからだ。
 キシャナはそれらしい理由を付けて麦酒エールを飲んでいくと、長耳を上下に振って上機嫌のようだ。

「宿で夕食も用意されているから、酒は程々にしとけよ」
「これぐらい平気さ。私が酔っぱらっても、優しい親友のシェーナが介抱してくれるから……ね」

 酒臭いキシャナはグラスの麦酒エールを飲み干すと、シェーナの膝の上に頭を乗っけて寝息を立てる。

「わっ! おい、起きろ。上演が始まる前に寝る奴があるか」

 シェーナはキシャナを揺さぶって起こそうとするが、全く起きる気配がない。
 午前中に慣れない畑仕事を体験していたのもあって、疲労が溜まっていたのだろう。
 グラナは魔法で毛布を取り出すと、キシャナに被せてあげた。

「上演が終わるまで寝かせてやりな」
「グラナ、ありがとう。全く……手間の掛かる親友だよ」

 シェーナは麦酒エールを飲みながら、膝枕の形でキシャナの寝顔を見下ろすと、やれやれと言わんばかりに苦笑する。
 開演の時刻になると、売り子は一旦会場から姿を消して、観客の視線はステージへと向けられる。
 役者がステージに上がると、会場内の熱気は盛り上がりを見せる。
 演劇の内容は小国のお姫様が大国の王子様と政略結婚を結ぶ約束が交わされているが、お姫様には護衛に就いている騎士を愛していた。お姫様は政略結婚を破棄して、苦難を乗り越えて身分が違う二人が添い遂げてハッピーエンドになると言うのが大筋の内容だ。
 実際、シェーナは似たような現場の社交界を経験しているので、演劇のような出来事はありえないだろうと冷ややかな目で見ていた。
 ペトラは目を輝かせながら劇に夢中になり、ルトルスは真剣に何かメモを取っている。
 グラナに至っては演劇に興味がないのか、魔法でキシャナと同じ毛布を取り出して眠っている始末だ。
 女性陣と元男性陣では明暗が分かれる形になったが、やはり自分に女子力は微塵もないなと思うシェーナだった。
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