群雄割拠した異世界では訳アリな人物で溢れていた

霧矢風月

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第106話 エルフの里 歴史資料館

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 シェーナはお土産を買い揃えると、ルトルスと髪飾りを付けて散策を提案する。

「このまま、夕食まで少し東エリアの散策でもしようか?」
「ふふっ……私は構わないよ」

 二人は手を繋ぐと、東エリアにある歴史資料館に足を運んだ。
 館内にはシェーナとルトルスの他には誰もいない様子だ。

「歴史か。あの壁に掛かっている年表は一万年前まで遡って書かれているのか」

 シェーナは壁に掛かっている年表を見ると、ハルセンティス大陸で一万年間の出来事が記されている。
 一万年前に剣神ペトラが異大陸の侵略者を撃退。
 三千年前にリンスル聖王国が建国。
 千年前にハシェル王国がリンスル聖王国から独立。
 翌年にリンスル聖王国で第一王子ヨフィルと第三王子ガフェーナによる主権争いで内乱が勃発。権力闘争に負けた第三王子ガフェーナはガフェーナ新聖王国を建国すると、リンスル聖王国と長い戦争状態に突入。
 百五十年前にガフェーナ新聖王国は建国の祖であるガフェーナを主と崇めて、ガフェーナ教主国と名称を改める。
 シェーナとルトルスに関わりがあるペトラやハシェル王国とガフェーナ教主国を拾ってみたが、ここ近年で言えば魔王のグラナが復活を遂げた事が年表に追加されそうだ。

「やあ、二人でデートかい?」

 年表を眺めていたシェーナとルトルスに声を掛けてきたのはリィーシャだった。

「その年表はエルフ族が後世に伝えるために書き記していった代物だよ。私が子供の頃には年表に五大国のセンティス女王国が建国されて、リンスル聖王国からロスロ騎士同盟が異大陸の侵略に対抗するために独立自治が認められたりと年表に記される出来事が多かったね」

 感慨深い表情で年表を眺めるリィーシャは先祖のエルフ達に祈りを捧げる。

「貴重な資料ですね。この一万年間、正しい歴史を継承するためとはいえ、目を背けたくなる戦争や国が幾つも滅んでいたりするのは心が痛みます」
「エルフ族が他種族と交流を持たなかった理由の一つだね。一万年前は今より数が多かったエルフ族は大陸の各拠点に情報を共有して年表を作り上げていったらしい」

 シェーナはリィーシャの話を聞くと、改めて年表の重みを実感する。
 できれば、今後の年表は争いのない平和なものであって欲しいと願う。

「私はこの時代を転換期だと思っている。三人の転生者リインカーネーション、魔王グラナが復活、剣神ペトラ殿の登場、そして勇者一行による中立国家の建国。歴史は大きく変化を遂げようとしているのではないかと思えてね。ガフェーナによる魔神復活や異大陸からヒュムリス王国の侵略と問題は山積みだけど、この二件は間違いなく後世に伝える事になるだろうね」

 プライデンの報告だと、ルトルスがプライデンに逃げ延びた後、ガフェーナはリンスル聖王国の神官戦士を戦場からさらっているらしい。詳細はまだ不明だが、実力を秘めている者を集めて召喚の儀式に生け贄とされるのではないかと推測されている。

「私を生け贄にすれば、魔神の復活は整うとディアン枢機卿は語っていたらしい。ガフェーナのダークエルフを統括しているルブルと対峙して奴は得意気に話してくれたよ」

 ルトルスは当時の事を思い出しながら、シェーナとリィーシャに語った。
 ルブルとはガフェーナ教主国が誇るダークエルフで構成された暗殺部隊の筆頭だ。
 性格は残忍で、ルトルスの生け捕りを命じたのはルブルだった。

「奴はグラナのような変身魔法とまではいかないが、変装が得意だ。身近な奴に化けてターゲットから情報を引き出したり、始末するのが常套手段だ」
「ちょっと待ってくれ。じゃあ……もしかしたら、ルブルは里の誰かに化けて俺達に近付いているかもしれないのか」

 ルトルスからルブルの特徴を聞くと、シェーナは周囲を警戒する。

「それは大丈夫だよ。普段はグラナに警戒をお願いしている。それに、この里は族長である旦那が管理しているからね」

 リィーシャは館内の入口へ指差すと、そこには好青年のエルフの姿があった。
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