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第107話 エルフの里 歴史資料館②
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エルフの青年はシェーナとルトルスに会釈すると、挨拶を交わす。
「エルフの里へようこそ。リィーシャから話は聞いているよ」
「初めまして。私はシェーナで、こちらはルトルスです」
「私は里の族長をやっているシェスだ。ハシェルの元騎士とガフェーナの元暗黒騎士の二人か。珍しい組み合わせで、どちらも美しいお嬢さん達だ」
二人を交互に見るシェスは称賛すると、リィーシャは咳払いをして遮ると本題に入る。
「実は明日の夜から精霊の儀式を執り行う予定で、君達にも是非参加してもらいたいと思ってね」
「精霊の儀式ですか。私達のような部外者が参加しても平気なのですか?」
儀式と言うのだから、エルフ族にとって神聖な行事の筈だ。
部外者であるシェーナ達が興味本位で参加するのは気が引けるし、邪魔になるようなことがあってはならない。
「儀式と言っても、他国のような堅苦しい式典みたいなものじゃないよ。むしろ参加者が多ければ賑わって精霊も喜んで下さるよ」
リィーシャは精霊の儀式について簡単に説明を始めた。
エルフの里の中央エリアに祠が設置されて、そこに精霊を祀っている。
族長は精霊に一年間の報告と次の年も豊穣と平和を祈願して、精霊と対話するのが主な儀式の内容らしい。
「対話が終われば、後はお祭り騒ぎさ。酒や食事もたくさん用意されるから、皆で楽しんでいってくれ」
精霊の儀式は盛大に賑わう事で有名なようだ。
そういえば、宿の手配をする時に部屋は満室に近い状態だった。
幸いにも、二部屋を抑える事ができたのはラッキーだったかもしれない。
シェスはシェーナとルトルスに笑顔を向けると、族長による定例会があると言うので、その場を去って行った。
リィーシャも二人のデートを邪魔しては悪いと思って退散しようとしたが、何かを思い出したかのように振り返って立ち止まった。
「ああ、そうだ。近々、ロスロ騎士同盟から数名の聖騎士がプライデンの視察に来る予定になっていてね。申し訳ないが、その内の一人をしばらく預かってもらえないかな?」
「それは……構いませんが」
以前、リィーシャからの紹介で連れて来たのが魔王のグラナだった経緯があるので、訳ありの人物ではないのかとシェーナは疑ってしまう。
五大国の中でも、ロスロ騎士同盟はリンスル聖王国から自治権を認められて、異大陸からの侵略に備えるため結成された。他国との交流はリンスルを介して行われており、異大陸の情勢はロスロを通じて情報を共有されている。
「街の様子をこの目で見たいと御所望でね。女性の聖騎士とあって、話し相手になりそうな君達が適任だと思ってね」
「そういう事でしたら……分かりました。グラナやペトラの素性は内密にしておきます」
「助かるよ。この埋め合わせは今度きっちりとさせてもらうよ」
リィーシャはその場から去ると、ルトルスは不安気な表情を浮かべる。
リンスルから自治権を獲得したロスロの聖騎士はガフェーナの暗黒騎士だったルトルスにとって相容れられない存在かもしれない。
「大丈夫さ。ルトルスはもう正式なプライデンの人間なんだから、リンスルの影に怯える必要はないよ」
「ガフェーナの暗黒騎士だった過去でシェーナ達に迷惑を掛けてしまうのは申し訳ない」
「人の過去は語られたくない事の一つや二つはあるさ。俺やキシャナだって男だった過去と言うか前世を引っ張って生きているけど、語りたくても語れない状況だからね」
「ふっ……シェーナの場合は特殊すぎるな。でも、気持ちは少し楽になったよ。ありがとう」
ロスロの聖騎士がどのような人物か分からないが、以前出会ったカリューのような剣士でないことを願う。
「エルフの里へようこそ。リィーシャから話は聞いているよ」
「初めまして。私はシェーナで、こちらはルトルスです」
「私は里の族長をやっているシェスだ。ハシェルの元騎士とガフェーナの元暗黒騎士の二人か。珍しい組み合わせで、どちらも美しいお嬢さん達だ」
二人を交互に見るシェスは称賛すると、リィーシャは咳払いをして遮ると本題に入る。
「実は明日の夜から精霊の儀式を執り行う予定で、君達にも是非参加してもらいたいと思ってね」
「精霊の儀式ですか。私達のような部外者が参加しても平気なのですか?」
儀式と言うのだから、エルフ族にとって神聖な行事の筈だ。
部外者であるシェーナ達が興味本位で参加するのは気が引けるし、邪魔になるようなことがあってはならない。
「儀式と言っても、他国のような堅苦しい式典みたいなものじゃないよ。むしろ参加者が多ければ賑わって精霊も喜んで下さるよ」
リィーシャは精霊の儀式について簡単に説明を始めた。
エルフの里の中央エリアに祠が設置されて、そこに精霊を祀っている。
族長は精霊に一年間の報告と次の年も豊穣と平和を祈願して、精霊と対話するのが主な儀式の内容らしい。
「対話が終われば、後はお祭り騒ぎさ。酒や食事もたくさん用意されるから、皆で楽しんでいってくれ」
精霊の儀式は盛大に賑わう事で有名なようだ。
そういえば、宿の手配をする時に部屋は満室に近い状態だった。
幸いにも、二部屋を抑える事ができたのはラッキーだったかもしれない。
シェスはシェーナとルトルスに笑顔を向けると、族長による定例会があると言うので、その場を去って行った。
リィーシャも二人のデートを邪魔しては悪いと思って退散しようとしたが、何かを思い出したかのように振り返って立ち止まった。
「ああ、そうだ。近々、ロスロ騎士同盟から数名の聖騎士がプライデンの視察に来る予定になっていてね。申し訳ないが、その内の一人をしばらく預かってもらえないかな?」
「それは……構いませんが」
以前、リィーシャからの紹介で連れて来たのが魔王のグラナだった経緯があるので、訳ありの人物ではないのかとシェーナは疑ってしまう。
五大国の中でも、ロスロ騎士同盟はリンスル聖王国から自治権を認められて、異大陸からの侵略に備えるため結成された。他国との交流はリンスルを介して行われており、異大陸の情勢はロスロを通じて情報を共有されている。
「街の様子をこの目で見たいと御所望でね。女性の聖騎士とあって、話し相手になりそうな君達が適任だと思ってね」
「そういう事でしたら……分かりました。グラナやペトラの素性は内密にしておきます」
「助かるよ。この埋め合わせは今度きっちりとさせてもらうよ」
リィーシャはその場から去ると、ルトルスは不安気な表情を浮かべる。
リンスルから自治権を獲得したロスロの聖騎士はガフェーナの暗黒騎士だったルトルスにとって相容れられない存在かもしれない。
「大丈夫さ。ルトルスはもう正式なプライデンの人間なんだから、リンスルの影に怯える必要はないよ」
「ガフェーナの暗黒騎士だった過去でシェーナ達に迷惑を掛けてしまうのは申し訳ない」
「人の過去は語られたくない事の一つや二つはあるさ。俺やキシャナだって男だった過去と言うか前世を引っ張って生きているけど、語りたくても語れない状況だからね」
「ふっ……シェーナの場合は特殊すぎるな。でも、気持ちは少し楽になったよ。ありがとう」
ロスロの聖騎士がどのような人物か分からないが、以前出会ったカリューのような剣士でないことを願う。
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