「こんにちは」は夜だと思う

あっちゅまん

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第6話 『帰還』

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 S県の地元の駅に着いたので、僕らは電車を降りた。

 さっそく電話をしてみるが、やはり実家とは連絡がつかなかった。

 一刻も早く家に帰らなければいけない。



 僕の学校の事件はすでに駅でも大きく知られている様子で、非常に混雑していた。

 みんな、必死な形相でどこか遠くへ逃げようとしているようにも見えた。

 僕らはその流れとは逆行するかのように駅を出て、とにかく僕の家の方へ向かうため、タクシーを探した。




 「おい! あれ! ……いったい、僕の家に何が……?」

 僕の家の周りは、ドラマとかでよく見る立入禁止のロープが張られていて、警察官らしき人で囲まれていた……。


 「夫婦揃って殺されていたらしいわよ……。」

 「ええ……!? それって学校の事件とも関係あるのかしら?」

 「あそこの息子さんが行方不明らしい……。」

 人々が口々に噂している。



 「おい! レイ! ここはいったん、ここから離れたほうがいいぜ!?」

 「ああ……。そうだな。フーリン。」

 「あなた……。まさか、あなたの両親を……?」

 「いや! 僕はやっていない! 魔物に襲われたに違いない!」

 「そんな……こと……! 魔物の仕業だなんて……。」

 「そうに決まっている! 君も一緒に来るんだ!」

 「わ……、わかったわ……。」




 見ると、警官の姿をしているモノが近づいてきた……。

 しかし、よく見るとその顔は牙を生やした異形な形相をした魔物だったのだ!

 「おい! きみぃいいいいいいーーーっ! こっちへこぉおおおおっいぃぃいいいい!!」

 なにか叫びながら、近づいてくる。

 僕らは急いで、その場を逃げるように離れた。




 どこへ行けばいいのか……。

 まったく、わからない。

 だが、一心不乱に走って、走って、走って、逃げたのだ。



 だが、曲がり角をいくつか曲がったところで、警官の魔物たち二匹に追いつかれてしまった。

 「ほら! その娘を寄越せぇええ!!」

 魔物がそう叫びながら、近寄ってくる。

 「きゃあああーーーっ!」

 希依ちゃんが襲われそうになる!!



 「こいつ! おらぁ!!」

 僕は無我夢中で、その警官の姿をした魔物の胸を持っていたサバイバルナイフで突き刺した。

 「ぐぁああああーーーっ! おま……!? なんてことしてくれたんだ……!? ぎぎぎぎぎ……。」

 そう断末魔を残し、魔物が倒れた。



 「大丈夫か?」

 「ひぃ!! ……もうヤダ……。」

 希依ちゃんはショックを受けたようだ。

 魔物とはいえ、目の前で死んだのはやはり女の子にはショックが強すぎたのだろう。



 「こ……、こいつ! 抵抗するかぁ!?」

 もう一匹の魔物が僕の頭を持っていた棍棒で殴ってきた。


 ガスッ……!

 その先端が僕の頭をかすめて、痛みと衝撃が走る!



 「くっ……! おまえも喰らえ!」

 「レイ! やれぇ!」

 フーリンの応援する声が聞こえる。

 僕はまたしてもサバイバルナイフで警官の魔物の首に斬りつけた。



 シュババァ……

 あたり一面に真っ赤な血が吹き出たのだ。

 「きゃああああああ……!」

 希依ちゃんが叫ぶ。



 「お……、おま……、え……。なんてこと、しやがる……!」

 魔物がそう言ってその場に倒れた。

 周囲が魔物の血だらけになっている。



 「おい! レイ! こいつら、銃を持ってるぞ!?」

 「なんだって!? じゃあ、魔物が警官から奪ったのか……? 服も銃も奪ったんだな……。」

 「いただいておこうぜ? 俺たちも武装しておいたほうがいい。」

 「そうか……。それもそうだな。」

 僕は警官に化けていた魔物から銃を奪った。



 まだガタガタと震えの止まらない希依ちゃんをなんとか立たせて、一緒に連れて行く。

 「ついて来るんだ。危ないぞ?」

 コクリと黙って頷き、希依ちゃんは僕の後について来る。



 僕らはとりあえず、学校の方へ向かった。

 僕の通っていた学校はいったいどうなってしまったのか?

 やはり、魔界に飲み込まれてしまったのか……。



 学校が見えてきた……。

 「おい! レイ! 学校が……!?」

 フーリンがいち早く学校の様子を見たらしい。

 そこはまさに地獄絵図だった……。

 学校の校舎は半壊状態になっていて、おそらくは魔物によって焼かれたのであろう焼け跡と化していた。

 立入禁止のロープが張られており、中に入ることはできなかったが、中にはさっき僕の家にもいた警官の魔物たちがウロウロしていたのだった!




 「ちっ……! こいつら、学校も占拠してやがる……。」

 フーリンも状況を把握したようだ。


 「学校が爆破されたらしいよ……?」

 「恐ろしいわね……。」

 「物騒な世界になったものね……。」

 近所の人たちが噂している。



 「あ……、あなた、怪我は大丈夫なの?」

 希依ちゃんが僕の怪我を気にしている。

 なんて優しい子だろう。

 希依ちゃんも腕を怪我しているみたいなのに……。

 自分のことよりも人のことを気にかけられるなんて、本当にこの子だけは守らなければいけないな。

 自分の頭に手をやってみると、血がべっとりと手についた。



 「やばいな……。頭の怪我はやばい……。俺も心配だわ。」

 「フーリン……。そうだな。」

 「病院へ行こうぜ? とにかく怪我の手当をしてもらおう!」

 「うん。病院行こうか。」



 空模様はずいぶん暗く、魔界に飲み込まれつつあるこの世界に暗雲が垂れこめている。

 僕は希依ちゃんを連れて、病院へ向かうことにした。

 たしか、地元で一番大きな病院『S県立中央病院』がこの近くにあったはず。

 そこも魔物に襲われていなければいいが……。



 やはり、すでにこの街も魔界に飲まれているようだ。

 まわりには魔物が徘徊している。

 僕らは魔物に気付かれないように細心の注意を払いつつ、病院を目指す。

 どこかでサイレンの音が聞こえる……。

 救急車か!?

 ならば、まだ病院は無事なのか……。



 「あ! あれは病院だ!」

 「うん……。中央病院だね?」

 「まだ病院は無事なようだ。」

 「よし。早く病院へ行って手当をしてもらおう。」

 「そうだな。」



 だが、僕はこのとき、この病院へ行くという選択が、さらなる絶望に直面するとは思ってもいなかったのだ。

 予想できるはずもない。

 病院が魔物に乗っ取られていたなんて……。

 しかも、完璧に魔物が知恵をつけて、人間に擬態しているとは……、考えもしなかったんだ……。


 僕らは病院の入口を入り、受付へと向かったのだったー。




~続く~


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