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第1日目
第2話 到着1日目・昼その2
しおりを挟むダイニングルームの中は広く作られており、アンティークなイスと大きな長方形のテーブルがある贅沢なスペースになっていた。
細かいところまでデザインが施されていることに改めて感動を覚えてしまう……。まさに、ひとつひとつが芸術品のようだ。
ステンドグラスの大きな窓も、その微妙な色の取り合わせが部屋の表情を柔らかくしており、この広間の優しい雰囲気を作っている。
また、部屋の端にある大きな置き時計も、細部にいたるまで緻密な意匠が施されたお洒落な風合いを醸し出している。
しかも、この絨毯、とっても可愛くないですか? どこを切り取っても絵になってしまう……。
雑誌やドラマの撮影にも使われそうってくらいのおしゃれ感があって、もう最高!
「うわぁ……。ちょっと凄いですね。コンジ先生! 豪華ぁ……。」
「ジョシュア。ちょっと黙っていようか? 僕まで品格が疑われるじゃあないか。」
「でも、ホント……。ステキだわぁ……。」
料理人兼召使いのメッシュさんと、管理人のカンさんがテキパキと食事の準備をしてくれていました。
私たちも邪魔をしないように、さっさとイスに座り、準備が終わるのを待つ。
それにしても、私たち以外に食事をする人はいないのか、テーブルには私たち以外の食事の準備はされていない。
すると、私の疑問を察したのか、端に控えていた執事のシープさんが教えてくれた。
「キノノウ様とジョシバーナ様以外のお客様はみな、今日は遅めの朝食を済ませておられますので、昼食はおふた方だけということになります。」
なるほど。みんなは昨日に到着したので、今朝はゆっくりだったわけか。
そうこうしているうちに、食事の準備ができたようで、私たちは昼食をいただくことにした。
前菜でサーブされたのはエスカルゴで、パセリとバターで味付けされており白ワインにぴったり!
そのまま食べても美味しいですが、ソースをパンにつけても絶品です!
続いてフォアグラのテリーヌが出されたのですが、高級食材フォアグラも、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、パンに塗っていただきました。
これが最高でした!
メッシュさんって本当に料理の腕が素晴らしいんだなと、私、感動しました。
メインディッシュは牛肉の赤ワイン煮込みで、日本でもメジャーなこの料理ですが、ブルゴーニュ地方の料理ですね。
赤ワインと香辛料を加え、牛肉を弱火でゆっくりとじっくり煮込まれていて、肉がとにかく柔らかい!
フランス産の赤ワインと一緒にいただきましたが、やはりワインに合うわぁ!
コンジ先生も何も言わずに黙々と食べてるので、相当気に入った様子。
コンジ先生、気に入らない時はひたすら喋りかけてくるから……。
デザートは、フランスのクレープ「ガレット」。
最近日本のカフェでも見かけるようになってきた、そば粉を使った生地で卵やハムなどの食材を包んでいただく、食事感覚のクレープです。
ボリュームにかけるかなと正直見た目では思ったのですが、食べてみると意外とお腹いっぱいになりました。
ガレット、また日本でも食べに行こうかな。
ちょうど、食事が終わったところで、扉が開いて二人の女性が入ってきた。
ふたりとも見事な金髪でドレスが艶やかな青と白。 透き通るような肌の白さでスラリと長身の美人だった。
顔もどことなく似ていて、瞳が吸い込まれそうなブルー。
どこかの雑誌のモデルさんみたい……。
そんな二人の女性に私が見とれていると、その二人はコンジ先生の前の席に座った。
シープさんがイスを引いて、うやうやしくエスコートしている。
なんともその所作がいちいち似合っている。
ええ、ええ。どうせ、私は平民の出ですよ!
「あなたが、あの有名な名探偵キノノウ・コンジさんなの!?」
派手目の化粧をしたほうの女性が第一声、コンジ先生に話しかけた。
コンジ先生は飲んでいた紅茶を一瞬、止めてちらりとその女性の方を見た……。
が、そのまま紅茶を飲みだし始めた……。
あ……いつものコンジ先生の習性だ。
名乗らない相手には無視するという……。
「あはは! ちょっとコンジ先生、疲れちゃってるみたいですね! あ、どうも初めまして。お招きいただきありがとうございます。
おっしゃるとおり、こちらが、かの名探偵! キノノウ・コンジ先生です!!
そして、私はその助手、ジョシュア・ジョシバーナです。
えっと……それで、どちら様でしょうか?」
一気に私がまくしたてて喋り、相手の女性に名乗るように仕向けた。
その女性は私のほうを、なんだかキッチンの流し台の排水溝についた汚いサビでも見るかのような冷たい目ですっと見た。
「あら? 助手さん……ね……ふぅーん。」
そう言って、またコンジ先生のほうを振り返り、少し胸を強調するかのように張って、また話しかけた。
「私はシンデレイラ家の長女、アネノ・シンデレイラですわ。 キノノウ様! いつも貴方の活躍を本で拝読させていただいておりますわ。私、貴方のファンですのよ?」
そう言って、じっとコンジ先生を見つめた。
アネノさんか。シンデレイラってことは、この館の主人、大富豪シンデレイラ家の人なんだ……。
すると、アネノさんの隣に座っていた女性も声を発した。
「お姉さまは『黄金探偵』シリーズはすべて読破されているのですよ。 私たち姉妹の中でも一番の読書家なんですの。お姉さまは。
ああ、私は次女のジジョーノ・シンデレイラです。もちろん、私も拝読させていただいておりますのよ。」
こちらの女性もシンデレイラ家の人か。
お姉さまってことは、姉妹か。
招待主の大富豪パパデス・シンデレイラさんの娘ってところかな……。
「そいつはどうも。マドモアゼル方。僕がキノノウ・コンジさ。察するに、あなた方はパパデスさんの娘ってところかな。
そして、君は長女のアネノさんで、そちらが次女のジジョーノさんだね? そして、もう一人、妹さんがいる……のだね?」
「え? すごーい! どうして、私たちのほかにまだ、妹がいるとおわかりになったのでしょう?」
コンジ先生が、やれやれといった表情を浮かべ、説明してくれた。
「ふむ。初歩的な推理だよ。さっき、ジジョーノさんが『私たち姉妹の中でも一番の読書家』とおっしゃった。
……姉妹が二人しかいないなら、比較する対象が二人なのだから、『私よりも読書家』というべきところ。
つまり、姉妹は他にもいる。そして、あなたは次女だと名乗った。そして、アネノさんは長女と名乗った。ならば、他の姉妹は『妹』となり、まだ見ていない妹がいるということだよ。」
アネノさんとジジョーノさんはコンジ先生のよどみない説明にぽーっとなっていた。
ああ。コンジ先生、変人だけど、顔は確かにカッコいい……。
私が惚れちゃっただけはある……。
あ! 惚れちゃったっていうのは、若いときのことで、今はなんとも思ってないんだからね!
……なんとも思ってないんだから!
たぶん……。
「さすがは黄金の頭脳を持つ名探偵『黄金探偵』ですわね! 私、あの『ゾンビ事件』の話が好きですわ! なんとも寂しいお話で泣いちゃいましたわ!」
「あ、私も『ゾンビ伝説』は好きです! あと、『吸血鬼伝説』も最後がなんとも言えない気持ちになる名作だと思いますね!」
おお……。本当に読んでいるみたい。ありがたいことです。
書いたの私なんですけどね。
「あなた! キノノウ様の足を引っ張らないのよ!」
「そうよ!そうよ! いつも、あなたがバカだから、いらいらしますわ!」
そう言って今度は二人が私の方を向いて責めてきた。
いや……。コンジ先生はたしかにすごいですけど、私は小説だから引き立て役になっているだけであって……。
なんだかなぁ。
「あ……。いえ。そ、そうですね。以後、気をつけます……。」
私は特に反論することもなく、そう述べておいた。
「いや! こいつは役に立つぞ! 生活における生きるための能力ははっきり言ってオレよりも高い!
実際、核戦争が起きても生き延びるかも知れん。
だから、ジョシュアはオレの助手なのだ。他にオレの助手が務まる者がいるとは思えないぞ。」
コンジ先生ぇ……。な……泣きそう……。
あ、コンジ先生が『オレ』って言ってる……。真のコンジ先生だ。
コンジ先生はそのIQの高さ故に、普段は脳をほとんど休ませているのです。
そして、その黄金の脳をフルで稼働させると、とてつもない知能を発揮するわけですが、その際は感情的にもなって『オレ』って言うようになるんですよね。
なにか今の会話でスイッチが入ったみたい……。
「そ……そうなんですわね……。確かに、キノノウ様の助手でしたね。キノノウ様がそれを上手く使われているのですわね! さすが!」
「ですわねぇ。どんな人でも役立つように扱えるのが名探偵たる由縁ですね! お姉さま!」
「まったく。そのとおりですわ。キノノウ様。私、ぜひ、『ゾンビ伝説』のお話、詳しく聞かせていただきたいですわ。」
「あら! それいいですね。お姉さま。私もぜひお伺いしたいですわ!」
と、二人はまったく悪びれる様子もなく、コンジ先生に過去の事件の話をせびるのだったー。
~続く~
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