23 / 62
第3日目
第18話 到着3日目・昼その1
しおりを挟む※『或雪山山荘』2階・見取り図
私、ジョシュアとコンジ先生がこの『或雪山山荘』に到着して3日目の朝を迎えました。
この日の朝、私は誰かの叫び声で目が覚めたのです。
また何か起きたのか……? 叫び声で起こされるだなんて!
同じ階か、でも少し遠い……。館の反対側かもしれない。
「ジョシュア! 起きてるのか? オレだ! コンジだ!」
コンジ先生の声がドアの外から聞こえる。
先生もやはりあの叫び声で起きたらしい。
「はーい! コンジ先生。またなにかあったのでしょうか?」
「ああ。ジョシュア! いや!? 僕もまだ確かめてはいないが、『左翼の塔』側でなにかあったらしいな……。」
「あ、すぐ、行きます。ちょっとまってください!」
私は自分の腕時計を見て、朝まだ6時前だと確認する。朝食の時間には早いなと一瞬思ったけど、今はそれどころじゃあなかったわ。
取り急ぎ、服を上からサッと着て、部屋の扉を開ける。
ちょうど、コンジ先生の隣の部屋の扉も開いて、ジェニー警視も顔を出した。
「あれはイーロウさんの声だな。また事件が起きたらしいな。キノノウくん。」
「ああ。ジェニー警視。そのようだな。」
「あ、おまたせしました。先生……! あ、ジェニー警視。おはようございます!」
「ああ。おはよう。ジョシュアくん……。また事件らしい。」
「ええ。そうみたいですね。」
「よし! 行くぞ。『左翼の塔』側の2階だ。廊下をまっすぐ行くぞ。」
「エラリーンが……。殺された……。」
私たちが『左翼の塔』側の2階を『左翼の塔』に向かって廊下を曲がったところで、廊下に呆然と立ち尽くすイーロウさんの姿が見えたのだ。
イーロウさんは茫然自失になっていて、彼の前の扉は開きっぱなしになっていた。
エラリーンさんの部屋の前だ……。
彼女の部屋は大部屋で2部屋分で1部屋になっている。
『コの字』2画目の部分『 _ 』の部分先端に「左翼の塔」があり、そこから右の曲がり角部分に向かって真ん中に廊下が通っていて、上側が塔に近い順に、
「サッカー選手ジニアスさんの部屋」、「俳優イーロウさんの部屋」、「エレベータールーム」となっていて、
下側が塔に近い順に、「公爵夫人エラリーンさんの部屋」が2部屋分続き、「宗教家アレクサンダー神父の部屋」となっている。
「いったい何が……!?」
ジェニー警視とコンジ先生が先にエラリーンさんの部屋をのぞいた。
私もその後に続き、部屋の中を見た。
その部屋の中は、真っ赤に染まっていた。
血の赤、赤、赤ー。
壁や床に飛び散る血しぶき。
そして、ベッドの上に横たわる無残な姿の女性……らしき人物。
「エラリーンさん……。」
間違いなく彼女だった。
その喉は食い破られ、はらわたが引きちぎられ、手足はズタズタにされていた。
惨劇の部屋に主役然としてその中央にあるベッドの上に横たわっていた。
そして、周囲には書類が散乱していた。
「イーロウさん! 何があったのですか!?」
ジェニー警視がいまだ廊下で立ち尽くしていたイーロウさんに問いかけた。
「あ……。ああ、エラリーンに朝の挨拶をしようと部屋に寄ったんだ……。そうしたら……。こんな……。」
イーロウさんはガタガタ震えながら声を絞り出した。
「ジェニー警視! それより、パパデスさんに知らせてください!」
「あ……。ああ、そうだな。キノノウくん。この場は任せたよ。誰にも手を触れさせないでくれ!」
「わかっていますよ。現場保存の鉄則ですね。」
「その通りだ。」
ジェニー警視がパパデスさんを呼びに行く。
私は部屋に入らず、イーロウさんのそばで、彼に気をかけていました。
おそらく恋人同士であっただろうイーロウさんにとって、彼女の死はどれだけショックでしょうか……。その悲しみは計り知れないと思う。
「ああ……。エラリーン。これから俺はどうしたらいいんだ……。」
「イーロウさん……。」
コンジ先生は部屋に散らかっていた書類の一枚を拾い上げ、じっと見ていた。
何の書類なんでしょうか……。
「キノノウ様! また犠牲者が出てしまいましたか!?」
駆けつけてきたのはシープさんでした。
ジェニー警視と一緒に慌てて来られた様子でした。
「ああ……。これはひどい……。エラリーン様……でございましょうな。」
「パパデスさんには知らせておいた。ショックを受けていたので、今はシュジイさんに付き添ってもらっている。」
「ああ、それで、シープさんと一緒に来られたのですね?」
「その通りだ。」
「死因はやはり、喉への一撃であろうなぁ。」
「断言はできませんが、そのようでしょうね。血の飛び散り方から計算すると、先に喉へ一撃、その後、内臓へ食らいついたと見える。手足の傷は抵抗した際に負ったものだろう。」
「うむ。私もキノノウくんと同じ見解だ。」
「コンジ先生……。やはり、人狼のしわざでしょうか?」
「だろうな。」
私たちの会話を聞いていたイーロウさんが声を荒げた。
「ちょっと待てよ! 人狼ってなんだ? 何を言ってるんだ!? おまえたち……。何か隠していないか!?」
「イーロウさん。あなた方には黙っていましたが、人狼という化け物がどうやらこの館内に潜んでいるらしいのです。」
「し……しかし! 昨日、館内を捜索してそんな獣はいなかったって言ってたじゃあないか!?」
「はい。まあ、それは、その通りなんですが……。」
「説明しろよ!」
「まあ、イーロウさんも落ち着いてください。後ほど、みなさんに説明しますので。とりあえず、ダイニングルームでまた集まりましょう。シープさん! みんなを起こしてくれるかな?」
「もちろんでございます。」
「ジェニー警視は、悪いが、シュジイさんを呼んできてほしい。念のため検死してもらおう。」
「それはそうですね。じゃあ、ついでにカンさんとメッシュさんも呼んでこよう。検死が終わったら……、地下室へ遺体をまた運んでおいてもらおう。」
「そうですね。」
話を聞いていたイーロウさんは、廊下の方へ踵を返し、振り向きもせずこう言った。
「後で……。きちんと、説明してもらうからな!?」
そうして、ダイニングルームの方へ歩いて行ってしまいました。
「やはり……。人狼の存在をみなさんに隠していたのはまずかったですかねぇ。」
私は、そんなイーロウさんの後ろ姿を見ながら、コンジ先生に言った。
イーロウさんはエラリーンさんを失って本当にショックだったから、怒っているんだわ。
するとコンジ先生は私のほうを向きもせず、こう言った。
「でも、彼、涙一つ流していなかったな。」
え……!?
たしかに、イーロウさんは涙は流していなかったけど。
「いや。コンジ先生! それはそうですけど、この惨状を見てショックが大きかったからじゃあないですか?」
「ふむ。君はそう思うのかい? そうかもしれないし、そうじゃあないかもしれない。少なくとも僕の目には彼がエラリーンさんを亡くして悲しんでいるようには見えなかったと言うだけさ。」
「そ……それは……。」
「ま、それはどうでもいい。それより、ジョシュア。これを見てくれ。」
「あ、それは落ちていた書類ですか?」
「ああ。これには、エラリーンさんとある人物との今後の取引についての契約内容が書かれているんだ。」
「え? 何の取引ですか?」
「エラリーンさんの財産の管理……と言ったところか。」
「財産の管理!?」
エラリーンさんと言えば、まだ若くして未亡人になったイギリスの公爵夫人です。
亡くなった公爵の資産をたった一人で相続したので莫大な財産を持っている。
「いったい誰との取引なんですか?」
私はコンジ先生に質問をした。
「それは、亡くなったアイティさんだよ。」
なぜ? 死んだアイティさんとの取引の書類が部屋に落ちていたの?
どうしてエラリーンさんが襲われたのか?
その答えは、ベッドの上で冷たくなっている彼女自身は知っているに違いないが、もう語ることはできないのであったー。
~続く~
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~
御崎菟翔
キャラ文芸
【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】
「選ぶのはお前だ」
――そう言われても、もう引き返せない。
ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。
そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。
彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。
「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。
なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに!
小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。
その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる――
これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。
★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』
この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

