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第3日目
第19話 到着3日目・昼その2
しおりを挟む※エラリーンの部屋
私たちがエラリーンさんの部屋で散乱した書類を調べていると、シュジイ医師がやってきた。
「うーむ。また派手にヤラれましたな……。」
「そうですね。あ、シュジイ先生。パパデスさんは大丈夫ですか?」
「ええ。まあ、少し鎮静剤を飲まれましたので落ち着いたと思いますよ。あとはスエノさんに任せてきました。」
「そうですか……。」
「ああ。ドクター。こっちへ来て念のため検死をしてもらいたい。」
「了解しました。」
そう言ってシュジイ医師はエラリーンさんの死体を検分し始めた。
ジェニー警視とシープさんは二人一緒に他のみなさんに知らせるために各部屋へ向かった。その間、私はエラリーンさんの部屋を見回す。
豪華なかばんが置いてあり、アクセサリーの類いがベッド脇のテーブルに置いてあった。
それにしてもなぜ、アイティさんとの契約書類が散らかっていたのだろう。
書類の一部に血がついているのが見える。
ベッドに倒れているエラリーンさんはベッドの向きに交差するように倒れたように寝ていた。
普段、寝る向きとは直角に横たわっていたとも言える。もちろんベッドのサイズが大きいので単に気分で横向きに寝たのかもしれないけど。
「死因はおそらく、喉への一撃ですな。断言はできませんが、血の飛び散り方から計算すると、喉への一撃から内臓へ食らいついたと思われます。手足の傷は抵抗した際に負ったものでしょうな。」
おお! コンジ先生の見立てとぴったり一致ですね。さすがコンジ先生です!
「なるほど。やはりそうですか。襲った相手は扉のほうから部屋に入ってきて、ベッドから立ち上がった彼女に襲いかかったと思われますが、ドクターの見解はどうです?」
「ふむ。そのようだと私も思いますな。まず、身体の向きが扉に向かった状態で犠牲になったと思われます。つまり、今、キノノウ様が言ったような状況が可能性が高いでしょう。」
「じゃあ! 今回の犯人の侵入経路は部屋の扉からってことですね?」
「そうだろうな。ほら? ジョシュアもドクターも見てください。この部屋の2箇所の窓はきっちり鍵も閉まっていました。」
エラリーンさんの部屋は私たちの部屋の2部屋分の広さがある。
各部屋に窓があるように、エラリーンさんの部屋には窓が2つあった。
だが、そのいずれも鍵がかかっていたようだ。
そりゃそうだ……。こんな吹雪の雪山で窓を開ける人がいるわけがない。
「うわぁああああああーーーっ!!」
すると、館のどこかから叫び声が聞こえてきた。
「誰だ!?」
「男の人の声ですね!」
「1階でしょうか? 下から声が聞こえたような……。」
シュジイ医師がそう言った。
私たちはあわててエラリーンさんの部屋から出る。
「ジョシュア、時間は?」
「はい。6時……4分です。」
「ふむ。来る時につけていた腕時計はセンスがなかったが、その時計はなかなかセンスがいいではないか?」
「……って、これ、コンジ先生にもらった物ですけど!? 一応……かばんに入れて持ってきてたんですよ!」
「ふぅーん。一応ねぇ……。」
「なにかありましたか!?」
見ると、ジニアスさんが自室から出てきたところだった。今起きたのだろうか?
「さあ、わかりませんが、とにかく気をつけて行ってみましょう!」
「なにか武器のようなものはありますか?」
「これでどうですか!?」
シュジイ医師がエラリーンさんの部屋にあった燭台を掴んできた。
「僕もこれくらいしか見当たらないなぁ。」
ジニアスさんも自分の部屋から小さなダンベルを持ってきた。どうやら、この休暇中も筋トレをするために持ってきていたらしいです。
コンジ先生は廊下に置いてあった消化器をすかさず手にとった。
事前にチェックしていたのでしょうか。そこに置いてあるなんて、気が付きませんでしたよ。
「ジョシュア! 君は僕たちの後ろからついてくるがいい!」
「わかりました。」
そして、私たちが『左翼の塔』側の階段を注意深く下りたところで、また叫び声が聞こえた。
「だ……誰かぁ!? カンが! カンがっ……!」
はっきり声がわかりました。
「メッシュさんだ!」
「キッチンのほうだ!」
私たちが、玄関ホールを通り抜けて、『右翼の塔』側の階段の広間に着いたところで、上からちょうどシープさんとジェニー警視、それにビジューさんが下りてきた。
そして、同時にキッチンの方の廊下を見た。
メッシュさんが、『右翼の塔』の前の廊下、警備室の扉の前で、座り込んでいたのだ。
その指が指すほうは警備室の扉の向こうだ。
私たちは大急ぎで駆けつけ、部屋の中を覗き込んだ。
その部屋の中は、真っ赤な血があらゆる方向へ飛び散っていた。
そして、それを覆い隠すような雪の白ー。
ビュゥオオォオオオオオオォ……
壁や床に飛び散る血しぶきの上に雪が包み隠すように吹雪いていた。
警備室の床に雪に埋もれかかっている塊が見えた。
人間のようだ……。
管理人のカンさんの服だ……。
顔は床に伏せていたのでよくは見えなかったが、その服装は昨日見たカンさんの服装と完全に一致した。
その全身は朱に染まり、雪とあいまって綺麗だとも思える。
警備室の裏の勝手口が開きっぱなしになっていた。
そこから猛吹雪の真っ白な光景と恐ろしいまでの風の音が聞こえていた……。
※警備室の惨劇
「動くモノはなし……のようだな。シープさん、銃はどこにある?」
「はい。この警備室の奥の棚です。」
「ここからでは、ちょうど手前の棚で死角になっているな……。慎重に行くぞ。」
「え……? じゃあ、そこに化け物が潜んでいるかも……!?」
「気配は感じないがな……。念のため注意していこう。」
サーベルを持ったシープさんと消化器を構えたコンジ先生が先頭を切って部屋に入っていく。
その後ろからを火かき棒を持ったジェニー警視とダンベルを持ったジニアスさんが続く。
私と燭台を持ったシュジイさんは入り口のところで待っている。
ゆっくりとカンさんの遺体を回り込みながら、部屋の中央に進むコンジ先生とシープさん。
その後ろからジェニー警視とジニアスさんが部屋の中央にある暖房器具の後ろから裏口の扉へ向かう。
何者かが襲いかかってきたとしても暖房器具が邪魔になるだろう。
そして、その暖房器具をジェニー警視たちとは逆方向から棚の向こうの武器棚へ向かうコンジ先生とシープさん。
コンジ先生……気をつけて!
バッ!!
コンジ先生とシープさんが武器棚と手前の棚の間に身を躍らせた!
と、同時にジェニー警視が裏口の扉の雪の中へ……!
「何者も隠れてはいない……ようだな。」
「そのようですね。」
コンジ先生とシープさんは部屋の中を注意深く見ながらお互いで確認しあった。
「こっちも何もいないようだ……!」
「ですね……。」
「足跡かなにかがあるかと思ったが、あったとしてもこの雪ではもうわからなくなってるな。」
ジェニー警視がそう言いながら、裏口の扉をガチャりと閉めた。
そして内側から鍵をかける。
ピュウゥ……
吹雪の余韻が部屋に舞う。
そして、誰もが一瞬静かになり、静寂の外に遠く吹雪の風音が低く響いていたのだったー。
人狼はどこか外の雪の中へ逃げていったのでしょうか……。
そうであれば安心できるのですけど。
しかし、コンジ先生のほうを見ると、なにごとか真剣な様子で考え込んでいる様子で、安心した素振りは一切見えないのでした。
~続く~
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