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1章 見覚えのない場所へ
7 笑顔
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いよいよ日は沈み始め、空はどんどん赤くなり始めていた。
ここまでずっと元気そうにしていたシオリにも、いよいよ余裕がなくなってきているように見える。もうずっと前から、ボク達は無言のまま歩き続けている。
こうも静かな時間が続くと、ボクは嫌なことばかり考えてしまう。食料や水が底をついて、ボク達はこのまま何も見ることなく力尽きてしまうのではないか。
本当はシオリにもう一度
「大丈夫だよー!」
と言って欲しかったが、おそらく今の状況は”大丈夫”ではないので、シオリは何も言葉を返してはくれなかった。
「おおーーーっ!!?」
シオリがいきなり大きな声を出す。
「え?何?」
ボクはシオリの視線の先を追ったが、どうも何かがあるようには見えない。
「ほら、あれあれ」
シオリはまっすぐ先を指差す。やはり、その先には何もない。
「何も見えないけど」
とボクはいう。
「ほら、よく見てみなよ、あっちから先、V字にヘコんでるところが続いてるでしょ?」
「う、うーん...よくわからないけど、それがどうかしたの?」
シオリがニカッと笑いながら、こちらを見る。
「川だよ」
「川?」
「このあたりはね、一度雨が降ると一気にどっさり降るの。そんときに、一時的に川ができる事があるんだけど...多分、あそこに見える窪みはそれの跡だと思うんだよね」
ボクはそれを聞いてから、もう一度シオリの示す方を見る。なんとなくヘコんでいるような気がしないでもないが、正直よくわからなかった。
ボクとシオリはその窪みに沿って歩いていく。その先を見ると、たしかに窪みはだんだん深くなっていき、今まで歩いてみた景色の中には無い地形を作っていた。
「ロ...ロン! ほら、ロン!」
シオリがまた指を指す。その先に見えるのは...
「森だ...!」
森だ。木々が連なっているのが、遠くからでもわかる。ついに、ボク達はこの草原を抜けたのだ。
「やった!あはは!やったやったー!これで水とご飯にありつけるよ!!」
シオリはボクの肩を掴んでグルグルと揺らしている。ボクはヘトヘトだったから、無抵抗なまま揺らされて、目をグルグル回すだけだった。
シオリは早口で何かをボクに言っている。森に入ったらする事、してはいけない事、見つけたい物、見つけたくない物...疲れ切ったボクの耳に難しい言葉は入ってこない。森に水と食料がある?本当に?
それでも、シオリの笑顔を見て、ボクはただただ、救われた気持ちになったのだ。
ここまでずっと元気そうにしていたシオリにも、いよいよ余裕がなくなってきているように見える。もうずっと前から、ボク達は無言のまま歩き続けている。
こうも静かな時間が続くと、ボクは嫌なことばかり考えてしまう。食料や水が底をついて、ボク達はこのまま何も見ることなく力尽きてしまうのではないか。
本当はシオリにもう一度
「大丈夫だよー!」
と言って欲しかったが、おそらく今の状況は”大丈夫”ではないので、シオリは何も言葉を返してはくれなかった。
「おおーーーっ!!?」
シオリがいきなり大きな声を出す。
「え?何?」
ボクはシオリの視線の先を追ったが、どうも何かがあるようには見えない。
「ほら、あれあれ」
シオリはまっすぐ先を指差す。やはり、その先には何もない。
「何も見えないけど」
とボクはいう。
「ほら、よく見てみなよ、あっちから先、V字にヘコんでるところが続いてるでしょ?」
「う、うーん...よくわからないけど、それがどうかしたの?」
シオリがニカッと笑いながら、こちらを見る。
「川だよ」
「川?」
「このあたりはね、一度雨が降ると一気にどっさり降るの。そんときに、一時的に川ができる事があるんだけど...多分、あそこに見える窪みはそれの跡だと思うんだよね」
ボクはそれを聞いてから、もう一度シオリの示す方を見る。なんとなくヘコんでいるような気がしないでもないが、正直よくわからなかった。
ボクとシオリはその窪みに沿って歩いていく。その先を見ると、たしかに窪みはだんだん深くなっていき、今まで歩いてみた景色の中には無い地形を作っていた。
「ロ...ロン! ほら、ロン!」
シオリがまた指を指す。その先に見えるのは...
「森だ...!」
森だ。木々が連なっているのが、遠くからでもわかる。ついに、ボク達はこの草原を抜けたのだ。
「やった!あはは!やったやったー!これで水とご飯にありつけるよ!!」
シオリはボクの肩を掴んでグルグルと揺らしている。ボクはヘトヘトだったから、無抵抗なまま揺らされて、目をグルグル回すだけだった。
シオリは早口で何かをボクに言っている。森に入ったらする事、してはいけない事、見つけたい物、見つけたくない物...疲れ切ったボクの耳に難しい言葉は入ってこない。森に水と食料がある?本当に?
それでも、シオリの笑顔を見て、ボクはただただ、救われた気持ちになったのだ。
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