ときおりしおり

俺んぢ

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1章 見覚えのない場所へ

9 最終兵器

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 コツン、コツンと地面から振動が伝わる。ボクがまぶたを開くと、ぼやけた風景がユラユラと揺れている。耳からは、ピー、ピーという甲高い鳥の鳴き声が聞こえる。

「あ、起こしちゃった?」

 シオリは何やら大きな岩を両手で持ち上げながら、そう言った。

 ボクは身体を起こして辺りを見回した。もうすっかり日は登り、明るい光が木々を反射していた。

「...」

 ボクは頭を手で押さえる。頭の表面がやたら痛い。おそらく、枕がわりにしていたショルダーバッグからボクの頭が落ちて、地面にごろごろと転がっていたのだろう。

「何をしてるの?」

 ボクはシオリに聞いた。それと同時に、シオリは岩を頭の上まで持ち上げ、思いっきり地面に向かって打ち付けた。
ボクは何事かと、立ち上がってそちらを見る。

 地面には、さっきの岩と、薄い緑色をした丸い物体が置いてあった。

「これ、何?」

 とボクがシオリに言うと、シオリはすっと立ち上がってパンパンと手をはたき、こちらを向く。

「木の実だよ」

 シオリはどうやら、その薄緑の木の実に岩を打ち付けていたらしい。

「この木の実ね、すんげー硬いの。名前はなんて言ったかな...忘れちゃった」

 シオリはもう一度、岩を持ち上げて木の実に打ち付ける。岩の尖った部分が木の実の皮を一枚だけ擦りむいたが、どうやらほとんど効果がないようだ。

「こりゃだめかなー」

 それをみてシオリは、右肩を大きくぐりぐりと回しながら、木の実をこじ開ける事を半ば諦めかけている。

「こんな硬いやつ、本当に食べられるの?」

 と、ボクはシオリに話しかける。

「うーん、たしか中には液体が入ってて、甘くて美味しいかったはずなんだけど...」

 と、シオリは言う。

「そういえば、シオリの図鑑には載ってないの?」

「ああ、あれ動物図鑑なんだよね」

 ボクはう~んと唸り声をあげる。

「じゃ、最終兵器といきますか」

「最終兵器?」

 シオリはリュックの所まで歩くと、中から黒い物体を引きずりだした。

「こいつでぶっ飛ばす」

 シオリが両手に持ったのは、巨大なイカつい銃だ。

「うわっ」

 文字通り兵器だった。

 ボクは驚いてしまって、おもわず後ずさる。

「そ...そんなんでうまく開くかね?」

 おそるおそる、ボクは銃に目を向ける。

「オレを怒らせた罪は重いぜ、ベイビー」

「...」

 シオリが木の実に狙いをすます。ボクは出来るだけ離れてから、見守っていた。

「はっしゃーーーっっ」

 シオリが大声をあげたが、銃声は聞こえない。

「あれ、うまく押せないよ、これ」

 シオリは銃をコンコンと叩く。

「安全装置が外れてないんじゃないの?」

と、ボクは言う。

「あ、そんなんあるんだ。よく知ってるね」

 確かに、なぜそんなマニアックな記憶が残っているんだろう。もっと大事な記憶を思い出したい。

 シオリは銃からそれっぽいものをガチッと動かすと、もう一度木の実に向かって照準を合わせる。どうやらシオリは銃の使い方をほとんど知らないらしい。

「今度こそいくよ」

 カチッ

 シオリはそう言って、引き金を引いた。...が、発砲される様子はない。

「あれ~?」

 と、シオリは眉をひそめる。

「やっぱり弾が入ってないのかなー」

 シオリはそう言って、銃を色々な方向にクルクル回しながら、銃口をツンツンと人差し指でつついた...その時だった。


ッゴオオオォォン...


 突然の銃声が、耳をつんざく。

ボクは思わず、目を閉じ、耳を塞いだ。

「シ...シオリ...?」

 頭の中からなかなか離れない轟音を押し出し、なんとかボクはまぶたを開けた。

 ボクの目に最初に映ったのは、膝についた...赤いドロドロした液体だった。

 視界が、ぐらぐらと歪む。

 ボクはゆっくりと視線をあげる。

 地面には、赤い液体がドクドクと広がっていた。

「う...」

 喉がつまる。

「うわああああああああ!!!」

 そして最後、ボクの目に映ったのは...







 四散した木の実と、赤い果実だった。

















「うおっ。中身、結構グロいね」

と、シオリが言った。
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