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3章 オレンジ色の街
5 家の主
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「君達まだそんな年なのに、二人だけで遠出なんて危険すぎない?」
とヒラガさんが言う。たしかに、この街に来るまでだって何度か死にかけている。少し間違ったら命を落としかけない。
「何言ってんの? 全然大丈夫だよ!ね、ロン!」
と、シオリがボクの肩を乱暴にバンバンと叩いてくる。
「え、うん、そうだね...」
レースケの家を出てから、ヒラガに連れられて30分ほど歩いた。足に絡みつく植物を払いのけながら前をふと見ると、街の鱗片が木々の間から覗いた。
「この街の名前って、アインジーとアインベイ、どっちなの?」
とシオリがヒラガに言う。
「あー、どうなんだろう?」
ヒラガは軽く顔を傾ける。
「古くからこの街に住んでる人の中には、アインベイって呼んでる人がいるね。まあ大体の人はアインジーって呼んでるんじゃないかな」
「...ふーん、あっそ」
シオリは何処か不満げだ。
森を抜けだすと、目の前には明るい桃色の砂利でできた地面が見えた。その上には、こげ茶のレンガを積んだような柱に、オレンジ色の壁の建物が、いくつも両手に広がっている。
ボク達は、ついに街にたどり着いた。シオリは目を輝かせて、建物の一つ一つを眺めている。
「ほら、こっち」
ヒラガは、立ち止まるボク達を先導するように右の方へと歩いていく。ボクがその後をついて行き、そのあとにシオリが続いた。
「ここが、僕の家だよ」
そう言ってヒラガは、背の高い一つの家の前で立ち止まった。高台の一角に位置するこの家は、こげ茶色の木とピンク色のレンガでできており、少しだけ色褪せていた。
「ほら、入って」
ヒラガは縦長の入り口扉をギギッと開けて、中に入る。入ってすぐ垂れている紐をヒラガはクッと引っ張ると、天井がやんわりと黄緑色に光りだし、薄暗い部屋がぼんやりと明るくなる。ボクはその様子をじっと眺めていた。
「お邪魔します」
ボクはそう言って、靴を履いたまま家の中へ入っていく。後ろを見ると、カメオも遠慮なくズカズカと上にあがってきている。
「あーっ、カメオは外で待っててって」
とシオリがカメオの重い体を必死に持ち上げようとする。ボクはカメオの体重を甘く見ていた。カメオは目を丸くしてシオリをじーっと見つめているばかりで、全くその場から動こうとしない。
「大丈夫だよ。その子もあげちゃって」
とヒラガは言った。シオリは少し驚いたが、ヒラガの言う通りカメオをそのまま家の中に入れた。
「僕ね、生き物が好きなんだ。色んな生き物達が僕の家に遊びに来るんだよ。飼ってるわけじゃないんだけどね」
右にある薄い階段から、ドンドンと何かが下ってくる音が聞こえる。姿を現したのは、黒くてやたら図体のデカい猫だった。猫は階段を降りた後ボク達を観察するように順番に見つめてから、カメオの元にゆっくりと歩いていく。
「オアウーー。」
「...」
「オオーーーッ!」
「...」
カメオが猫に何かを言っているが、猫の方はムスッとして目を合わせるだけで何も言わない。
「この猫は僕の家の...そうだな、ボスみたいな奴なんだ」
そう言ってヒラガはしゃがんで猫に目線を合わせる。
「だいぶ前から僕の家に住み着いてるんだけど、別の生き物がやってくるといつもこうやって検問しに来るんだ。もしかしたら挨拶しにきてるだけなのかもしれないけど、なにしろ顔が恐いからさ」
ヒラガがそう話し終わる前に猫は背を向け、また階段を登っていってしまった。
とヒラガさんが言う。たしかに、この街に来るまでだって何度か死にかけている。少し間違ったら命を落としかけない。
「何言ってんの? 全然大丈夫だよ!ね、ロン!」
と、シオリがボクの肩を乱暴にバンバンと叩いてくる。
「え、うん、そうだね...」
レースケの家を出てから、ヒラガに連れられて30分ほど歩いた。足に絡みつく植物を払いのけながら前をふと見ると、街の鱗片が木々の間から覗いた。
「この街の名前って、アインジーとアインベイ、どっちなの?」
とシオリがヒラガに言う。
「あー、どうなんだろう?」
ヒラガは軽く顔を傾ける。
「古くからこの街に住んでる人の中には、アインベイって呼んでる人がいるね。まあ大体の人はアインジーって呼んでるんじゃないかな」
「...ふーん、あっそ」
シオリは何処か不満げだ。
森を抜けだすと、目の前には明るい桃色の砂利でできた地面が見えた。その上には、こげ茶のレンガを積んだような柱に、オレンジ色の壁の建物が、いくつも両手に広がっている。
ボク達は、ついに街にたどり着いた。シオリは目を輝かせて、建物の一つ一つを眺めている。
「ほら、こっち」
ヒラガは、立ち止まるボク達を先導するように右の方へと歩いていく。ボクがその後をついて行き、そのあとにシオリが続いた。
「ここが、僕の家だよ」
そう言ってヒラガは、背の高い一つの家の前で立ち止まった。高台の一角に位置するこの家は、こげ茶色の木とピンク色のレンガでできており、少しだけ色褪せていた。
「ほら、入って」
ヒラガは縦長の入り口扉をギギッと開けて、中に入る。入ってすぐ垂れている紐をヒラガはクッと引っ張ると、天井がやんわりと黄緑色に光りだし、薄暗い部屋がぼんやりと明るくなる。ボクはその様子をじっと眺めていた。
「お邪魔します」
ボクはそう言って、靴を履いたまま家の中へ入っていく。後ろを見ると、カメオも遠慮なくズカズカと上にあがってきている。
「あーっ、カメオは外で待っててって」
とシオリがカメオの重い体を必死に持ち上げようとする。ボクはカメオの体重を甘く見ていた。カメオは目を丸くしてシオリをじーっと見つめているばかりで、全くその場から動こうとしない。
「大丈夫だよ。その子もあげちゃって」
とヒラガは言った。シオリは少し驚いたが、ヒラガの言う通りカメオをそのまま家の中に入れた。
「僕ね、生き物が好きなんだ。色んな生き物達が僕の家に遊びに来るんだよ。飼ってるわけじゃないんだけどね」
右にある薄い階段から、ドンドンと何かが下ってくる音が聞こえる。姿を現したのは、黒くてやたら図体のデカい猫だった。猫は階段を降りた後ボク達を観察するように順番に見つめてから、カメオの元にゆっくりと歩いていく。
「オアウーー。」
「...」
「オオーーーッ!」
「...」
カメオが猫に何かを言っているが、猫の方はムスッとして目を合わせるだけで何も言わない。
「この猫は僕の家の...そうだな、ボスみたいな奴なんだ」
そう言ってヒラガはしゃがんで猫に目線を合わせる。
「だいぶ前から僕の家に住み着いてるんだけど、別の生き物がやってくるといつもこうやって検問しに来るんだ。もしかしたら挨拶しにきてるだけなのかもしれないけど、なにしろ顔が恐いからさ」
ヒラガがそう話し終わる前に猫は背を向け、また階段を登っていってしまった。
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