魔王にさらわれた聖女の君は、僕の言葉で堕とされ『花嫁』となる

K.A.

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Act 09

青い瞳~夜伽の間

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「はあ、はあ……む、むね……胸の先をでないで……あは……ゆ、ゆびを……指を、布の中に入れて……動かさないで……あは……おなかのあたり……脇腹わきばらでないで……」

「ふふふ。闇に堕ちるのは、快楽を得るに等しいだろ?
 大聖堂の広間は、初めて二人が身体を重ねた場所だったね。うつつに並ぶものがない美しさだと評される天井画よりも、何も描かれていない、僕の素肌の方がよいと無意識に呟いた事を恥ずかしがっていた。アリスは、頬を赤くしながら視線をそらしていたが、おおいかぶさっていた僕は、その時の君の様子をすべて見させてもらっていたよ。
 視線を戻さぬまま、といとして雨水を排す為にある、悪魔の絵姿えすがたしたぞうの話をしてくれたね。アリスが書物から得た知識によれば、水を吐くのだから、人や聖獣ではなく、悪魔の姿にすればよいという深みのない理由なのだろうという事だった。だが、自分が好む書物に描かれていた悪魔は、高潔こうけつで、いやしい事などしなかったので、の印象を与えてしまうのに、悪魔の姿で造形芸術を仕上げる意味がよく分からないと言っていた。
 ああ。
 話を絡め、もしも、僕が、悪魔であったらどうすると問うたら……」

「あは、あは、あは……し、下を……下をめないで……あは、あは……くんっ! あ、足……足を……両足を持ちあげて……私の下を、めないで……くんっ! くんっ!」

「……悪魔というものが、心が曲がっているようなしん奸邪かんじゃでなければ、親しく打ちけ、昵懇じっこん間柄あいだがらになれると思うと、幼い頃から考えていたので構わないと答えてくれた。今のように、熱い息を吐きながら、興奮した様子で、途切れ途切れにそのような意味だと伝えてくれる必死な姿、実に愛らしかった。
 あの時、僕の手は、君の胸に触れていた」

「胸……胸を、さわらないで……布が落ちてしまう……胸を持ちあげるみたいに……さわらないで……あは……はあ、はあ……あ、足を、魔法でかかえあげないで……足を、開いたままにしないで……あは……くはっ! む、胸……でないで……指で……でない……で……あはっ! あはっ! あはっ!」

「あの日は、互いに初夜であった故、究竟きゅうきょうを目指そうとは考えず、もろくないところをさがす為、二人とも必死だったね。僕の手に触れられ、心地よくなったと素直に伝えてくれて嬉しかったな。
 聖女さまの可愛らしさに、魔王である僕が魅了されてしまい、魔力に揺らぎが生じていたほど。舌の交わりの刺激が情熱へと変化し、現身うつしみを一つ作り出してしまったかのようだった。心の移ろい激し過ぎて、ついには、魔族と人間のどちらにも落ち着けぬ姿になってしまったが、アリスは、行為を続ける事をとしてくれた。
 へきの円形の飾り窓が、月明かりを浴びてきらめいているが、それ以上に、僕の青い瞳の方が美しいから、不吉な夢を見ているはずがない。だから、最後まで遂げたいと、僕の首の後ろに、か細い腕を回しながら、強く訴えかけるように言ってくれたのをおぼえているよ。
 切ない瞳で見上げてくれる君にえつを与えてやる事が、こののちに続く、すべての時の僕の役割であると、深く心に刻んだほどせられた……さあ、僕が悪魔であったからこそ得られる快感をたっぷりと味わってくれ」

「くんっ! くんっ! あ……あは……裂け目の中に……エリオットの尻尾しっぽが、入って……くんっ! あは……あ、足が閉じられないのに……く……ひぃ! あああ! や、やめて……おなかから、胸に向かって、ねばねばしたのがあがってきていて……ねばねばしている虫……こ、これも、魔法で作ったの……あはっ! あはっ!」

「うんうん。
 磔台に縛られたまま、そのきょうをしっかりと楽しみたいんだね。腕を繋がれたいかどうかは、君の好きにするとよいと最初に伝えてあった通りだ。人間どもの街に帰りたいのがしんの心の内なら、束縛失せるはず。倫理にもとるのはいけないと、生煮なまにえの反応として僕の手からのがれたいと言っていただけだと、いよいよ認めるしかないんじゃないか?
 おやおや……に巻いている白布が、の意味をなさなくなってきているようだ。代わりに、僕の魔力で巻いてやろう」

「え……あ、あ、あ……や、やめて、エリオット……魔法の触手で……ぬ、布をがないで……私、本当に何も着ていない姿になってしまう……あはっ! く、首の後ろに……細い触手を入り込ませないで……磔台に縛られたままなのに……み、耳まで……あは、あは」

「悪魔が、がいを与えるだけの存在なんて、世迷よまごとに等しい、人間どもが作り出した、愚の象徴の一つであると、幼い頃から気づいていたんだろ?
 おのれを救う神のしろであるとして、あがめよと物心つく前から教え込まれてきた、祭壇の上に置かれているぞうよりも、大聖堂の構えから突き出してしまっている悪魔たちと気持ちを分かち合いたかったのではないかな? 外壁から離れてしまいそうなぐらい乗り出した格好で据えつけられたそれらが、自由になりたいと嘆き咆哮ほうこうしているかのように――君の目には、そう映っていた」

「あは、あは……尻尾しっぽが……エリオットの尻尾しっぽが、奥に……あ……あうううっ! し、尻尾しっぽを動かさないで……だ、出し入れ……ん……んんんんっ!」

「……口の中は、どうしても僕自身で制してやりたくなってしまう。興奮が過ぎ、達した時のアリスの咥内こうないの味は最高だよ。あふれる濃厚なつばきを、僕の内まで引き込みたくなり、薄紅色うすべにいろのその唇をおおうように吸ってしまった。強引で、驚いてしまったかな?」

「は……はあ、はあ……大聖堂のみんなは、私の『聖なる力』が神像しんぞうに届かずに驚いてしまっただけ……そう、驚いてしまっただけ……あ……あ、あ……や、やめて……エリオット、強く抱きしめないで……抱きしめながら……首もとを、吸わないで……はあ、はあ……首もとに、吸いつかないで……やめて……はあ、はあ」
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