魔王にさらわれた聖女の君は、僕の言葉で堕とされ『花嫁』となる

K.A.

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Act 12

Ceremony

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「窓から入り込む明かりが美しい場だ。
 アリスが、偽りの神さまへのおつとめをする際、祭壇を見上げた向こうには、格子を巧みに組み合わせた飾り窓があったはずだが……おやおや……これは、背の方向上部にあった円形窓じゃないか。聖女のやくいられている間、祭壇を照らす為に降り注いでいる光ではなく、大聖堂出口のきらめきの方がよいと思っていたの? 聖職者どもに囲まれ、祭壇前の内陣ないじんにいる時、早く外に出たいと――つねに大聖堂から逃げ出したいと、聖女の君が考えていたという事かな?」

「……はあ、はあ……円形窓が、とても美しかったから……お祈りにきた人たちが、大聖堂に入る扉の上に、円形窓があったから……はあ、はあ……胸が、おかしい……だ、だめ……はあ、はあ……エリオット……はあ、はあ」

「魔糸によって、今、君の両手が繋がれている翼廊よくろうそれぞれにも扉があるが、誰もが自由に出入りできる口ではなかったね。しかし、じょうさえ外れていれば、のがれる道の一つとなる。
 おやっ!
 礼拝にきたたみらがする、身廊しんろうを照らす為の高窓を、すべて出口の扉に変えてしまうつもりかい!」

「エリオット、お願い。胸が、おかしくなりそう……私は、もうここにいられない……」

「やれやれ。明かり取り塔の窓たちまで扉に変えてしまうなんて……アリス、翼がなければ、出口の扉として使えないじゃないか!
 ふふ。
 僕の可愛い花嫁、これから、僕と君の婚礼の大典たいてんが、ここで執り行われるんだ。盛儀せいぎに相応しい場として、二人が初めて身体を重ねた大聖堂の広間を描いてくれて嬉しいよ。想いをうつつにする典籍てんせきを作り出したのは僕だが、この魔術は、君の心があってこそとなる。
 それにしても美しいね。
 魔法の糸に絡まれ腕を大きく開き、祭壇を背に裸身らしんさらさま見目麗みめうるわしい! 背の悪魔の翼を開く事、慎み深さを見せて控えないでくれ。その行いは、魔界の女王としての権力を顕示けんじする為であって、決して暴慢ぼうまんな振る舞いではないんだ! この魔王エリオット・ジールゲンの花嫁として、絶美ぜつびな姿を見せてほしい!
 さあ、魔の者になったあかしの翼を揺らしながら、唇を重ねるに臨んでくれ……」

「んん……んんんんっ! はあ、はあ……魔王のじゅを浴びせて、私のすべてを消してしまって……胸が、おかしくなりそう……早く……魔法で作られた糸で絡まれているだけでは、私は……手の自由がないだけでは、私は、だめ……何をしでかすか分からない……魔王のあなたなら、私の存在そのものを消せるでしょ。お願い、エリオット……おねがい……んっ! んんんんっ! んんっ!」

「……僕の花嫁、可愛らしいその口から、お願いしてもらえるのは嬉しいよ。人間どもの聖女であった君の存在をついに消してやった! ごくと等しい大聖堂からアリスを救い出したのは、魔王のじゅ。聖女としょうされる罪人として歴日れきじつ、仕置きが与えられる塗炭とたんの苦しみはもうない。愛の力がすべてをしのぎ、魔王の僕と聖女の君が、しんに結ばれる時がきた!」

「おぞましいほどの『聖なる力』を宿す聖女は、魔王には嫁げないさだめなの……消して……私の胸の中が、おかしくなる前に……エリオット、ここは、あなたとの婚礼のを執り行う場ではないの。ここは、聖女の私の存在が、うつつから消える場として描かれている。華美なまとわず、豪奢な装飾品もにつけず……存在自体が葬られる事を望んでいるだけ。エリオット、お願い。私を消してしまって……」

「魔書を使って、アリスがどのような婚礼衣裳を描き出すのか楽しみにしていたが、まさか二人とも、一糸纏いっしまとわぬ姿で祝儀しゅうぎに臨みたいと願ってくれているとは思わなかったよ。
 いつか僕と夫婦めおとになる日がくればと願った故と伝えながら、婚礼衣裳の本を読んでみた話をしてくれたじゃないか。ああ……ウェディングベールが、悪魔除けのがあるといういわれがあったから? 魔王の花嫁になるのに、そのような故由ゆえよしがあるのはいけないと考えてしまったのか。そうか……だが、思い出してほしい。土地の風土ふうどによっては、生涯を一度捨て、愛する相手に嫁ぐ事で生まれ変わりの時を迎えるあかしとしてウェディングベールを用意すると、アリスは教えてくれただろ」

「魔王を愛してしまった私が、これ以上、罪を犯さないように、消してしまって……幽魂ゆうこんすらも刑を受けるべきごうが深い聖女に、罰を与えて」

「人間どもの聖女は、天命を終え泉下せんかめいした。そうして輿入れをに、比翼連理ひよくれんりつがいになればよいんだ。鴛鴦えんおうちぎり浅からぬ間柄あいだがらになろう。
 婚礼になど必要ないという君の想い、僕は受け入れているよ!
 着映えする衣裳でなりを整えずとも、魔の者として新生しんせいしたあかしである黒翼こくよくで、綺羅きらを飾ってくれているのだから。
 僕と共に生きる為、内をめぐる『魔の力』に応じ、人の生命せいを捨てる決意をしてくれた。萌芽ほうがやがて穂孕ほばらみの時期を迎えるように、君の背が、魔を懐胎かいたいし膨らむさまは、実に美しかった! 人間どもの聖女という偽りの誕生ではなく、魔王の花嫁としてしん呱々ここの声をあげる事ができたんだよ! 虚誕妄説きょたんもうせつのみで組み立てられたうつつは崩壊し、ついに符節ふせつを合わせられたんだ。こののちは、僕とのきずなだけをすべてとし、愛の力につつまれ、醇乎じゅんこたるアリスでいてくれ」

「やめて……む、胸をまないで……あは……胸の先を、さわらないで……消して……けして、おねがい……むねがおかしくなりそう……だめ、きっと……だめ……あっ! ああっ! 指でこするように、な、何度も、胸をでられたら……だめ……だめ……むねがおかしく……あ、あは……だめ……エリオットを、これいじょう、あいしては、だめ……」

「アリスの胸がなお膨らむよう、たっぷりといじってあげる。色に狂って、胸がおかしくなるのを躊躇ためらう必要はない。
 僕の可愛い花嫁、刺激を与えられあでやかさが増した肌、いつもより輝いて見えるよ。入り込む光を浴び、堂内の浮き彫り細工が存在を主張するかのように極言物申しているようだが、最もと言われるこくの芸術品よりも、うつつの前にある君のの方がうるわしい。
 つぼみをほころばせ、美々びびしく開いた黒翼こくよくを見せてくれ。魔界の女王の背は、絶佳ぜっかたたえられる風趣ふうしゅに富んだ情景よりも、美観を呈している! 翼ある背をでられる事、魔の者として生まれ変わった故と悦んでほしい」

「ああ……は……うなじから、指をおろさないで……私の悪そのもの、翼がある背に、指をおろさないで……やめて……エリオット、私の心まで魔の者にしないで……胸が、おかしくなってしまったら、取り返しがつか……は……あ……あは……ああんっ! つ、つばさ……翼が感じているの……? あは、あは……背中の感じ方が、いつもと、ちがう……あはは」

「魔界の女王の輿入れ飾りのいろどりとして、君の肌の色は相応しい。
 闇に染まるのを、悉皆しっかい受け入れる為、素肌を婚礼のとしてくれたアリスを妃に迎えられて嬉しい限りだ。魔界のれいにかなったを執り行おう。
 君の腕を魔法の糸で縛り、吊ったのは、魔族の夫として、道義にもとる行為はいけないと考えた故。永遠の愛を誓う必要があるだろ。魔王であろうとも、花嫁の前でひざまずくつもりだ。折りかがみのを示したい。我が花嫁になってもらったのちは、呻吟しんぎんさせない。アリスは、無為むいのまま、夫の僕が与える快楽に溺れるだけでいいんだ。
 その黒翼こくよくを強く抱くように、背から手を伸ばし、胸や陰部をいじってあげる」

「あ、あ、あ……ああ、やめ……あは……エリオット、胸、まないで……あは、あ……い、いんかく……あ、あは……エリオット、手が、陰核いんかくに触れている……や、やめて……あは、やめて、私の胸の中をおかしくしないで……このままだと……あっ! う、うなじ、めないで……ああっ! あは、あは……胸の先を、刺激しないで! ひ! し、尻尾しっぽ……尻尾しっぽで、陰核いんかくを刺激している……? あ、あは、あはは……こ、腰をでないで……はあ、はあ……つ、翼の根に、エリオットの肌があたると、おかし……く……あは、あは!」

「アリスは、魔王の花嫁に迎えられ、幸せで満たされる。胸の内がおかしくなっているとしたら、それは、忘我ぼうがの果てに浮き立ち、欣快きんかいの至りを感じ、心の弾みが止められないほど気持ちが華やいでしまったからではないかな。
 何もかもが君に押しつけられる、生き地獄をいられていた、人間どもの聖女であった悲しみの日々は終わりを告げたんだ。えつだけが降り注ぐ理想郷で、僕と起居ききょを共にしよう。アリス、尻尾しっぽで裂け目を刺激してあげるから、しっかりと乱れて」
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