魔王にさらわれた聖女の君は、僕の言葉で堕とされ『花嫁』となる

K.A.

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Act 12

Ritual

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「い……やぁ……尻尾しっぽを入れないで……あは、あは……ち、ちがう……違うの……はあ、あは……いやぁ……このままだと……あ、あ、あ……い、いや……し、尻尾しっぽを……奥に入れようとしないで……いや……いや……」

「頬を赤くし、熱い息を吐き、顔をなまめかしく歪めて――嫌がっているようには見えないな。
 ははっ!
 まぶたを閉じて、目に何も入れないようにしても無駄だよ! ふふ。背の向こうの事を教えてあげる。祭壇の上に、偽りの神さまはいない。悪魔がいるんだ。
 雨樋あまどいやくの悪魔は、翼を閉じているが、僕らの婚礼を見守るつとめを果たすぞうは違うんだね。
 魔界の空には、泥土でいど暗色あんしょくでくすんだ朧雲おぼろぐもが、禍々まがまがしいさまで漂っている。大地を陰でおおう為だ。悪魔のぞうは、その空に相応しい闇色の翼を大きく開いている。颯々さっさつと響きを立て、君臨する者になるだろう。これは、君自身を表現しているのではないか?
 僕は、君のうるわしい黒と一つになりたい。魔王エリオット・ジールゲンがまとうべきしん烏夜うやは、花嫁のそのもの。されば、僕もなど必要ない。アリスが選んでくれた、あるべき姿で婚礼のに臨みたい」

「もう、やめて……あ、あ……い、糸が、胸に巻きついて……ひぁ……ゆ、ゆっくり、胸を刺激しないで……あは……糸なのに、どうして、こんなにやわらかい……あは、あは……糸に巻かれているのに、まれているような感覚が……はあ、はあ……あは、私の胸の中……これ以上、だめ……ひぁ! エ、エリオット……どこをめて……あはは」

「……翼の根をめられるのは、気持ちいい? 人のだった頃、背をめてやると嬉しそうな様子を見せてくれる事はあったが、今の反応は明らかに違う。極致に達するほどの快感が襲ってきたんだろ? 人ならざる者になった故の甘美を堪能してほしい」

「あ、あ、あ……翼をめないで……あは……やめて、私の罪の権化ごんげに等しい、その黒い翼を、刺激しないで……あ、あっ! くんっ! くんっ! し、尻尾しっぽを、裂け目に押し込まないで……あはは……こ、腰をでないで……すごく、変な気持ちに……はあ、あは……」

「この婚礼のにより僕の妃となり、アリスは、魔族の王侯になる。
 人間どもは、絶大な『聖なる力』を宿す君をあがめていたが、それは、無根むこん風説ふうせつも同然。利用価値が高い、便益べんえきな持ちごまを飾り箱に閉じ込めていただけ。掌中しょうちゅうたまではなかった。しかし、魔王をもし、縁付えんづく事になった君は、まさに生まれながらに統べる力を宿す天子てんしであった! 光も闇も、聖も魔も、あまねくをろしめす女王となるさだめだったんだ。さあ、覇者としての威容いようを誇るように、背の黒翼こくよくを揺らしてくれ。その羽ばたきから生じた魔風で、わずらわしさしかない人間どもの俗界ぞっかい滅尽めつじんに至らせてしまうといい!」

「……私は、を唱えるあかしふだを持っていない。人間の世界に戻る門札もんさつも持っていない。そして、エリオットと愛のふみを通わす為に書札しょさつに向かって筆をとった記憶も持っていてはいけない。
 魔王にあだなす『聖なる力』を宿して生まれたのに、人の聖女として果てる事を唯一とできず、欲深く、エリオットを愛してしまった。滅尽めつじんに至るべきは、貪婪たんらんな私よ……消して……このままでは、きっと、胸が裂けてしまうから……早く。エリオット、お願い」

「アリス、胸が裂けると思うほど、慶祝けいしゅくの日を迎えられた事が嬉しいのかい? 落ち着いてくれ。大きな変化に際し、考えが偏狭へんきょうになってしまっているだけだよ。案じず、僕に注がれた『魔の力』に従ってしまえばいい。大丈夫。本質的な変化に至ろうとする君の想いに応じ、生命せいとしての構造のすべてが魔へと転じ……ああ。の奥より流れてきて止まらぬ強大な力に、畏怖いふの念をいだいてしまったのではないか? 怯えているというのなら、顔をほころばせてやりたい。翼をもてあそんでやれなくなるが、君の前に回るね。悦んでいる表情をたくさん見せてほしい」

「お願い。黒い翼を背に負い、魔の者になり果てようとしている私を、あなたの前から消して……魔王であるあなたの目の前から消してしまって……あ! あ、あ、あうっ! や、やめて……胸を、まないで……やめて……あはっ! し、下……あ、あ、あ……ゆ、ゆっくり、指を動かさないで……い、陰核いんかくいじらないで……あ……あ……」

「下、もっとさわってほしいの? ねっとりと僕の指に絡んできてくれて嬉しいな。
 そうだっ!
 絡むと言えば、君の腕の自由を奪っている糸は、魔界蜘蛛の糸張りを思い浮かべながらじゅつを使ってみたんだ。蜘蛛は、道行くしるべとして糸を引いて歩くという。それは、危難きなんが生じた際にを護るすべの一つ。君に迫るがいがあったとしても、繋がっていれば、すぐに僕の庇護下にたぐり寄せてやれる。大慶至極の日だからこそ、げんかつぐようなおもむきはいくつあってもよいはず。
 ふふふ。
 もちろん、魔界の賀儀がぎに相応しいものでなくてはならない。花嫁のすべてが魔王のものになるを表す為、罠にかかった獲物として、アリスを喰ってしまうのも一興いっきょうかな?
 四方八方へ伸びず、ひとすじふたすじであるが、僕の魔力で作られた糸は、決して君のをはなす事はない」

「あ、足に糸が巻きついて……ひっ! ひ、開かないで……糸で引っ張って、足を開かない……で……え……ひぁ……や、やめて……よ、横から、舌を伸ばして……おしり、めないで……あはぁ……腰やおなかに、舌をあてないで……足が開いたままなのに……そんなところを、められたら……あは、あは」

「……ああ。しずくを垂らしてくれたね。嬉しいな。実に、愛らしい。
 糸と糸を交わらせて、円を描くように編んだ網で絡め取ったのちに獲物を狩るさま、魔のたわむれとして感興かんきょうをそそるが、すじ網にかかったアリスを引き寄せるように僕のもとに招くのも、情交じょうこうを結ぶ前に接するあり方として面白いと思わないか?
 足腰や翼を揺らし、こうする可愛らしい仕草しぐさを見せている君のに、少しずつ糸を巻きつけていく。魔糸の白にいろどられながら吊られ、動けぬ捧げものになり果てた君を、優しく抱きしめてあげる。
 触れられるたび、なまめかしく顔を歪めるさまを見せ、婀娜あだなる大きな声を響かせ、魔王の目や耳の放楽ほうらくになるんだ。それは、糸にくるまれていく道すがらも同じ。ほら、胸の下を糸で巻かれてしまうといい。膨らみのいただきにある美しいべにを、僕の唇に預けて――」

「ああっ! む、胸の先……や、やめて、胸の先をくわえて、し、舌をあてないで……く、唇の奥に含んで、胸の先をめないで……ひぃ……も、ももに糸が……糸が、うように、あがってきて……足に絡みついて……あ……む、胸、糸が食い込んで……あ……胸、くわえたまま、は、激しく吸わないで……心が、これ以上、おかしくなったら……私は……あは、あは」

「……苦役くえきを課せられ、生命せい必滅ひつめつをもたらすという禁断の果実。今、僕が口に含んでいたのがそれだとしても、損なうものなど何もない。このように色を感じる深い味わいを得て、快楽に耽溺たんできせぬというのなら、その方が我が花嫁に対し不徳と言えよう。
 ああ。
 人間どもの神話に出てくるり木の果実の話を、君がしてくれた時の事を思い出したんだ。嫁いでもらったのちも、何も知らぬ俗人として過ごした記憶は、二人の大切なものとして残していこうと考えているので安心してほしい。魔界に愛のそのを築き、僕と君の為の理想郷を形にしていこう。
 花嫁、もう一度、胸の先を僕の口の中へ――美酒佳肴びしゅかこう並ぶ、絢爛けんらんたる婚儀のたくは、その膨らみ……」

「く……くぁああ……胸の先、くわえたまま……な、めないで……あは……胸の先を、優しく、唇で噛まないで……くぁあ……い、糸が、腰に巻きついてきて……ああ、腰を刺激しないで……あは……こ、腰の下……両手で、おしりをでないで……あ、あ、あ……あ……し、尻尾しっぽで、い、陰核いんかくいじらない……で……こ、これ以上、うつつに想いを残したくない……はあ、はあ……『聖なる力』と『魔の力』が重なったら……すべてが……すべてが、おかしくなるかもしれない……はあ、はあ……だから……あ、あ、あ、ああっ! し、尻尾しっぽが、裂け目のなか……に……あ、あ、あ、あ!」
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