天道虫

朝日と雨降り

　
　私は天道虫、小さな畑の

すみっこで暮らしている。

お日様が大好きだ。

雨降りの日は苦手。

今日は雨降り

羽を広げて、いつでも

空を飛びたい。

なかなか気分も上がらない。

やりたいこと、願望は

たくさんある。

ほんの小さなことから

大きなことまで。

たくさんある。

なかなか、日常から脱出できない。

普段とちがうことをするのは

ちからをつかう。

体力、気力、勇気がいる。

「勇気」

ほんのささいな勇気をふり絞っても

失敗するときもある。

そんなときは、後悔してしまう。

でも、友達といっぱいいっぱい

お話をして、好きな、たべものを食べると

忘れることもある。

本当にほんとうにちっぽけで、ささいな悩みでも

心に残って痛むときもある。

痛み止めも効かない。

そんなときは、じかんくすり。

時間が経つと自然とだんだん

うすれていくときがある。

うすれて、またちがうことが起きる。

そのうちに、そっちに気がとられる。

どんどん次々にものごとが起きる。

そうしてくれると、忘れられたり

ありがたいときもある。

疲れてしまうときもある。

それでもなんとかやって

いきるしかない。

じかんくすりのいいところは

お金がかからない。飲み忘れもない。

不思議なものだ。

　ある日、天道虫は晴れた日に

飛び立った。

飛び出したのは良いけれど、

ぼんやりしていた。

そしたらつまずいた。

つまずいた先に違う星の天道虫がいた。

私にそっと手をさしのべてくれた。

つまずいたときに

一人でなくてよかったと思えた。

しかし、傷を負った。

傷は一か月くらい治らなかった。

つまずいて分かったこともある。

転んでも立ち上がるそれからが本番である。

私は父に七転八倒でがんばれと言われた。

それを言うなら、七転び八起きでしょうと母言った。

くだらない父ときまじめな母。

母は自分が愛した者と結ばれなかった。できなかった。

自分と性格の違う父をよかれと思い結婚した。

価値観やものの考えが違うことは社会ではよくある。

それでも一緒に同じ空間で生活していくには

疲れてしまうのであるとわかった。

父と母の結婚は苦しさと鈍感さが入り混じっている。

それでも、まぎれもなく

父と母が産んだ私は天道虫だ。