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しおりを挟む「珍しく、可愛い貴族のお嬢さんがいる……」
「本当だ。可愛いー」
オフホワイトの薄い布地のデイドレスを着た、淡い金髪の可愛いらしい女の子が、ララとパウラが立っているカウンターの方へやってくる。
「あの、ララ・ミラーさんという方は、いらっしゃる?」
「あ、私です」
「……あなた? あら、なんだかイメージと違うわ。もっと、色っぽいお姉様だと思ってたのに。可愛いらしい方!」
大変可愛らしい方から、「可愛らしい」を頂きました。
「私、アナマリア・オズボーンと言います。おじ様……騎士団で隊長をされているんだけれど、おじ様の紹介で、お見合いをする予定なの。でも、おじ様がお仕事で、しばらく王都にいらっしゃらなくて、お見合い相手の方とお会いできてないのよ。それでね、そのお見合い相手の方に、恋人がいるという噂を聞いたの」
噂……噂ってすごいな。一番届いて欲しくないところにまで、ちゃんと届いてしまっている。
「その、恋人の方と、王宮の中庭で逢引されてたって。小説みたいじゃない? 抱き合ってたそうなのよ。貴族の女との結婚で、引き裂かれる二人! 素敵!! 私、興味があって、どうしてもお会いしてみたくて」
なんか、話の方向が思ってたのと違ったけど、これは、修羅場?! なのか?!
「あ、あの……すみません、私、恋人でもなんでもなくて」
「ララ、ここで話すのもなんだし、その噂の中庭とやらに連れて行って差し上げたら? ちゃんと話をしてきなさいよ」
パウラに面倒くさそうに言われてしまう。
「……分かった。じゃあ、先に休憩入らせて頂きまーす……」
「ごめんなさいね。お仕事中にお邪魔してしまって。でも、お見合い相手の方には中々お会いできないし、小説みたいな噂だけ聞いてしまって、いてもたってもいられなくて。私、恋愛小説が大好きなの。ほら、私なんか男性と二人で会うことすらできないでしょう? もう妄想を膨らませるしか、満たされる術がないのよ。おじ様は、お喋りな私にピッタリのお相手がいるって、紹介して下さる事になったのだけれど、レオン様ってどんな方なのかしら?」
流れる様に話されて、突然、話を振られた。
「そ、そうですね。声が素敵な方だと思います。真面目で……とても優しい方です」
「声が素敵なのね! お会いするのが、ますます楽しみになったわ。ララさんは、レオン様の恋人なの?」
突然ぶっ込んできた。よ、読めない。このお嬢様、全然読めない。
「ち、違います! オニールさんが、お見合いされる方と、楽しくお話する自信がないと、図書館に会話をするための本を借りに来られたんです」
「まあ! 本で……確かに真面目な方ね」
「はい、そうなんです。それで、ちょうど良さそうな本が見つからず、実践に勝るものはないと、私と会話の練習をすることになったんです」
「まあ、そうだったのね……。抱き合っていたというのは?」
直球だな!
「それは……オニールさんと、会話の練習をしていた時に、私が体調を崩してしまって、オニールさんが医務室まで運んで下さったんです。その時のことが、そんな風に噂になってしまって」
「そうだったのね……、それで、ララさんは、レオン様のことがお好きなのかしら?」
「っ、いえ……あ、人として素晴らしい方だと思いますし、尊敬しています」
「そう」
アナマリアが、少しつまらなさそうに言う。
「……私とレオン様は、合うと思う?」
「そうですね……オズボーン様は、明るくてお話上手な方だとお見受けしますし、オニールさんは、沢山お話はされませんが、優しく聞いて下さる方です。私は……、とてもお似合いだと思います」
「そうなの。おじ様も、そんな風に仰るのよね……私はね、お互いに愛を持った結婚がしたいと思っているの。だから、もし、レオン様に他に愛する方がいらっしゃったら、お断りしようかと思っていたんだけれど……レオン様の気持ちは、お聞きしてみないと分からないものね。お会いしてみないと、私だって好きになれるか分からないし」
少し心配そうな声で、アナマリアが話す。
貴族女性の人生は、相手で決まると言っても過言ではない。それは心配だろう、自分が結婚するかもしれない相手に、恋人がいると聞いたら。
「オズボーン様、安心して下さい。オニールさんは、浮気は絶対にしないと思います」
「そうなの?」
「はい。とても誠実な方ですよ」
「……想像だけれど、私、ちょっと強引な方が好みなのよね。レオン様って強引?」
「強引、ではないかも、しれません。多分……」
レオンさんは、私が嫌がっていないか気遣いながら、とても優しく触れてくれた。うさぎを撫でる様にだったかもしれないけれど……。この人には、どんな風に触れるんだろうか。
「そう……まあ、いいわ。私、一人でララさんに会いたいからって、従者を置いてきてしまったのよね。きっと心配してるわ。お会いできて良かった。では失礼しますね」
ふわりとドレスの裾が風に揺れる。にっこりと微笑んで、アナマリアは去って行った。
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