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しおりを挟む「そういえば、ララ、今度は金髪イケメンの騎士様とつき合ってるの?」
「えぇぇ、すごい。もう、そんな風に噂になってるの?」
「まあねー、お相手探しは死活問題だからね。情報共有は大事だもの。王宮で働く女子達の婚活ネットワークを舐めちゃだめよ?」
「な、なるほど……」
ララは、恋愛はもう懲り懲りだと思ってからは、一人で生きていける様にということばかりを考えていた。誰かの恋愛事情について、周りの子が楽しそうに話していても、羨ましいという気持ちはあったが、自分には関係のないことだと思っていた。
「ララさん、オニールさんが、また来られてますよー」
パウラと帰る支度をしていると、カウンターの方から、声をかけられる。
「あ、黒髪イケボの騎士様の方だ」
「っ、ついに、姿を現した!?」
「?」
ダニエルの来ない日、それとなくレオンがいないかと周りを見たけれど、姿を見つけられなかった。いないなら、その方が良いと思っていたけれど、レオンの姿を見られないのを、少し残念に感じている自分がいて、何をしてるんだと一人でつっこんでいた。急いで帰る支度をして、玄関に向かう。
「レオンさん!」
「ララさん」
少し緊張した声で名前を呼ばれる。
「お久しぶりです。どうされましたか?」
ダニエルには、レオンがこっそりララを送っていると、ララにそれがバレてしまったことは秘密にして欲しいと頼まれている。一応、知らないフリをする。
「……ララさん、あの、」
「はい」
「……………………」
レオンが、開いた口をまた閉じて、黙ってしまう。
顔が強張って、真顔になっている。
「レオンさん?」
レオンが、は、と息を吐き、口を開く。
「あの、ダニエルから聞きました。ララさんに、私が勝手なことをしていたのを、知られてしまったと……」
「ふぁ、ダニエルさん、もうバレてる! あの人、本当に嘘がつけない人なんですね」
「…………ダニエルと……、いえ、あの、すみません。ララさんに、はっきりと断られたのに、勝手なことをしてしまって」
「い、いえ! こちらこそ、ご心配をおかけしてしまって、申し訳なかったです」
「いや、あの……」
「?」
いつも、言葉数は多くはないけれど、分かりやすく淡々と話すレオンが、珍しく歯切れが悪い。
「ダニエルと、一緒に帰っていると」
「あ、はい、レオンさんが、ダニエルさんにお願いして下さったんですよね? 始めはお断りしたんですけど、なんかうまく言いくるめられて?しまって、送って頂いています」
ララと噂になってしまって、ダニエルに恋人がいたら大変だということに、話しながらララは気づく。
「……あの、ダニエルさんに、恋人や結婚される予定の方はいらっしゃいますか?」
「いえ、いなかったと思いますが……」
「そうなんですね。それなら、良かった」
だったら多少、噂になっても問題ないのかな……。いや、ダニエルが恋人募集中なら、邪魔をしてしまっていることになる。
「……ララさん」
「はい」
やっぱり顔が怖いままだ。どうしたんだろう?
「……いえ、あの、今日は私が送らせてもらっても、良いでしょうか……?」
「えっ、あ」
――そうか、もう私にはバレてるし、隠れる必要が無いってことか。
これだけ心配してもらって、何度も断るのは心苦しいけれど、ダニエルとも簡単に噂になってしまったし、レオンと帰るのはやはりまずい気がする。
「……あの、レオンさん、やっぱり結構です。以前もお話したんですが、その、私といたことが噂になったらいけないので。でも、心配して下さって、ありがとうございます」
「…………噂? ああ、ララさんが、私のことを心配して下さってたことですね。そうか、それで……」
「はい。あの、ダニエルさんにも、送って頂くのは、もう結構ですと言って頂けますか? あ、またお礼は直接言いたいですけど……」
「……分かりました……ダニエルに、礼を言う必要はありません。私が、勝手なことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「レオンさん、もう謝らないで下さい! 心配をおかけした、私が悪いんですから……それに、アンソニーとは、初めてちゃんと話をできた気がするんです。もし、また来られても普通に話せる。そんな気がしています。それだって、レオンさんのおかげなんですから」
そう笑って言うと、なぜか、レオンの表情が険しくなった気がした。
「……そうですか……分かりました。じゃあ、もう行きますね。お引き止めして申し訳ありませんでした」
「いえっ、ありがとうございました!」
慌てて頭を下げる。
「失礼します」
硬い表情のまま、レオンは会釈し去って行った。
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