善悪を超えて行く者

結論を出さない

何かを選んでしまうとそれに伴う拘束が始まり、自由は消える。後に残るのは、”自由な選択”をした責任だけだ。
選択をする直前が、最も自由な状態である。そういう意味では、非常に儚く、刹那である。
しかし、マインドは考えて結論を出すのが仕事だから、いつまでも宙ぶらりんでいるのは耐えられない。

それを見直す。
結論を急がない。
マインドは常に何かの答えを探している。そのために、とにかく急いで結論を出す。軽率さが誰にでもあるのは、その性質のためだ。
必要ないことを思い悩まないようにする技術である二重労力演算、疑節労は、具体的にいえば、あえて結論を出さない、粘る、ということである。

もちろん、すべてのことにおいて結論を保留しろというのではない。それでは０／１００だ。そうではなくて、結論を出すべき事と急がなくていい事をきちんと区別するべきだ、といいたいのだ。
つまりはそれが労力演算であり、考えを捨てるという概念に繋がる。捨て方が分からない案件なら、結論を出さないことにすれば良い。結果的には同じ事をやっているのだ。
しかし、日常の全部にその気配りをするのは無理である。集中力がもたない。そこで、重要なポイントを挙げる。
もし誰かが、「あなたはこれこれのタイプの人間で、このようなパターンで行動し、何々に弱いのです」と決めつけてきたら、どう思うだろうか。
おそらく、かなり腹立たしいに違いない。ちょっと見ただけで人の内側などわかるはずもないのに、と。
人の評価というものは、簡単に結論が出せるものではない。だがマインドは、とにかく対応を速くしたいので、他人に対しても適当に結論をつけ、思考を進めようとする。
そこに注目し、人への評価は結論を保留するようにする。「もし気を悪くしたらどうしよう」というような仮定もしない。（仮定も決定もこの場合は同義である。）
この方法の良いところは、一度決めてしまったものにでも、取り消しをして結論未定に戻すことができる点だ。
実際、我々は多くの見知らぬ人を、適当に判断している。特に芸能人に対しては、メディアの寄越す情報を取得分別するだけで、よく知った気になっていることが多い。
人とのコミュニケーションが生活に欠かせない以上、それがどんな人かを見極めることは重要である。しかし、自分の中に余計な欲がないのであれば、コミュニケーションは必要量だけでよいと分かる。だから、他人の評価も急がなくて良い。結論を出さなくて良い。
それに、今までは勝手にそう思っていたけど、その結論を取り下げることによって、人に対するイライラやビクビクをなくすことができる。
ちょっとやってみると、いかに多くの人を、適当な決め付けで見ていたかわかるはずだ。
疑節労の意味から考えると、それは全く無駄だったと思えてくるだろう。
人間誰でも、自分自身への評価は結論を出していないものだ。だから他の人も、自分の評価は決まっていないのだ。こうなりたいという意欲はあるが、それは逆にいえば、まだその状態ではないことをさしている。
人のことを決めつけてはいけない、とは小学校でも教わるテンプレートだが、結論を出さなくて良いと言っているのだろう。しかしマインドは結論を求めてしまうので、それが身に付く前に流れてしまうのだ。