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第四章 獄門島事件
閑話 災厄の魔女
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「サンダーボルト!」
リサがそう唱えると、彼女の右掌から激しい蒼き閃光が渦巻き轟音とともに政府軍へと放たれていく。
「ジョー! 今のうちにここから逃げましょう」
リサはそう言うとオレの手を引いてビルの物陰に駆けていった。
オレの名は『ジャンキー・ジョー』18才。もちろん本名ではない。『魔法の種』の『ホムラ』を発芽させた火炎使い。そして、彼女は『リサ・ミタムラ』。本名かどうかはわからない。わからないといえばもう一つ。彼女は雷魔法以外も使う魔法使い。『魔法の種』は一人に一つしか発芽しないため彼女は『魔法の種』の能力者ではないのだろう。女の歳はよく分からないが多分30才くらいなのかもしれない。黒髪に黒い瞳。典型的な日本人だ。ただ、左目は縦に傷が貫く、いわゆる隻眼だ。オレたちは政府軍に抵抗するレジスタンスのメンバー。ここはニュートーキョーという街で、かつて新宿と呼ばれていた場所らしい。
『魔法の種』がこの国に蔓延してから30年が経つ。そして、この国の魔法少女が全滅した『獄門島事件』から12年が経過している。かつての日本政府はその時に崩壊したらしい。現在は『システム』という政府が日本各地を群雄割拠で統治している。オレたちレジスタンスは『システム』の統治に抵抗するために集まった『魔法の種』の能力者集団。『魔法の種』自体、『システム』が生み出したモノなのに皮肉なものだ。
「そういえば、君はなんで『魔法の種』なんかに手を出したんだ?」
リサが焚き火の向こうからオレに訊いてくる。
「ああ、オレ昔クスリやってたんですよ。たまたまクスリの中に『魔法の種』が混ざっていて⋯⋯。そんな感じです」
「クスリは今も?」
リサの言葉にオレは首を横に振る。
「無害なのかはわからないんですが効かなくなるんですよ。幻覚症状もないし⋯⋯。魔法自体が幻覚みたいな⋯⋯。すいません。調子に乗って。姐さんは?」
「姐さんはやめろ。私は⋯⋯。魔法少女の生き残りだ。それだけだ」
魔法少女の生き残り⋯⋯。
やっぱりいたんだ。
魔法少女!
「『魔法の種』には気をつけろ。って言っても発芽してんじゃ気をつけるも何もないか。『魔法の種』は暴走する。覚悟だけはしておけ」
「どう暴走するんですが?」
「おそらくジョーの場合は⋯⋯。お前の身体を焼き尽くす」
「『ホムラ』だけにね。防ぐ方法はないんですか?」
「あるにはあるが⋯⋯。やめておこう。期待させてもかわいそうだ」
「期待しないですよ。あるんなら教えてくださいよ。覚悟はしますから」
「ある魔法少女の復活。彼女ならあるいは⋯⋯」
そう言ってリサは眠りについた。
ある日のこと。リサを訪ねる見知らぬ女。年齢からしてリサと同じくらい。
ひょっとして魔法少女!
「こんにちは。魔法少女さん」
彼女がそう言うと身構えるリサ。
どうやら魔法少女ではないらしい。
「私はミホ。あなたに伝言があって来ただけよ。あまり警戒しないで」
ミホは古ぼけたポータブルゲーム機を大事そうに持ちながらリサにそう言った。
「伝言? 誰から?」
リサがそう言うと、ミホはそのゲーム機を指差す。
「システム0007。コードネーム『ナナ』。伝言というより遺言かも」
「お前、政府の犬か!」
ミホの言葉にリサは右掌に力を込める。
「『赤い月満ちるとき我復活せん』。ただ、それだけよ。伝えたわよ。私の大事な人の命運もかかってるの。しっかりやってね」
ミホはそう言って帰って行った。
どうやら政府の関係者ではなかったらしい。
このところ、オレはミホという女の言葉が気になっている。リサには気にするなと言われているが、どうにも気になる。そう、月がだんだん赤みがかってるんだ。それに明らかに日々大きくなっている。一週間以上ずっとだ。赤い満月が地上に落ちてきそうな勢いだ。
「ジョー、ここは引き払う。本部からの情報では政府軍の援軍がニュートーキョーに進軍しているらしい」
偵察から帰ってきたリサがオレに早口で言ってきた。相当切羽詰まった状況のようだ。
オレは素早く移動の準備をすますとリサが告げる。
「今回は守りきれないかもしれない。ダメだと思ったら後ろを振り向かず全力で逃げろ。私が引きつける」
「政府軍ってそんなに⋯⋯」
「政府軍ではない」
リサはそう言って人差し指を上に向ける。
「おそらくあれば私の仇敵だ。ジョーには関係ない」
リサはそう言ってアジトから出ていった。
リサの仇敵って?
オレもリサに続いてアジトを出る。
月が、赤い満月が今にも地上に落ちそうだ!
「ジョー! さっさとにげろ。政府軍はそこまで来ている」
リサの言葉に我にかえり、前方を見据える。政府軍の魔法使いが100人以上こちらに向かって行軍している。オレはリサに続いて逃げるために駆け出していく。
「ムーンライトフォール!」
低く重い声が辺り一面に響き渡る。
「ジョー!」
そう叫んでリサがオレを突き飛ばした瞬間、赤い満月が凄まじい轟音とともに地上に落ちてきた。気付くと辺り一面は焼け野原となっていた。政府軍などみんな消え去っていた。
「ラアアアアアアニャ!」
リサの雄叫びに気付き上空を見ると、下弦の月を背に白銀の長い髪をなびかせた赤い瞳の妖艶な魔女が舞い降りてきた。
「あら、まだ無様にも生きていたの。魔法少女! お前などには用はない。裏切り者のカザミヤカオルはどこだ。妾を謀りおって!」
コイツがリサの仇敵?
リサがそう唱えると、彼女の右掌から激しい蒼き閃光が渦巻き轟音とともに政府軍へと放たれていく。
「ジョー! 今のうちにここから逃げましょう」
リサはそう言うとオレの手を引いてビルの物陰に駆けていった。
オレの名は『ジャンキー・ジョー』18才。もちろん本名ではない。『魔法の種』の『ホムラ』を発芽させた火炎使い。そして、彼女は『リサ・ミタムラ』。本名かどうかはわからない。わからないといえばもう一つ。彼女は雷魔法以外も使う魔法使い。『魔法の種』は一人に一つしか発芽しないため彼女は『魔法の種』の能力者ではないのだろう。女の歳はよく分からないが多分30才くらいなのかもしれない。黒髪に黒い瞳。典型的な日本人だ。ただ、左目は縦に傷が貫く、いわゆる隻眼だ。オレたちは政府軍に抵抗するレジスタンスのメンバー。ここはニュートーキョーという街で、かつて新宿と呼ばれていた場所らしい。
『魔法の種』がこの国に蔓延してから30年が経つ。そして、この国の魔法少女が全滅した『獄門島事件』から12年が経過している。かつての日本政府はその時に崩壊したらしい。現在は『システム』という政府が日本各地を群雄割拠で統治している。オレたちレジスタンスは『システム』の統治に抵抗するために集まった『魔法の種』の能力者集団。『魔法の種』自体、『システム』が生み出したモノなのに皮肉なものだ。
「そういえば、君はなんで『魔法の種』なんかに手を出したんだ?」
リサが焚き火の向こうからオレに訊いてくる。
「ああ、オレ昔クスリやってたんですよ。たまたまクスリの中に『魔法の種』が混ざっていて⋯⋯。そんな感じです」
「クスリは今も?」
リサの言葉にオレは首を横に振る。
「無害なのかはわからないんですが効かなくなるんですよ。幻覚症状もないし⋯⋯。魔法自体が幻覚みたいな⋯⋯。すいません。調子に乗って。姐さんは?」
「姐さんはやめろ。私は⋯⋯。魔法少女の生き残りだ。それだけだ」
魔法少女の生き残り⋯⋯。
やっぱりいたんだ。
魔法少女!
「『魔法の種』には気をつけろ。って言っても発芽してんじゃ気をつけるも何もないか。『魔法の種』は暴走する。覚悟だけはしておけ」
「どう暴走するんですが?」
「おそらくジョーの場合は⋯⋯。お前の身体を焼き尽くす」
「『ホムラ』だけにね。防ぐ方法はないんですか?」
「あるにはあるが⋯⋯。やめておこう。期待させてもかわいそうだ」
「期待しないですよ。あるんなら教えてくださいよ。覚悟はしますから」
「ある魔法少女の復活。彼女ならあるいは⋯⋯」
そう言ってリサは眠りについた。
ある日のこと。リサを訪ねる見知らぬ女。年齢からしてリサと同じくらい。
ひょっとして魔法少女!
「こんにちは。魔法少女さん」
彼女がそう言うと身構えるリサ。
どうやら魔法少女ではないらしい。
「私はミホ。あなたに伝言があって来ただけよ。あまり警戒しないで」
ミホは古ぼけたポータブルゲーム機を大事そうに持ちながらリサにそう言った。
「伝言? 誰から?」
リサがそう言うと、ミホはそのゲーム機を指差す。
「システム0007。コードネーム『ナナ』。伝言というより遺言かも」
「お前、政府の犬か!」
ミホの言葉にリサは右掌に力を込める。
「『赤い月満ちるとき我復活せん』。ただ、それだけよ。伝えたわよ。私の大事な人の命運もかかってるの。しっかりやってね」
ミホはそう言って帰って行った。
どうやら政府の関係者ではなかったらしい。
このところ、オレはミホという女の言葉が気になっている。リサには気にするなと言われているが、どうにも気になる。そう、月がだんだん赤みがかってるんだ。それに明らかに日々大きくなっている。一週間以上ずっとだ。赤い満月が地上に落ちてきそうな勢いだ。
「ジョー、ここは引き払う。本部からの情報では政府軍の援軍がニュートーキョーに進軍しているらしい」
偵察から帰ってきたリサがオレに早口で言ってきた。相当切羽詰まった状況のようだ。
オレは素早く移動の準備をすますとリサが告げる。
「今回は守りきれないかもしれない。ダメだと思ったら後ろを振り向かず全力で逃げろ。私が引きつける」
「政府軍ってそんなに⋯⋯」
「政府軍ではない」
リサはそう言って人差し指を上に向ける。
「おそらくあれば私の仇敵だ。ジョーには関係ない」
リサはそう言ってアジトから出ていった。
リサの仇敵って?
オレもリサに続いてアジトを出る。
月が、赤い満月が今にも地上に落ちそうだ!
「ジョー! さっさとにげろ。政府軍はそこまで来ている」
リサの言葉に我にかえり、前方を見据える。政府軍の魔法使いが100人以上こちらに向かって行軍している。オレはリサに続いて逃げるために駆け出していく。
「ムーンライトフォール!」
低く重い声が辺り一面に響き渡る。
「ジョー!」
そう叫んでリサがオレを突き飛ばした瞬間、赤い満月が凄まじい轟音とともに地上に落ちてきた。気付くと辺り一面は焼け野原となっていた。政府軍などみんな消え去っていた。
「ラアアアアアアニャ!」
リサの雄叫びに気付き上空を見ると、下弦の月を背に白銀の長い髪をなびかせた赤い瞳の妖艶な魔女が舞い降りてきた。
「あら、まだ無様にも生きていたの。魔法少女! お前などには用はない。裏切り者のカザミヤカオルはどこだ。妾を謀りおって!」
コイツがリサの仇敵?
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