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第8章

331話

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「シャレ様、ご無事でしょうか?!」

 背中に大きな傷を覆い、立ち上がれないシャレにニネットは心配そうに声を掛ける。

 シャレの方は激痛の為、話せないのか、ただ肯く事しかできない様だ。

 そして、更に1人シャレの異変に気が付き、慌てて近付いて来る。

「シャレちゃん!?」

 トラクはシャレの傷の状態を確かめる。

「これは……酷い……」

 恐らく、シャレが受けた背中の傷は綺麗に治る事は無いだろう……

「よ、よくもシャレちゃんを……」

 普段温厚である、トラクは親の仇でも撃つかよの様にバンゴを睨み付ける。

 そんな、ニネットからもトラクからも睨み付けられたバンゴであるが、彼には効かない様だ……

「おー、その綺麗なエルフはシャレと言うのか──それに、シャレを傷付けたら、可愛いエルフが2人も釣れて俺ラッキー!」

 ヘラヘラと笑いながら、トラクとニネットをネットリした視線で見るバンゴ。

「トラクさん、シャレ様をお願いします」
「どうするつもり……?」
「私が、コイツの相手をします……なのでシャレ様と逃げて下さい……」

 ニネットの冷え切った視線を受けているバンゴは未だに笑っている。

「おーおー、次はアンタが俺の相手してくれんのか? ──まぁ、そこの2人を逃すつもりはねぇーぞ?」
「お前の相手は私だ」
「熱烈だねぇ……」

 バンゴの反応の一つ一つが間に触るのか、ニネットは剣に力を込めて走り出そうとする所でトラクに一度止められた。

「トラクさん、離してください!」
「ううん、ダメだよ──私もニネットさんの気持ちは分かるけど、1人では行かせられない」
「何故ですか?!」
「だって、シャレちゃんでさえ、簡単に倒しちゃう相手に一人で行かせられないよ──それに、シャレちゃんが話せる状況なら、逃げる事は絶対無いよ!」

 そう言うと、トラクは剣を引き抜き構える。

 しかし、誰がどう見てもトラクは構えからして初心者丸出しであり、協力する所かこれではニネットの邪魔にしかならない。

「トラクさん、申し訳無いですが貴方では足手纏いになるだけです──なのでやはりシャレ様と一緒に逃げて頂けないでしょうか?」
「あ、あはは──結構ハッキリ言うんだね……でも、それは無理だよ!」

 トラクは固い意志を示す。

「はぁ……どうなっても知りませんよ?」

 そんなトラクの様子を見てニネットはため息を吐きながら首を少し振る。

「分かりました──そこまで言うなら一緒に戦いましょう」

 その様子を見ていたバンゴは拍手スしながら微笑む。

「いやー、凄い良いものを見せて貰った──これが仲間を思う気持ちって奴だな?」

 バンゴはやろうと思えば一瞬でニネットを倒す事が出来ただろうが、何故かしなかった。

 そして、トラクはゆっくりとシャレを地面に横たわらす。

「シャレちゃん待っててね直ぐに安全な場所に移動して治療してあげるからね!」

 そして、ニネットの隣まて行き、剣を構えるとバンゴが確認する様に聴く。

「お──もう良いのか?」

 二人はバンゴの言葉に答えない。

 そして、まずはニネットが動き出す。

「お?! なかなか良い踏み込みじゃねぇーかよ」

 ニネットの鋭い踏み込みからの袈裟斬りを余裕を持って避ける。

 だが、ニネット自身、避けられるのは想定済みだった様で、素早く剣を返して二撃目を振る。

「おっと……やるじゃねぇーかよ──たが、まだ甘いな」

 そう言うと、バンゴは一振りだけ剣を上段から振り下ろす。

「──ッニネットさん!?」
「おっと!」

 ニネットのフォローに入る様にしてトラクが剣を出たら目に振る。

「はは、お嬢ちゃんは、もっと練習しないとな」

 すると、バンゴは一度トラクの攻撃を避けてから、素早く後ろに回り込む様にして、トラクを羽交い締めにした。

「──は、離してください!」
「うーん、やわらけぇ……」
「──ッ?!」

 一体、バンゴに何をされているのか、トラクは身体を強ばらせた……

「その汚い手をトラクから離せ!」

 すると、いつの間に起きていたのかシャレがバンゴの背後から大鎌を振るった。

「──アブね!」

 不意打ちを突いたシャレであったが、バンゴには当たらない……

「トラク、ニネット大丈夫か!?」

 バンゴから視線を逸らさず二人の無事を確かめるシャレ。

「だ、大丈夫。シャレちゃんありがとう」
「大丈夫です──シャレ様こそ、大丈夫でしょうか?」
「あぁ、なんとかな……」

 シャレは苦痛の表情を浮かべており、あまり大丈夫そうには見えない。

「おーおー、三人もの美女と踊れるなんて最高だな」

 バンゴは濁り切った視線を動かしシャレ達を順番に見ていく。

 その視線から逃げる様にシャレ達はバンゴに対して一斉に斬りかかるが、バンゴは全て避ける。

「こ、こいつ本当に人間族か……?」

 シャレの驚きも、尤もである──シャレ達三人を相手にして、尚バンゴの方には余裕があるが、シャレ達はいつ動けなくなる様な傷を付けられるか分からない。


「さぁーて、お前ら三人は気に入ったから俺の奴隷にしてやる──だが、俺は他にもやる事があってな、申し訳無いがそろそろ終わらせるぜ?」

 バンゴの両足が光り出す。

 そして、その光を見た三人は身構えるが……

「──ッオセェーよ」

 シャレ達の方に走り出したと思ったら、目の前でいきなり消えて、気が付いた時には後ろにおり、剣をシャレに向けて振り下ろしていた……
 

 
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