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第8章
333話
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「はぁはぁ……やっと、着いたぜ……」
キルは肩で息をしながら呟く。
距離にしたら、たった五十メートルを移動しただけである。
しかし、その間にキルは何本もの矢を身体に受けてしまっている。
矢が突き刺さっている箇所からは血が滴り落ちていて、とても痛々しい。
そして、キルは大きなハンマーをゴブリン達に向かって振り下ろす。
「皆さん、避けなさい!」
グダの言葉にゴブリン達は武器を投げ捨ててキルの攻撃を避けた。
そして、それをキッカケにゴブリン達の連携が崩れ、ドワーフ達が一気に距離を詰め寄る。
「おい、キル! お前、無茶しやがって!」
「はは、ワシが導か無いとお主らでは、いつまで経っても近付けないと思ってな!」
仲間が来た事を確認したキルは一旦ゴブリン達に攻撃するのを辞めて、少しだけ下がる。
「確か、グダとか言ったか? もう、逃げられないぞ?」
やっとの思いで距離を詰めたドワーフ達は、もう距離を開けられ無い様にと相手の攻撃範囲ギリギリの所まで近付きキルの指示を待つ。
「いやはや……貴方には驚きましたよ……まさか一人でこの状況を覆してしまうなんて……」
グダの言葉に少しだけ気分を良くするキル。
だが、グダは続けて口を開く。
「ですが距離を詰められた所で、私達からしたら、どうって事無いのですけどね?」
何やら、余裕の様な雰囲気を醸し出すグダにキルは眉を潜める。
「お前、何を言っている? たかがゴブリンが随分と強気だな?」
この世界でゴブリンは弱いと認知されている為、キルはグダの態度に疑問を感じている様だ。
「ふふふ、一体誰がゴブリンは弱いと決めたのです?」
「決めたも、何も、事実だろ──お前達ゴブリンは身体能力が高い訳でも無いしな」
キルの言葉にグダは首を振る……
「やれやれ……貴方達ドワーフは頭が硬いですね……そういう所は、あのオークとソックリですよ……」
「なんだと……? お前ら、まさか人間族の下に付いたからと言って、自分達まで強いとか勘違いしてないだろうな……?」
キルはグダを睨み付ける。
しかし、どんなに鋭い眼光で睨み付けられてもグダの表情や態度が変わる事は無かった……
「いえいえ、確かにラシェン王の下に付く事で、我々ゴブリン達は保護下になりました──しかし、仮に保護下では無い状態でも、貴方達ドワーフには負ける事はありませんね」
グダの言葉にキルだけでは無く他のドワーフ達も怒りを覚えた様だ。
「上等だ! クソ共が! おい、キル──コイツらやっちまうぞ!」
一人のドワーフが爆発する様に怒りをぶちまける。
そして、それが引き金になり次々とドワーフ達は声を荒らげて怒りを露わにする。
それはドワーフ代表のキルも同じ様だ。
「後悔するなよ……?」
「それは、こちらのセリフですね……」
一瞬の静寂が訪れる……
「──ッフン!」
最初に仕掛けたのはギルであった。
目の前のグダ目掛けて巨大なハンマーを振り下ろすが、グダは華麗に避ける。
そして、ギルの攻撃が第二幕の戦いの合図となる。
「ひ弱なゴブリン共が!」
ドワーフ達はそれぞれの武器を持ちゴブリン目掛けて攻撃を仕掛ける。
そして、ドワーフの誰もが接近戦であれば相手にならないだろう……と考えていた。
しかし、状況はその予想を大きく覆したのである。
「皆さん、一ノ陣!」
グダの言葉を聞き、直ぐにゴブリン全体が盾を前に構えた。
「──ッワシらドワーフの攻撃がそんなので防げるか!」
一斉にドワーフ達が武器を振り下ろす。
するとゴブリン達は素早く動き出した。
まず、ゴブリン達は集団から小集団に切り替わる様に五人程ずつで固まる。
そして、その五人がドワーフ一人の攻撃を防いだのだった。
「──なに?!」
一人のドワーフの攻撃を五人のゴブリンが防ぐ──そんな光景を誰もが想像していなかった様でドワーフ達に動揺が生まれる。
そして、ギルには10人のゴブリン達が集まり攻撃を防御していた。
「──お前……」
「ふふ、お分かり頂けましたかな?」
他のドワーフ同様ギルも驚いているが、ギルの場合は他の者達とは違う点で驚いている様だ。
「ここまで多い人数を一言だけで切り替えたのか……」
そう、ギルの言う通りゴブリン達がドワーフの攻撃を防ぐ事は凄いが、何より凄い事は、グダの一言で、ここまで早く動けるゴブリン達である。
その事を、直ぐ様理解したギルは仲間達に向かって怒鳴る様に言葉を発した。
「お前ら! 一旦下がるぞ!!」
「ふふ、そうは行きませんよ……?」
先程と同じ笑顔のグダの筈だが、ギルからは、相当不気味な笑みに見える様だ。
「皆さん、チャンスです! ニノ陣で行きます!」
グダの言葉にゴブリン全体が一斉に盾から武器へと切り替える。
そして、同じ五人のまま次はドワーフ達に攻撃を仕掛けた。
「ぐはっ!」
「おい、ゴブリンに一人やられたぞ!?」
「クソッ! こっちもだ!」
グダの指示により次々と倒れていくドワーフ達……
そして、又もやゴブリン達のコンビネーションを見せつけられるギルであった。
まず、二人のゴブリン達が敢えて相手の攻撃範囲内にズカズカと踏み込む。
そんなゴブリン達を攻撃するドワーフであったが、更にもう二人のゴブリンがドワーフの足に向かって武器を振り下ろす。
「何、攻撃を誘われただと?!」
そして、両足を潰された為立ち上がれないドワーフに最後の五人目であるゴブリンが留めを刺した。
先程の防御も見事であったが、どうやら攻撃も見事の様だ。
次々と倒れて行く仲間達を見ながらギルは声を上げ続ける。
「逃げるんだ! 後ろに向かって逃げろ!!」
ギルは殿を務めるつもりなのか最後まで前線で大きなハンマーを振り回す。
これでは、どちらが弱者か分からない……
「ふふ、ギルさんはリーダーとして立派かもしれませんが、頭が悪いので向いてはなさそうですね」
明らかに挑発されているのは分かっているが、今はそれ所では無いギル。
「それでは、そろそろ貴方には退場して貰いましょうかね……」
グダが何やら合図を送ると、更にゴブリン達が集まって来る。
ギル以外のドワーフ達は敵であるゴブリンに背を向けて全力で逃げたお陰か半数以上はなんとか逃げ切れている。
しかし、もう半分は……
「では、皆さんお願いします」
グダの言葉で一斉に何十人もののゴブリン達がギルに向かって攻撃を始めるのであった……
キルは肩で息をしながら呟く。
距離にしたら、たった五十メートルを移動しただけである。
しかし、その間にキルは何本もの矢を身体に受けてしまっている。
矢が突き刺さっている箇所からは血が滴り落ちていて、とても痛々しい。
そして、キルは大きなハンマーをゴブリン達に向かって振り下ろす。
「皆さん、避けなさい!」
グダの言葉にゴブリン達は武器を投げ捨ててキルの攻撃を避けた。
そして、それをキッカケにゴブリン達の連携が崩れ、ドワーフ達が一気に距離を詰め寄る。
「おい、キル! お前、無茶しやがって!」
「はは、ワシが導か無いとお主らでは、いつまで経っても近付けないと思ってな!」
仲間が来た事を確認したキルは一旦ゴブリン達に攻撃するのを辞めて、少しだけ下がる。
「確か、グダとか言ったか? もう、逃げられないぞ?」
やっとの思いで距離を詰めたドワーフ達は、もう距離を開けられ無い様にと相手の攻撃範囲ギリギリの所まで近付きキルの指示を待つ。
「いやはや……貴方には驚きましたよ……まさか一人でこの状況を覆してしまうなんて……」
グダの言葉に少しだけ気分を良くするキル。
だが、グダは続けて口を開く。
「ですが距離を詰められた所で、私達からしたら、どうって事無いのですけどね?」
何やら、余裕の様な雰囲気を醸し出すグダにキルは眉を潜める。
「お前、何を言っている? たかがゴブリンが随分と強気だな?」
この世界でゴブリンは弱いと認知されている為、キルはグダの態度に疑問を感じている様だ。
「ふふふ、一体誰がゴブリンは弱いと決めたのです?」
「決めたも、何も、事実だろ──お前達ゴブリンは身体能力が高い訳でも無いしな」
キルの言葉にグダは首を振る……
「やれやれ……貴方達ドワーフは頭が硬いですね……そういう所は、あのオークとソックリですよ……」
「なんだと……? お前ら、まさか人間族の下に付いたからと言って、自分達まで強いとか勘違いしてないだろうな……?」
キルはグダを睨み付ける。
しかし、どんなに鋭い眼光で睨み付けられてもグダの表情や態度が変わる事は無かった……
「いえいえ、確かにラシェン王の下に付く事で、我々ゴブリン達は保護下になりました──しかし、仮に保護下では無い状態でも、貴方達ドワーフには負ける事はありませんね」
グダの言葉にキルだけでは無く他のドワーフ達も怒りを覚えた様だ。
「上等だ! クソ共が! おい、キル──コイツらやっちまうぞ!」
一人のドワーフが爆発する様に怒りをぶちまける。
そして、それが引き金になり次々とドワーフ達は声を荒らげて怒りを露わにする。
それはドワーフ代表のキルも同じ様だ。
「後悔するなよ……?」
「それは、こちらのセリフですね……」
一瞬の静寂が訪れる……
「──ッフン!」
最初に仕掛けたのはギルであった。
目の前のグダ目掛けて巨大なハンマーを振り下ろすが、グダは華麗に避ける。
そして、ギルの攻撃が第二幕の戦いの合図となる。
「ひ弱なゴブリン共が!」
ドワーフ達はそれぞれの武器を持ちゴブリン目掛けて攻撃を仕掛ける。
そして、ドワーフの誰もが接近戦であれば相手にならないだろう……と考えていた。
しかし、状況はその予想を大きく覆したのである。
「皆さん、一ノ陣!」
グダの言葉を聞き、直ぐにゴブリン全体が盾を前に構えた。
「──ッワシらドワーフの攻撃がそんなので防げるか!」
一斉にドワーフ達が武器を振り下ろす。
するとゴブリン達は素早く動き出した。
まず、ゴブリン達は集団から小集団に切り替わる様に五人程ずつで固まる。
そして、その五人がドワーフ一人の攻撃を防いだのだった。
「──なに?!」
一人のドワーフの攻撃を五人のゴブリンが防ぐ──そんな光景を誰もが想像していなかった様でドワーフ達に動揺が生まれる。
そして、ギルには10人のゴブリン達が集まり攻撃を防御していた。
「──お前……」
「ふふ、お分かり頂けましたかな?」
他のドワーフ同様ギルも驚いているが、ギルの場合は他の者達とは違う点で驚いている様だ。
「ここまで多い人数を一言だけで切り替えたのか……」
そう、ギルの言う通りゴブリン達がドワーフの攻撃を防ぐ事は凄いが、何より凄い事は、グダの一言で、ここまで早く動けるゴブリン達である。
その事を、直ぐ様理解したギルは仲間達に向かって怒鳴る様に言葉を発した。
「お前ら! 一旦下がるぞ!!」
「ふふ、そうは行きませんよ……?」
先程と同じ笑顔のグダの筈だが、ギルからは、相当不気味な笑みに見える様だ。
「皆さん、チャンスです! ニノ陣で行きます!」
グダの言葉にゴブリン全体が一斉に盾から武器へと切り替える。
そして、同じ五人のまま次はドワーフ達に攻撃を仕掛けた。
「ぐはっ!」
「おい、ゴブリンに一人やられたぞ!?」
「クソッ! こっちもだ!」
グダの指示により次々と倒れていくドワーフ達……
そして、又もやゴブリン達のコンビネーションを見せつけられるギルであった。
まず、二人のゴブリン達が敢えて相手の攻撃範囲内にズカズカと踏み込む。
そんなゴブリン達を攻撃するドワーフであったが、更にもう二人のゴブリンがドワーフの足に向かって武器を振り下ろす。
「何、攻撃を誘われただと?!」
そして、両足を潰された為立ち上がれないドワーフに最後の五人目であるゴブリンが留めを刺した。
先程の防御も見事であったが、どうやら攻撃も見事の様だ。
次々と倒れて行く仲間達を見ながらギルは声を上げ続ける。
「逃げるんだ! 後ろに向かって逃げろ!!」
ギルは殿を務めるつもりなのか最後まで前線で大きなハンマーを振り回す。
これでは、どちらが弱者か分からない……
「ふふ、ギルさんはリーダーとして立派かもしれませんが、頭が悪いので向いてはなさそうですね」
明らかに挑発されているのは分かっているが、今はそれ所では無いギル。
「それでは、そろそろ貴方には退場して貰いましょうかね……」
グダが何やら合図を送ると、更にゴブリン達が集まって来る。
ギル以外のドワーフ達は敵であるゴブリンに背を向けて全力で逃げたお陰か半数以上はなんとか逃げ切れている。
しかし、もう半分は……
「では、皆さんお願いします」
グダの言葉で一斉に何十人もののゴブリン達がギルに向かって攻撃を始めるのであった……
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