未完】風神アウィンの受難〜全属性神族の番になれる愛妻は女神らしい。いや、俺のだからな?〜

平川

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第一章 「番」と「想い」

15.ぶっ飛ばす!

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「さて、彼どうしようかな。身体は無いけど神族であるが故に一応生きてるしね。頭残したのはワザとだろう?」
「場所が判れば俺が持って行こう。土なら身体は作り直せるだろうし。但し、親族に血判状を書かせる。サラに近づかないようにな。破ればこいつの代わりに業火に焼かれる」
「まあ、妥当だね。今から行くのかい?」

 俺はその頭部のみになった土の神族を風で浮かせると布で包んだ。

「1時間で戻る。サラを頼んだよ爺さん。結界は張って行くから」
「ああ。分かった。行っておいで」

 俺は屋敷全体に俺の名の下に強固な結界を張る。時間稼ぎくらいにはなるし、何かあれば俺に解るようにしてある。

 こいつの故郷コモロッコへ風に姿を変え向かった。


 **********

 1時間後


「ただいま」

「お帰り~~。きっちり1時間だね。穏便に出来た?」
「それがさ。あいつ.................嫁が8人居たんだよ。一夫多妻の島らしくてな」
「8人.................」
「番は1人も居なくて、でも子供は13人居た」
「おおう.................」
「大黒柱が首だけになって戻って来たから大分パニックになってたけど、生きてるって知ると皆んなして血判状に押してくれたよ。見てくれ、21人分」

 ピラリと出した紙。そこには大小様々な大きさの指の跡が所狭しと付いていた。

「引退した祖父を呼びに行かせてちゃんと説明しといた。次俺の妻に手を出したら21人一瞬で焼かれるってな」
「それは.................怖いね」
「怖いだろ。後はあいつ次第だな」

 俺は血判状を胸のポケットに入れる。
 出来ればこんな事やりたくは無いが、サラの安全の為だ。21人の妻と子を引き換えにするなど考えたく無いが。

「番」は魅力的だ。未知の快楽が有る。俺はサラと繋がって本当に驚いた。まあ、今回人生初めて女の中に吐精した訳だから詳しい訳じゃ無いが、それでも身体中が快楽に溺れる。愛しさで高揚する。欲しくて我慢出来ない。慣れたら一日中でも交わりたいくらいだ。何故「番」なんてのが有るのか.................未だに判らないが。
 子を残す為かと思ったが、人間には判らなくて..........何故神族にだけ判るのか。そうかと思えば土の奴みたいに番以外でも普通に子が残せたりする。よく判らん。

 .................そう言えば.................サラは匂いが判ってた?俺が番だと判った?サラは........人間だよな?益々判らん!

 俺は頭をクシャクシャと摩り上げ、ふうっと息を吐いて椅子から立ち上がった。

「サラは?」
「今お茶の時間だから。部屋からは出てないよ」
「そうか。明日は改めて顔見せする。眷族には朝10時にホールに集まるよう伝言しといてくれ。サラのとこ行って来る」
「判った。ヤンにやらせるよ」
「ああ。じゃあ、また夕食で」

 俺はサラの部屋の前まで風で移動する。警備の者に挨拶をしてヤンに爺さんの所に行くよう伝えてから部屋に入った。どうやらテラスでお茶をしているようだ。声が聞こえる。ふっと何を話しているのか気になり見えない場所から風に声を運ばせる。



「アウィン様はお優しいですか?サラ様?」
 侍女の声だ。

「優しい?うん。優しいよ。口調は意地悪だけど」
「何処に惹かれたんですか?やっぱりお顔ですか?」
「.................うーん.................違う」
「えー!じゃあ、何ですか?何処ですか?気になります~!」
「えへへっえっとねぇ.................」

 俺は壁に張り付いて手で顔を隠しながら悶える。ダメだ、これ聞いたらダメなやつだ!でも..........サラが俺を好きになったきっかけ.........恥ずいが聞きたい!大体俺達恋人の期間が無いんだよな。実はあんまり知らない事の方が多い。バタバタして色々すっ飛ばして来たしな。23にもなって思春期みたいに心臓バクバクしてめちゃくちゃ恥ずいけど............................聞いておこう。


「パイをね、食べてくれたから」
「え?パイですか?」
「うん。小さい頃に初めてパイを作ったの。レモンパイ。でもね凄く酸っぱくて焼き過ぎてカチカチになっちゃって。失敗したから捨てようとしたら姉様がアウィンに食べさせてやろうって言い出して.........」


 .................あのアマ.................碌な性格してねえな!


「私は嫌だったんだけど、結局押し切られて。アウィンに出しちゃったの。ハラハラしながら見てたんだけど、一口食べたアウィンがね、凄い顔して.................それでも黙って一切れ食べ切ったの。紅茶を一気に飲んだ後に「不味くて食べられない。」て言って帰っちゃって.................。ふふ。食べた後にね」


 .................。くそっ!恥ずい!子供の時の思い出話はキツい!


「優しいよね。不味いなら一口で止めれば良いのに。あの時から私アウィンに絶対美味しいパイを作ろうって決めたの。暫く部屋に篭って母の料理の本を漁って読んでたわ。ふふ。懐かしい」


 ........サラは泣いてたんじゃなかったのか?あの女ぶっ飛ばす!大嘘じゃねえか!



「上手に出来る様になって彼に持って行ったの。そしたらね、凄くビックリしてた。一緒に切り取ったパイを食べたの。あの時は.................アップルパイ!躊躇わずに一口食べたアウィンがね、凄く.......優しい顔をしてくれて。「旨い」って。その時何だかキューンってなったの。やだ、恥ずかしい!」


 ..................................そこなんだ。別にカッコいいからとかじゃ無いんだな。まあ、サラらしいか。と、言う事は初めから惹かれてた訳じゃ無いんだ。俺みたいに。


「それにアウィンは凄く良い匂いがするのよ?何の香水なのかな?甘くて美味しそうな。でも花のような。男の子には珍しく甘い香り。ふふ、昔からオシャレだったのね」




 ............え"!気づいてた?やっぱり!て、言うか



 サラーーーーーーーー!それ!香水じゃなぁい!!!












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