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第一章 「番」と「想い」
26.このアンポンタン!
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天界への道が繋がる日。
俺達はラヌシェルの港町に戻っていた。
この神殿は水と風の神殿だ。何故2神が祀られているのか。
それは2人の神が兄妹だから。.........らしい。いや、実は夫婦だとも言われている。曖昧だ。俺は継承の儀で風神には会っているが、水神には会えなかった。まあ、そりゃそうだ。違う神なんだから。
風神は容姿が俺や爺さんと似通っていた。赤紫の瞳。プラチナブロンドの長く輝く髪。美しい整った容姿。腹に響く美声。長い手足。筋肉バキバキ。後、一回り大きくてそれはもう神々しい。神ってズルイよな。比べれば粗は有るが、まあ、でもやっぱり俺は風の子孫だった。
力を与えられた俺は天界の風神殿を少し散策したが、水の所とは離れているようだった。下界の認識とは違うのか。仲が悪いのかな?まあ、兄妹かも知れないしだったら普通か。良く分らん。まあ、どうでも良い。そこら辺の詳しい事は神族であっても御法度だ。聞くなんて事は出来ない。
俺とサラは巨大なリュックを背負い神殿へ足を踏み入れる。勿論《リンミン》を貰って帰る為に。爺さんの話によると、オレンジ色の芥子の花に似ているらしい。何処にでも咲いているが獲る事は簡単では無い。つまり獣人神に許しを貰わなければならない。兎に角行くしか無い。何させられるか知らないけど。因みに、サラのリュックにはパイや菓子や飲み物が沢山入っている。昨日一気に沢山焼いて侍女と小分けにしていた。非常食らしい。いや、そんな事になる前に帰りたいんだが。一応3ヶ月分の《リンミン》のストックは持っているので、最悪ダメなら世界中から消臭剤集めてやろうかと思っている。
念の為に試しにこのリンミン入り練り香水を付けさせて爺さんの手に触れさせてみた。結果、発情しなかった。匂いもしないと言う。だが、一掬いで持つ時間は3時間。割と直ぐに効果は無くなるようだ。
因みに俺は.................やっぱり匂わなくなった。
サラから番の匂いが消えた時、何て言うか、寂しくて.........悲しくて。思わずサラを抱き締めた。存在を確かめるように。13年間嗅いで来た匂いがしなくなると、大事なモノを無くした様な喪失感に襲われるのだ。でも、不思議とサラから一瞬パイを焼いた後の香ばしい匂いがした様な気がして、ホッとした。
その日はズッキーニのチーズパイにポークと野菜のゴロゴロポトフ。勿論俺が作らせた。毎日サラの作った料理が食いたい。もう、めちゃくちゃ旨くてサクサクの中にトロトロになった甘辛く味付けしたズッキーニとチーズが...。しかもパイ生地が棒状になってて手で持って食べられるのだ。.......味も食感も好みドンピシャ.........。何か嬉しくて凄く胸が熱くなった。俺だけの為に考えて作ったパイや料理。褒めた時のサラの照れた嬉しそうな顔。そんな事が脳裏を過ぎり、番の匂いが無くても愛しくて.......次第に落ち着いて来て..........大丈夫になった。その後堪らなくなって一回襲った。普通に変わりなく気持ち良かった。番の匂いだからじゃ無いみたいだ。
************
神殿の中を2人で話をしながら手を繋ぎ歩いて行く。今度は時間に余裕があるのでゆっくりだ。俺の代理でレイブンに商会の仕事をしてもらっている為出来るだけ早く帰らなければ。まあ、親父も居るしそこまで切羽詰まってはいないが、商談の契約書だけでも結構な件数だろうし、男爵家の領地経営も放ったらかしだな。信頼出来る眷族にほぼ任せっぱなし。まあ、こっちは良いや。眷族は俺の不利になるような事は出来ないからな。そんな事をつらつら話していると、ふと、風に乗って来るある匂いに気づく。
この匂いは..........................薔薇。ああ。バラか。.................ああ?
ん?んん?.................んんん?
視界の奥に映るそれは.......薄い青の髪。
黒いリボンでポニーテールにしている。
紺のジャケットに白いフリフリブラウス。
白いスラックスに黒いローファー。
緑の瞳の美丈夫.................
あれ?なんか.........割と普通の格好してねぇか?ピンクが無い?
「.................ガイザック。なんで?」
「.................ごめんね、アウィン」
ガイザックはそう言いながらゆっくり優雅に、割と大股で男らしく歩いて来る。物凄い違和感!いつもはくねくねしてんのに!
「あたし.........好きになっちゃったの」
「は?な.........だ、誰.........を」
「貴方の.................奥さんを」
目を見開き固まるサラ。
「...............................................で?」
「やっぱり子供は欲しいかなって。彼女との子なら愛せる。だからね、産んでもらおうと思って。」
俺の後ろに隠れるサラ。一度土野郎に襲われている。怯えているのだ。
「俺が許すとでも?」
チリッと風が動く。
「まあ、無理ね。力じゃ敵わない。だからね、天界で勝負を申し込むわ。アウィン」
「.........勝負?」
「ええ。貴方が出した婚姻宣誓証、破棄してもらうわ。その後その子をあたしにメロメロにしてみせる」
「土の神族ガイザック・メリス・ガイアードの名にかけて」
「名前.........!お前..............本気なのか!」
「言ったでしょ?好きになっちゃったって。この子のパイね.................気付いてた?【癒し】と【魅了】が込められてたのよ?有り得る?土の神族でも出来る奴なんて居やしない。胸に来たわ。満たされるの。心が洗われる。こんな事初めてよ。相手が女でも........欲しくて堪らない」
.............【癒し】?治療じゃなくて?マジか?なんだよそれ?【魅了】?そんなの.................天界の女神くらいしか.................え?やめろよ。
俺は背中に隠れたサラの細い腕を後ろ手で掴む。もう、何が何だか解らない。それでも.................
「離す訳ないだろ!このアンポンタン!!俺の女に手を出す奴は細切れだ。サラは絶対渡さない!」
俺達はラヌシェルの港町に戻っていた。
この神殿は水と風の神殿だ。何故2神が祀られているのか。
それは2人の神が兄妹だから。.........らしい。いや、実は夫婦だとも言われている。曖昧だ。俺は継承の儀で風神には会っているが、水神には会えなかった。まあ、そりゃそうだ。違う神なんだから。
風神は容姿が俺や爺さんと似通っていた。赤紫の瞳。プラチナブロンドの長く輝く髪。美しい整った容姿。腹に響く美声。長い手足。筋肉バキバキ。後、一回り大きくてそれはもう神々しい。神ってズルイよな。比べれば粗は有るが、まあ、でもやっぱり俺は風の子孫だった。
力を与えられた俺は天界の風神殿を少し散策したが、水の所とは離れているようだった。下界の認識とは違うのか。仲が悪いのかな?まあ、兄妹かも知れないしだったら普通か。良く分らん。まあ、どうでも良い。そこら辺の詳しい事は神族であっても御法度だ。聞くなんて事は出来ない。
俺とサラは巨大なリュックを背負い神殿へ足を踏み入れる。勿論《リンミン》を貰って帰る為に。爺さんの話によると、オレンジ色の芥子の花に似ているらしい。何処にでも咲いているが獲る事は簡単では無い。つまり獣人神に許しを貰わなければならない。兎に角行くしか無い。何させられるか知らないけど。因みに、サラのリュックにはパイや菓子や飲み物が沢山入っている。昨日一気に沢山焼いて侍女と小分けにしていた。非常食らしい。いや、そんな事になる前に帰りたいんだが。一応3ヶ月分の《リンミン》のストックは持っているので、最悪ダメなら世界中から消臭剤集めてやろうかと思っている。
念の為に試しにこのリンミン入り練り香水を付けさせて爺さんの手に触れさせてみた。結果、発情しなかった。匂いもしないと言う。だが、一掬いで持つ時間は3時間。割と直ぐに効果は無くなるようだ。
因みに俺は.................やっぱり匂わなくなった。
サラから番の匂いが消えた時、何て言うか、寂しくて.........悲しくて。思わずサラを抱き締めた。存在を確かめるように。13年間嗅いで来た匂いがしなくなると、大事なモノを無くした様な喪失感に襲われるのだ。でも、不思議とサラから一瞬パイを焼いた後の香ばしい匂いがした様な気がして、ホッとした。
その日はズッキーニのチーズパイにポークと野菜のゴロゴロポトフ。勿論俺が作らせた。毎日サラの作った料理が食いたい。もう、めちゃくちゃ旨くてサクサクの中にトロトロになった甘辛く味付けしたズッキーニとチーズが...。しかもパイ生地が棒状になってて手で持って食べられるのだ。.......味も食感も好みドンピシャ.........。何か嬉しくて凄く胸が熱くなった。俺だけの為に考えて作ったパイや料理。褒めた時のサラの照れた嬉しそうな顔。そんな事が脳裏を過ぎり、番の匂いが無くても愛しくて.......次第に落ち着いて来て..........大丈夫になった。その後堪らなくなって一回襲った。普通に変わりなく気持ち良かった。番の匂いだからじゃ無いみたいだ。
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神殿の中を2人で話をしながら手を繋ぎ歩いて行く。今度は時間に余裕があるのでゆっくりだ。俺の代理でレイブンに商会の仕事をしてもらっている為出来るだけ早く帰らなければ。まあ、親父も居るしそこまで切羽詰まってはいないが、商談の契約書だけでも結構な件数だろうし、男爵家の領地経営も放ったらかしだな。信頼出来る眷族にほぼ任せっぱなし。まあ、こっちは良いや。眷族は俺の不利になるような事は出来ないからな。そんな事をつらつら話していると、ふと、風に乗って来るある匂いに気づく。
この匂いは..........................薔薇。ああ。バラか。.................ああ?
ん?んん?.................んんん?
視界の奥に映るそれは.......薄い青の髪。
黒いリボンでポニーテールにしている。
紺のジャケットに白いフリフリブラウス。
白いスラックスに黒いローファー。
緑の瞳の美丈夫.................
あれ?なんか.........割と普通の格好してねぇか?ピンクが無い?
「.................ガイザック。なんで?」
「.................ごめんね、アウィン」
ガイザックはそう言いながらゆっくり優雅に、割と大股で男らしく歩いて来る。物凄い違和感!いつもはくねくねしてんのに!
「あたし.........好きになっちゃったの」
「は?な.........だ、誰.........を」
「貴方の.................奥さんを」
目を見開き固まるサラ。
「...............................................で?」
「やっぱり子供は欲しいかなって。彼女との子なら愛せる。だからね、産んでもらおうと思って。」
俺の後ろに隠れるサラ。一度土野郎に襲われている。怯えているのだ。
「俺が許すとでも?」
チリッと風が動く。
「まあ、無理ね。力じゃ敵わない。だからね、天界で勝負を申し込むわ。アウィン」
「.........勝負?」
「ええ。貴方が出した婚姻宣誓証、破棄してもらうわ。その後その子をあたしにメロメロにしてみせる」
「土の神族ガイザック・メリス・ガイアードの名にかけて」
「名前.........!お前..............本気なのか!」
「言ったでしょ?好きになっちゃったって。この子のパイね.................気付いてた?【癒し】と【魅了】が込められてたのよ?有り得る?土の神族でも出来る奴なんて居やしない。胸に来たわ。満たされるの。心が洗われる。こんな事初めてよ。相手が女でも........欲しくて堪らない」
.............【癒し】?治療じゃなくて?マジか?なんだよそれ?【魅了】?そんなの.................天界の女神くらいしか.................え?やめろよ。
俺は背中に隠れたサラの細い腕を後ろ手で掴む。もう、何が何だか解らない。それでも.................
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