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第一章 「番」と「想い」
25.静かに食え!(挿絵有り)
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俺は再びサラを毛布で包み、横抱きにして今度は扉から出る。赤髪の眷属に目で合図をしてから屋敷を後にした。
「ガイザック様は.................アウィンが好きなの?」
「どうかな?ただの男好きじゃないか?さっき置いてきたムキムキが好みらしいけど。なんでも良いのかもな」
「私には?」
「ああ。あれ?言えない」
「制約?」
「ああ」
「そっか」
「サラ?」
「あのね。ガイザック様の匂い」
「!」
「嫌な匂いじゃないんだけど.....甘くないの。濃い砂糖の入っていない紅茶みたい」
「.................」
「雰囲気と合わないね」
「.................いや、合ってるよ」
「そう?」
「ああ」
俺は宙に浮き上がり、空を飛び再び屋敷を目指す。ガイザックは.........濃い紅茶か.........。番には成れないな。ちょっと安心した。基本官能的な匂いがするらしいから。目が冴えるような匂いがするなら違うだろう。いや、初めから解ってる。俺の番なんだから。
「サラ。帰ったらミートパイ作ってくれ。腹が減った。お前のが食べたい」
「ん?良いよ。また厨房貸してくれる?」
「お前は当主の妻だぞ?好きに使えば良い」
「そうなの?じゃあ、借りるね?お爺様のお屋敷の厨房大きいよね~」
「そうか?あ、そうだ言ってなかったが、俺達の新居はウィングボルトの領地に建てたから。後、厨房はサラ専用に別に有る。どんどん使えよ?」
「へ?新居?今のお屋敷は?」
「古いから取り壊す。誰も住まないからな」
「そうなの。.........寂しくなるね」
「慣れれば新居がお前と俺の家になる。寂しくない。風は入れ替えるものだろ?」
「.......ねえ............アウィン。キスして。恋人のキス」
「嫌だ」
「えぇ.................」シュン
「夫婦のキスがしたい。サラ。良いよな?」
「夫婦?.........うん。して?」
俺は青い空の下、サラに口付けをする。
風神の末裔である俺が愛した女に。
深く全てを絡ませる。
いつまでもいつまでも
溶け合うような甘いキスをした。
************
「アウィン~焼けたよ?お待ちどう様!チーズたっぷり入れたからね?」
「ああ。待ってた。早くくれ。」
「ふふ。焼き立てをアウィンに食べて貰えるなんて何か嬉しいな」
ふわりと笑う。
くー!サラ~~~!可愛い過ぎる!
白いフリルの付いたエプロンを着けたサラはテーブルにリンゴとトマトのグリーンサラダ和え。冷やしたダージリンティーをセットし、熱々のミートパイを切り分ける。
俺はそのミートパイを一口口に入れる。
「ああ。旨い」自然と顔が綻ぶ。
えへへと照れながら笑う新妻のパイは最高だった。いや、ハリサント家の少ない家計の中試行錯誤して料理全般俺の為に練習して来たんだ。そりゃ口に合うよな。
.................あれ?俺幸せ者じゃないか?小さい頃からお互い両想いでしかも番。性行も堪らなく気持ち良いし、料理も俺の為に頑張って来た女を妻にしたんだぞ。可愛いし、綺麗で、胸も美乳。余計な親族は片が付いたし............まあ、ちょっとボヤんだけど。それもまた可愛いし.....あれさえ無ければ完璧じゃねーか!
そう。全属性のあれ。
.........何とかしないとな。
「わー!良い匂いがするね~?アウィン、今昼食かい?随分遅いね?」
爺さんが食堂に現れる。
「サラにパイを作らせてたから」
「そうだったね。サラちゃんはパイを作るのが上手だったんだ。私は食べた事無いんだけど」
「え?そうなんですか?あ、そうか。このお屋敷に移られたんですものね」
「サラちゃんは6年前から毎月パイを持って来てくれてたよね?今までずっと?」
「ええ。結婚した日の7日前まで」
「凄いね。アウィンが大好きだったんだ」
「ふぇ!!」
「6年だよ?普通じゃないよ。アウィンの好みを聞いてメモして帰る姿、健気で可愛いかったな」
「爺さんからかうなよ。サラがまた茹蛸になってる」
「あ、あ、あの。お爺様もお食べになりますか?こちらの厨房のパイ皿が大きな物だったので沢山出来たんです。良かったら.........」
「やったね!勿論頂きます」
爺さんは俺の座るテーブルの斜め横に座る。サラがサラダを小皿に盛り、空いた皿にパイを切り分け爺さんの前に置く。侍女がカトラリーとダージリンティーを注いだグラスを置いた。
「ふふ。頂きます」
「はい、どうぞ。お口に合えば良いのですが」
俺はそれを横目に黙々と口に運んでいた。熱いミートパイは本当に旨い。パリパリしたパイ生地に、カッテージチーズもサッパリしていて舌触りはねっとりとフィリングに絡み合い、パイとは思えないほど上品だ。何か隠し味がしてあるのか爽やかなんだ。何だろ?
「うわっ!なんて美味しいんだ!」
爺さんが大きな声で叫んだ。
ビクッ!ビックリした。
「爺さん、静かに食べてくれ」
「アウィン!素晴らしいよ!サラちゃん凄い!美味しいよ!クドくなくて、胃に来るかなって思ったけど全然そんな事無い。あ、隠し味に.........オレンジ?」
「わあ!そうです!気づいてくれました?少しだけジュースを絞った後のオレンジの果肉を入れてます。後味がサッパリするかなって。嬉しい!」
ええ!そうなんだ。ふわっと香る風味はオレンジだったとは.................。サラ凄いな。
「サラちゃんがここまでのパイを作れるなんて.........なんだろ?心が満たされる?もう、このまま私と住まな「おい!パイに釣られるなよ、爺さん。婆さん呼び戻すぞ?」いー!」
「.................仲悪いんですか?」
「いや。悪くはないと思うぞ?ただ.........強い、かな?」
「力が?」
「生命力が。パワフル。ガンガン前に行くタイプだ。サラと正反対」
「わあっ!会ってみたい!」
「問答無用でサラを連れ去られそうで俺は怖いけどな。まあ、強引だな」
「.................成る程。血はそこから」
「ん?」
「ガイザック様は.................アウィンが好きなの?」
「どうかな?ただの男好きじゃないか?さっき置いてきたムキムキが好みらしいけど。なんでも良いのかもな」
「私には?」
「ああ。あれ?言えない」
「制約?」
「ああ」
「そっか」
「サラ?」
「あのね。ガイザック様の匂い」
「!」
「嫌な匂いじゃないんだけど.....甘くないの。濃い砂糖の入っていない紅茶みたい」
「.................」
「雰囲気と合わないね」
「.................いや、合ってるよ」
「そう?」
「ああ」
俺は宙に浮き上がり、空を飛び再び屋敷を目指す。ガイザックは.........濃い紅茶か.........。番には成れないな。ちょっと安心した。基本官能的な匂いがするらしいから。目が冴えるような匂いがするなら違うだろう。いや、初めから解ってる。俺の番なんだから。
「サラ。帰ったらミートパイ作ってくれ。腹が減った。お前のが食べたい」
「ん?良いよ。また厨房貸してくれる?」
「お前は当主の妻だぞ?好きに使えば良い」
「そうなの?じゃあ、借りるね?お爺様のお屋敷の厨房大きいよね~」
「そうか?あ、そうだ言ってなかったが、俺達の新居はウィングボルトの領地に建てたから。後、厨房はサラ専用に別に有る。どんどん使えよ?」
「へ?新居?今のお屋敷は?」
「古いから取り壊す。誰も住まないからな」
「そうなの。.........寂しくなるね」
「慣れれば新居がお前と俺の家になる。寂しくない。風は入れ替えるものだろ?」
「.......ねえ............アウィン。キスして。恋人のキス」
「嫌だ」
「えぇ.................」シュン
「夫婦のキスがしたい。サラ。良いよな?」
「夫婦?.........うん。して?」
俺は青い空の下、サラに口付けをする。
風神の末裔である俺が愛した女に。
深く全てを絡ませる。
いつまでもいつまでも
溶け合うような甘いキスをした。
************
「アウィン~焼けたよ?お待ちどう様!チーズたっぷり入れたからね?」
「ああ。待ってた。早くくれ。」
「ふふ。焼き立てをアウィンに食べて貰えるなんて何か嬉しいな」
ふわりと笑う。
くー!サラ~~~!可愛い過ぎる!
白いフリルの付いたエプロンを着けたサラはテーブルにリンゴとトマトのグリーンサラダ和え。冷やしたダージリンティーをセットし、熱々のミートパイを切り分ける。
俺はそのミートパイを一口口に入れる。
「ああ。旨い」自然と顔が綻ぶ。
えへへと照れながら笑う新妻のパイは最高だった。いや、ハリサント家の少ない家計の中試行錯誤して料理全般俺の為に練習して来たんだ。そりゃ口に合うよな。
.................あれ?俺幸せ者じゃないか?小さい頃からお互い両想いでしかも番。性行も堪らなく気持ち良いし、料理も俺の為に頑張って来た女を妻にしたんだぞ。可愛いし、綺麗で、胸も美乳。余計な親族は片が付いたし............まあ、ちょっとボヤんだけど。それもまた可愛いし.....あれさえ無ければ完璧じゃねーか!
そう。全属性のあれ。
.........何とかしないとな。
「わー!良い匂いがするね~?アウィン、今昼食かい?随分遅いね?」
爺さんが食堂に現れる。
「サラにパイを作らせてたから」
「そうだったね。サラちゃんはパイを作るのが上手だったんだ。私は食べた事無いんだけど」
「え?そうなんですか?あ、そうか。このお屋敷に移られたんですものね」
「サラちゃんは6年前から毎月パイを持って来てくれてたよね?今までずっと?」
「ええ。結婚した日の7日前まで」
「凄いね。アウィンが大好きだったんだ」
「ふぇ!!」
「6年だよ?普通じゃないよ。アウィンの好みを聞いてメモして帰る姿、健気で可愛いかったな」
「爺さんからかうなよ。サラがまた茹蛸になってる」
「あ、あ、あの。お爺様もお食べになりますか?こちらの厨房のパイ皿が大きな物だったので沢山出来たんです。良かったら.........」
「やったね!勿論頂きます」
爺さんは俺の座るテーブルの斜め横に座る。サラがサラダを小皿に盛り、空いた皿にパイを切り分け爺さんの前に置く。侍女がカトラリーとダージリンティーを注いだグラスを置いた。
「ふふ。頂きます」
「はい、どうぞ。お口に合えば良いのですが」
俺はそれを横目に黙々と口に運んでいた。熱いミートパイは本当に旨い。パリパリしたパイ生地に、カッテージチーズもサッパリしていて舌触りはねっとりとフィリングに絡み合い、パイとは思えないほど上品だ。何か隠し味がしてあるのか爽やかなんだ。何だろ?
「うわっ!なんて美味しいんだ!」
爺さんが大きな声で叫んだ。
ビクッ!ビックリした。
「爺さん、静かに食べてくれ」
「アウィン!素晴らしいよ!サラちゃん凄い!美味しいよ!クドくなくて、胃に来るかなって思ったけど全然そんな事無い。あ、隠し味に.........オレンジ?」
「わあ!そうです!気づいてくれました?少しだけジュースを絞った後のオレンジの果肉を入れてます。後味がサッパリするかなって。嬉しい!」
ええ!そうなんだ。ふわっと香る風味はオレンジだったとは.................。サラ凄いな。
「サラちゃんがここまでのパイを作れるなんて.........なんだろ?心が満たされる?もう、このまま私と住まな「おい!パイに釣られるなよ、爺さん。婆さん呼び戻すぞ?」いー!」
「.................仲悪いんですか?」
「いや。悪くはないと思うぞ?ただ.........強い、かな?」
「力が?」
「生命力が。パワフル。ガンガン前に行くタイプだ。サラと正反対」
「わあっ!会ってみたい!」
「問答無用でサラを連れ去られそうで俺は怖いけどな。まあ、強引だな」
「.................成る程。血はそこから」
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