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第四章 「後悔」と「過去世」
63.可哀想かな?
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俺達は第一エリアの戦闘場に上がる。獣人神が居る高く広い壇上の観覧席に他の神が俺達を見下ろす形だ。
第一戦闘場は真正面になる。
サラは獣人神の横から俺だけを見ていた。直ぐに判る。
白く美しい白銀の髪。光る華奢な身体。少し心配そうだ。眉が下がってる。ふふ。可愛い。早く終わらせて迎えに行かないとな。
試合の始まりを告げる鐘が鳴る。その瞬間飛び出したのはシャザ。鞘からショテルを瞬時に引き出し猿に切り掛かった。左腕が飛び、胸から血が吹き出した。
.........えっ?そこまでやって良いんだ.......あ、ヤバい。サラ見てるじゃん。チラッとサラの居る方を見た。キャー!と悲鳴が聞こえる。
.........だよな。ちょっとどうしよう.........
予想外、いや、初めて見る筈の流血。コロモッコの土野郎のは見せなかったしな。
俺は風を使ってサラに呼びかけた。
『サラ聞こえるか?サラ。見なくて良いから。直ぐ終わらす。下向いときな』
「アウィン~ヤダー!死なないで!」
わーんと泣いてる。
『俺は死なん。直ぐに迎えに行くから待ってろ』
「うん。うん。待ってる。待ってるから!アウィン~」
『ああ。直ぐだよ。本当.........』
直ぐに終わらせる。
俺はサッと人差し指で波を作る。くねくねと風を操り圧縮してからスイッと右腕を振った。
スパッ
犬共の脚を切り離す。次は猿。今度は長い手を切り離す。後はゴリラ。何処斬ろうかな。四肢は.........可哀想かな?
「アウィン!こちらにもやらせろ!」
シャザがゴリラに向かって行く。
ああ、そうだな。ミル様に良い処見せないとな。
「任す。早くしてくれよ。サラ迎えに行かないといけないからな」
「ああ。分かった」
俺は身体に舞い上がった黄色の砂をパタパタ払う。地には鳴き声と呻きをあげる犬と猿。広範囲に真っ赤に染まった土。鉄の匂い。
シャザがゴリラを斬り伏せ終了。時間にして5分くらいか?
試合終了の鐘が鳴った。
シャザが剣を鞘に入れながら歩いて来る。
「獣人って案外随分弱いな。なんで?」
「遅いんだ。動きの速い奴とあんまり鍛錬してなかったんだろう。力だけ強くてもな」
「そうか。睨み合う暇も無かったしな。折角の武器が泣くな。はは」
「さあ、今日はこれで終わりだ。帰ろうか」
「ああ。サラを連れて行くから先に戻ってくれて良いぜ。じゃあな」
「ああ。夕食に食堂で」
俺はコクンと頷き、その場からふわりと浮き上がりサラの元に飛んだ。
********
シャザは振り返り同じ組の者に言う。
「さあ、行こうか。.........ん?どうかしたのか?」
「.........何にも出来なかった」
立ち尽くす獣人達が呟く。
「ん?ああ。速いからか?犬が居たからな。スピード勝負かなと思って」
集団で蠢く悲鳴と呻きの素に一暼してから戦闘場の出口に歩いて行く。
「俺.........棄権するわ」「俺も.........」「.........」
青い顔をして踵を返しパタパタと走り去って行く獣人達。
「.........賢明だな。で、お前らはどうする?」
そこにはミル、ゾーイ、レイン、ガイザックが残っていた。
「ふう。久々に見たねシャザの剣技。益々速くなってるじゃないか。参ったな」
「ああ。アウィンも本当簡単に切り刻むよな。片手って.........」
「.................躊躇しないわね。もうあれは.........。私達にも容赦しないって事よ」
「? .........当然だろう?妻を奪われるなど有り得ない。死に物狂いで護りに行くだろう。お前達にアウィンがどう映っているのか知らないが我はあいつの目からいつも感じるぞ?」
「.........殺す覚悟は出来ている。命を掛けて挑んで来いってな。ふふっ」
そう言いながら黒い尾をくにくにと動かしシャザは笑って去って行った。
************
俺は神の観覧席の横に音を立てず降り立つ。護衛の象に挨拶をしてサラに風で呼び掛ける。
『サラ。帰ろう。迎えに来たぞ』
サラはバッと顔を上げキョロキョロ辺りを見渡し、俺を見つけるとピョンと椅子から飛び降りパタパタ走って来る。
ウサギみたい。が、蹴躓いて転びそうになった。お約束か!
慌てて駆け寄ろうとしたが、目の前をスッと遮りサラを受け止める長身の.........神。
黒い軍服の様な物を着ている。
髪は.........暗い銀だ。
そして、そう、俺の結界を弾きやがった!ドバンっと吹き飛ぶ風。だが奴の結界で被害は無い様だ。くそ!マジか.........
サラを受け止め胸に抱くその神は静かにサラに何か囁いている。
「気をつけたまえ。君はもう女神になるんだ。我々と同じ.........神にね?..................ああ、美しいね君は。変わらない」
「.........? あ、あの、ありがとうございます。えっと.........誰ですか?神様?」
「.................まだ記憶は戻ってないんだね」
「あ.........昔の?はい。全く........」
「そうか.........」
「!! あの.........ありがとうございました。私行かないと」
眉間に皺を寄せたサラ。動きがぎこちない。
その神の顔を見上げて一瞬固まっている。何だ?そして振り払う様に俺の処に走って来た。
「アウィン!」
サラが俺の胸に抱き着いて来る。
「ああ.........サラ。お待たせ。大丈夫か?」
何かされてないよな?
「アウィン。抱っこして」
「ん? じゃあ、行くか」
俺はペコリと長身の神に頭を下げサラを横抱きにして不穏に思いながらも空へ飛び立った。
第一戦闘場は真正面になる。
サラは獣人神の横から俺だけを見ていた。直ぐに判る。
白く美しい白銀の髪。光る華奢な身体。少し心配そうだ。眉が下がってる。ふふ。可愛い。早く終わらせて迎えに行かないとな。
試合の始まりを告げる鐘が鳴る。その瞬間飛び出したのはシャザ。鞘からショテルを瞬時に引き出し猿に切り掛かった。左腕が飛び、胸から血が吹き出した。
.........えっ?そこまでやって良いんだ.......あ、ヤバい。サラ見てるじゃん。チラッとサラの居る方を見た。キャー!と悲鳴が聞こえる。
.........だよな。ちょっとどうしよう.........
予想外、いや、初めて見る筈の流血。コロモッコの土野郎のは見せなかったしな。
俺は風を使ってサラに呼びかけた。
『サラ聞こえるか?サラ。見なくて良いから。直ぐ終わらす。下向いときな』
「アウィン~ヤダー!死なないで!」
わーんと泣いてる。
『俺は死なん。直ぐに迎えに行くから待ってろ』
「うん。うん。待ってる。待ってるから!アウィン~」
『ああ。直ぐだよ。本当.........』
直ぐに終わらせる。
俺はサッと人差し指で波を作る。くねくねと風を操り圧縮してからスイッと右腕を振った。
スパッ
犬共の脚を切り離す。次は猿。今度は長い手を切り離す。後はゴリラ。何処斬ろうかな。四肢は.........可哀想かな?
「アウィン!こちらにもやらせろ!」
シャザがゴリラに向かって行く。
ああ、そうだな。ミル様に良い処見せないとな。
「任す。早くしてくれよ。サラ迎えに行かないといけないからな」
「ああ。分かった」
俺は身体に舞い上がった黄色の砂をパタパタ払う。地には鳴き声と呻きをあげる犬と猿。広範囲に真っ赤に染まった土。鉄の匂い。
シャザがゴリラを斬り伏せ終了。時間にして5分くらいか?
試合終了の鐘が鳴った。
シャザが剣を鞘に入れながら歩いて来る。
「獣人って案外随分弱いな。なんで?」
「遅いんだ。動きの速い奴とあんまり鍛錬してなかったんだろう。力だけ強くてもな」
「そうか。睨み合う暇も無かったしな。折角の武器が泣くな。はは」
「さあ、今日はこれで終わりだ。帰ろうか」
「ああ。サラを連れて行くから先に戻ってくれて良いぜ。じゃあな」
「ああ。夕食に食堂で」
俺はコクンと頷き、その場からふわりと浮き上がりサラの元に飛んだ。
********
シャザは振り返り同じ組の者に言う。
「さあ、行こうか。.........ん?どうかしたのか?」
「.........何にも出来なかった」
立ち尽くす獣人達が呟く。
「ん?ああ。速いからか?犬が居たからな。スピード勝負かなと思って」
集団で蠢く悲鳴と呻きの素に一暼してから戦闘場の出口に歩いて行く。
「俺.........棄権するわ」「俺も.........」「.........」
青い顔をして踵を返しパタパタと走り去って行く獣人達。
「.........賢明だな。で、お前らはどうする?」
そこにはミル、ゾーイ、レイン、ガイザックが残っていた。
「ふう。久々に見たねシャザの剣技。益々速くなってるじゃないか。参ったな」
「ああ。アウィンも本当簡単に切り刻むよな。片手って.........」
「.................躊躇しないわね。もうあれは.........。私達にも容赦しないって事よ」
「? .........当然だろう?妻を奪われるなど有り得ない。死に物狂いで護りに行くだろう。お前達にアウィンがどう映っているのか知らないが我はあいつの目からいつも感じるぞ?」
「.........殺す覚悟は出来ている。命を掛けて挑んで来いってな。ふふっ」
そう言いながら黒い尾をくにくにと動かしシャザは笑って去って行った。
************
俺は神の観覧席の横に音を立てず降り立つ。護衛の象に挨拶をしてサラに風で呼び掛ける。
『サラ。帰ろう。迎えに来たぞ』
サラはバッと顔を上げキョロキョロ辺りを見渡し、俺を見つけるとピョンと椅子から飛び降りパタパタ走って来る。
ウサギみたい。が、蹴躓いて転びそうになった。お約束か!
慌てて駆け寄ろうとしたが、目の前をスッと遮りサラを受け止める長身の.........神。
黒い軍服の様な物を着ている。
髪は.........暗い銀だ。
そして、そう、俺の結界を弾きやがった!ドバンっと吹き飛ぶ風。だが奴の結界で被害は無い様だ。くそ!マジか.........
サラを受け止め胸に抱くその神は静かにサラに何か囁いている。
「気をつけたまえ。君はもう女神になるんだ。我々と同じ.........神にね?..................ああ、美しいね君は。変わらない」
「.........? あ、あの、ありがとうございます。えっと.........誰ですか?神様?」
「.................まだ記憶は戻ってないんだね」
「あ.........昔の?はい。全く........」
「そうか.........」
「!! あの.........ありがとうございました。私行かないと」
眉間に皺を寄せたサラ。動きがぎこちない。
その神の顔を見上げて一瞬固まっている。何だ?そして振り払う様に俺の処に走って来た。
「アウィン!」
サラが俺の胸に抱き着いて来る。
「ああ.........サラ。お待たせ。大丈夫か?」
何かされてないよな?
「アウィン。抱っこして」
「ん? じゃあ、行くか」
俺はペコリと長身の神に頭を下げサラを横抱きにして不穏に思いながらも空へ飛び立った。
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