69 / 114
第四章 「後悔」と「過去世」
69.綺麗だろ?
しおりを挟む
「え?何?」
俺はそっとサラの額に掛かる髪を除ける。何だこれ?これも女神だから?輪?花か?月の光は.........関係無さそうだけど。
「.........ん.........ぅ」
「.........サラ」
「うん.........はい。アウィン」
「.................おはよう。サラ。起きれるか?」
「うん.........。アウィン。ギュッてして?」
「.........ああ。サラ、今日は個人戦だから」
ギュッと抱き締める。
「うん。行くよ。獣人神様のとこ楽しいんだけど、姫さま達凄い見て来るからちょっと怖い。や、優しいんだけどね?」
「そうか。昼には一度迎えに行くよ。まあ、女神に危害を加えるなんて神の前で出来はしない。まだちゃんと完全な覚醒じゃないかも知れないけど.........ちょっとずつ変化してるし。額の.........模様とか.........」
「模様?額?」
「.........何か浮き出てる。ピンク色に」
「.................痛くはないよ」
額を摩るサラ。
「やっぱり最終的に尻尾とか耳生えて来るかもな」
「! アウィン~~!」
「尻.....うん、まだ生えてないな」
サラの尻を撫で回す。昨日のまま全裸だ。
「にゃーーーー!」
「ははははっ。まあ、冗談はともかくとして、何の模様か俺には判らないんだけど暫くは前髪で隠すか.........あ!そうだ!忘れてた!」
俺はガバッと起き上がりリュックに歩み寄った。中に手を入れ巾着を探す。何かバタバタしてすっかり存在を忘れてた。一番底にあるそれを見つける。
「商会に寄った時についでに頼んでたのが入ってるの聞いて手に入れといたんだ」
「何を?」
「ラッセルレースと刺繍だよ」
「ラッセルレース?」
「縦に糸を編んで作ったレースだ。ドレスに使われたり、ベールに使ったりする。小さいけど良い工房と契約出来てな、試作品を幾つか見せて貰ってて、出来も良かったから早速サラに何か作らせようと思って。頼んどいたんだ。帽子に付けたり、エプロンとか、袖につけても綺麗かなってな。塗料を柄の上に筆で手作業で塗ってるんだ」
俺は何本かあるレースを比べて柔らかい大柄の太いレースを選んだ。
「これ額に巻いておこうか。綺麗で珍しい柄だし。色も派手じゃない」
「.........うん。綺麗だね。優しい春の色。私に?高いよね?」
「サラってば。おバカだな」
「うーーーーっ」
「その工房と契約したのは全てサラの物を作らせる為だよ。余ったら流すけど。基本彼らはせっせとサラの為にレースや刺繍を手掛ける。専属の工房だ」
「え"?」
「何?」
「.........それ、普通?」
「普通」
「嘘」
「貴族なら普通だよ」
「知らなかった.........」
「後は被服関係もそうだけど装飾や靴なんかも専属の工房と契約しようとは思う。これはサラの意見も必要だから追々な」
「い、要らないよ」
「要るだろ」
「靴なんて半年に一回直しに出すくらいだよ?」
「一月に5足くらいは新しく要るだろ!」
「わーん!アウィンと金銭感覚が違い過ぎる!」
「慣れろ!貴族子女だろ?いや、分かった。俺が勝手にやる。金は使わないと回らないんだよ。そして俺はお前を着飾らせたい!」
「ふぇーーーー!全然平凡じゃ無い!!」
****
食堂に降りると何やらザワザワしている。一早くトーナメント表を確認しに行った者が騒いでいるようだ。
シャザが居た。本当いつもちゃんと居るよな。今日も胸までの紅い甲冑を着けている。奴は夜はエールを飲んだりするが基本水。そして肉。獣人神の領域では共食いは出来ないので鶏肉のみだ。獣人に鳥は居ない。風の眷属ではあるが神族では無い。食材は地上に居るバイヤーと取引するか天界で養殖、栽培するからしい。昨日の話ではかなりミル様はこだわってらっしゃるようだ。
「おはようシャザ。トーナメント表見たか?」
「いや、だが、騒いでる奴らの話は聞こえて来るから。今日の個人戦は第1と第2試合だ」
「そうか。俺達も朝飯食ったら見に行くよ」
「ああ。俺はいい。集合時間30分前までに会場に行く。少し用事が有る」
「そうか。分かった」
「ん?奥方の額の.........美しいな。レースか?」
「ああ。綺麗だろ?細かくて繊細だけど大胆な柄だし配色のセンスも良い。気に入ってる工房でサラに作らせたんだ」
「ふふ。アウィンは奥方が大事なんだな。気づかなかったよ」
「サラの事は話した事は無かったな。他の奴に興味を持たれると嫌だから」
「.................徹底してるな」
「俺の慎重さには自分でもビックリしてるよ」
「はははははっ!自分で言うか?」
「先々を考えるのは商売人の性だ。良い事だろうが悪い事だろうが.........目的の為には策を考じるのさ。まあ、俺は割と素直な方だよ。ふふ」
「違うだろ?もっと単純さ。これは執着って言うんだ。嫉妬にまみれた醜い男の支配欲さ。指輪だってそうだ。わざわざ自分の目の色を着けさせる。人間らしいな、アウィン」
「ちっ。.........否定はしないさ。だが人間じゃなくても嫉妬や支配欲は有るだろ?例えば.........神とかな」
「ん?」
「いや、何でもない」
ランドールはルナに自身の目の色のピアスを贈っている。ルナに対して支配欲.........有ったのにな。てか、獣だってハーレム作るじゃねーか!俺は真面だ!
俺はそっとサラの額に掛かる髪を除ける。何だこれ?これも女神だから?輪?花か?月の光は.........関係無さそうだけど。
「.........ん.........ぅ」
「.........サラ」
「うん.........はい。アウィン」
「.................おはよう。サラ。起きれるか?」
「うん.........。アウィン。ギュッてして?」
「.........ああ。サラ、今日は個人戦だから」
ギュッと抱き締める。
「うん。行くよ。獣人神様のとこ楽しいんだけど、姫さま達凄い見て来るからちょっと怖い。や、優しいんだけどね?」
「そうか。昼には一度迎えに行くよ。まあ、女神に危害を加えるなんて神の前で出来はしない。まだちゃんと完全な覚醒じゃないかも知れないけど.........ちょっとずつ変化してるし。額の.........模様とか.........」
「模様?額?」
「.........何か浮き出てる。ピンク色に」
「.................痛くはないよ」
額を摩るサラ。
「やっぱり最終的に尻尾とか耳生えて来るかもな」
「! アウィン~~!」
「尻.....うん、まだ生えてないな」
サラの尻を撫で回す。昨日のまま全裸だ。
「にゃーーーー!」
「ははははっ。まあ、冗談はともかくとして、何の模様か俺には判らないんだけど暫くは前髪で隠すか.........あ!そうだ!忘れてた!」
俺はガバッと起き上がりリュックに歩み寄った。中に手を入れ巾着を探す。何かバタバタしてすっかり存在を忘れてた。一番底にあるそれを見つける。
「商会に寄った時についでに頼んでたのが入ってるの聞いて手に入れといたんだ」
「何を?」
「ラッセルレースと刺繍だよ」
「ラッセルレース?」
「縦に糸を編んで作ったレースだ。ドレスに使われたり、ベールに使ったりする。小さいけど良い工房と契約出来てな、試作品を幾つか見せて貰ってて、出来も良かったから早速サラに何か作らせようと思って。頼んどいたんだ。帽子に付けたり、エプロンとか、袖につけても綺麗かなってな。塗料を柄の上に筆で手作業で塗ってるんだ」
俺は何本かあるレースを比べて柔らかい大柄の太いレースを選んだ。
「これ額に巻いておこうか。綺麗で珍しい柄だし。色も派手じゃない」
「.........うん。綺麗だね。優しい春の色。私に?高いよね?」
「サラってば。おバカだな」
「うーーーーっ」
「その工房と契約したのは全てサラの物を作らせる為だよ。余ったら流すけど。基本彼らはせっせとサラの為にレースや刺繍を手掛ける。専属の工房だ」
「え"?」
「何?」
「.........それ、普通?」
「普通」
「嘘」
「貴族なら普通だよ」
「知らなかった.........」
「後は被服関係もそうだけど装飾や靴なんかも専属の工房と契約しようとは思う。これはサラの意見も必要だから追々な」
「い、要らないよ」
「要るだろ」
「靴なんて半年に一回直しに出すくらいだよ?」
「一月に5足くらいは新しく要るだろ!」
「わーん!アウィンと金銭感覚が違い過ぎる!」
「慣れろ!貴族子女だろ?いや、分かった。俺が勝手にやる。金は使わないと回らないんだよ。そして俺はお前を着飾らせたい!」
「ふぇーーーー!全然平凡じゃ無い!!」
****
食堂に降りると何やらザワザワしている。一早くトーナメント表を確認しに行った者が騒いでいるようだ。
シャザが居た。本当いつもちゃんと居るよな。今日も胸までの紅い甲冑を着けている。奴は夜はエールを飲んだりするが基本水。そして肉。獣人神の領域では共食いは出来ないので鶏肉のみだ。獣人に鳥は居ない。風の眷属ではあるが神族では無い。食材は地上に居るバイヤーと取引するか天界で養殖、栽培するからしい。昨日の話ではかなりミル様はこだわってらっしゃるようだ。
「おはようシャザ。トーナメント表見たか?」
「いや、だが、騒いでる奴らの話は聞こえて来るから。今日の個人戦は第1と第2試合だ」
「そうか。俺達も朝飯食ったら見に行くよ」
「ああ。俺はいい。集合時間30分前までに会場に行く。少し用事が有る」
「そうか。分かった」
「ん?奥方の額の.........美しいな。レースか?」
「ああ。綺麗だろ?細かくて繊細だけど大胆な柄だし配色のセンスも良い。気に入ってる工房でサラに作らせたんだ」
「ふふ。アウィンは奥方が大事なんだな。気づかなかったよ」
「サラの事は話した事は無かったな。他の奴に興味を持たれると嫌だから」
「.................徹底してるな」
「俺の慎重さには自分でもビックリしてるよ」
「はははははっ!自分で言うか?」
「先々を考えるのは商売人の性だ。良い事だろうが悪い事だろうが.........目的の為には策を考じるのさ。まあ、俺は割と素直な方だよ。ふふ」
「違うだろ?もっと単純さ。これは執着って言うんだ。嫉妬にまみれた醜い男の支配欲さ。指輪だってそうだ。わざわざ自分の目の色を着けさせる。人間らしいな、アウィン」
「ちっ。.........否定はしないさ。だが人間じゃなくても嫉妬や支配欲は有るだろ?例えば.........神とかな」
「ん?」
「いや、何でもない」
ランドールはルナに自身の目の色のピアスを贈っている。ルナに対して支配欲.........有ったのにな。てか、獣だってハーレム作るじゃねーか!俺は真面だ!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる