未完】風神アウィンの受難〜全属性神族の番になれる愛妻は女神らしい。いや、俺のだからな?〜

平川

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第五章 「勝者」と「陰謀」

90.助けてくれ!

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「アウィン酷いわ!」
「ごめんごめん。ははははっ!」
「私こんな顔で.........わーーん!」

 サラは怒っても可愛いな!良いもの見れた。

「舌出してみて?」
「うぅ.........」

 ペロッと出したサラの小さな舌は.........赤かった。

「ふははっ!あの飴は食紅が大量に入ってるからな。真っ赤っかだ。.........しょうがないなぁ」
「うぅ.........取れる?」
「うーん。1日経てば取れるかな?」
「そんなに!大変な物食べちゃった.........」
「まあ、じゃあ、俺も協力するよ」
「え?方法あるの?」
「.........まあな」

 俺はそう言うと一階の正面入り口右手奥。そう、医務室に向かう。ここら辺は第2試合が始まる前にざっと確認しておいたところだ。

「アウィン、此処何?」

 サラは初めて来る静かな空間にビクビクしている様だ。

「医務室。んーと、この部屋で良いか」
「い、医務室?ど、どうして?治療?」

 俺は武器保管室から6番目の奥の部屋の鍵を風で開ける。ガチャッとノブを回して開いた。ベッドが1つポツンと置いてあるだけの部屋だ。患者の治療室だと思う。中は当然真っ暗。誰も居ない。

「さ、入って」
「え?え?何?」
「大丈夫。まだ試合は終わらないから。時間はある」

 ガチャリと中から鍵を閉め、ついでに風で結界を施行しておく。

「あ、あの.........真っ暗で.........ちゃんと........見えないよ。アウィン?」
「さあ、じゃあ、さっきの続きだ.........サラ」
「アウィン?でも.........」

 部屋は暗いけど判る。サラは光を発しているのだ。ボンヤリと白い光に包まれている。女神に.........なったサラ。俺は扉を背にして目を閉じた。

「.........サラ.........顔見なくても何度でもいう.......。ちゃんと覚えとけ。俺が妻にした女は燻んだ銀髪のオレンジ色の瞳。子供達の中で1番背が低くて痩せっぽちだった。いつも言葉を飲み込んでは下向いて。控え目で。でも、ぼやっとしてるけどちゃんと人の痛みが判る優しい女だ。後、最高に料理が上手い。食に疎い筈の俺の好みを調らべて、美味いパイを焼いてくれるんだ。.........女神だからとか姿が変わったからとかじゃ無い。俺はずっとお前を可愛いと思って来たよ。人間としてな」
「.................アウィン」
「まだ疑うか?」
「.........ふふ.........疑ってなんかいないわ。初めから.........だって貴方の愛は.........美味しいんだもの」

「.........なあ........サラ.........いや、違うな。サラじゃない。ルナ、でも無いな?中に居る君は.........誰なんだ?」
「.................」

 暫く部屋の中に静寂が訪れる。俺の問いは間違っているか?いや.........思い当たる節が何度もあった。

「.................アウィン。私は私よ?生まれた時から私はサラ。間違いないわ」
「サラ.........俺のサラは君じゃない」
「いいえ。私はサラよ?自我は確かに別かも知れないけど普段からの貴方を知ってる。それこそ7歳の頃に出会った日の事も.........ちゃんと覚えてるわ」
「多重人格か?」
「それも違うわね。.........そうね、ずっと見守って来た、そんな存在よ。別に警戒しなくて良いわ」
「今、サラは.........」
「居るわよ勿論。聞こえてないけどね。私が話をしている間は意識が無いから」
「なぁ、何が目的なんだ.........俺に出来る事なら何でもする。だから.........サラは助けてくれ!」
「貴方には別に.........今まで通りで良いわ。さっき言ったでしょ?まあ、強いて言うなら『凄く愛してくれたら』良いの。嘘偽りなく、ね?」
「.........解らない.........なんで.........」
「ごめんね?まだ言えないかな。そんな顔しないでアウィン。貴方の役目は今言った事よ。他に求めてはいない。ふふふっ」
「.................」

 俺は力が抜けてふらっと扉に背を着いた。

 やっぱり中に誰か居た........見守る?生まれた時から?女神だからか?ルナじゃ無い。じゃあ、サラは、何の女神なんだよ。今のはもしかして.........女神の人格?サラは.........俺のサラは.........消えちまう?そんな.........

「アウィン?」

 扉に凭れたまま声のする方へゆっくり顔を上げる。そこには変わらず白くぼんやり光を放つサラの顔。キョトンとした顔をしている.........俺の愛したサラの顔。

「........なんでこんな事に.........」
「え?何?アウィン、どうしたの?私何かあるの?」
「.........何でもない。何でもないよ」
「嘘!だって.........アウィン.........」

 サラがソロソロと歩いて此方に来る。俺は身体が動かなかった。先程の女がまだ彼女の中に居る。そう思うと.........
 サラは目の前まで来ると俺の頬に手を当てて覗き込んだ。

「悲しそうな顔をしてる。どうして?」
「何も.........無い」
「ヤダ!ちゃんと言って!私.........私の所為?」
「違う.........えっと.........」

 俺は.........思わず目を逸らしていた。
 身体が扉に張り付いた様に動かない。
 どうして良いか.........判らなくなっていた。女神よ...俺からサラを取らないでくれ......


「アウィン.........赤いの.........取ってくれるんでしょ?」




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