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第六章 「精算」と「真相」
105. 右が無罪....左が有罪
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『それでは,被告人アウィン・シータ・ウィングボルトに対する神への反逆及び偉造物破損事件の審理を始める』
「.........」
暗い銀髪、長身の審判神がスクリと席から立ち上がり左手を突き出した。すると丸い輪の様な物が無数に空中に現れる。その中にボンヤリと浮き出て来たものは、昨日のあの場面。俺がサラを助け出した一部始終の本物ソックリの絵だった。
『今回の詳細はこの映像を観てもらおう。最初に新女神であるサラが土の神グランゼウラが突如出した鉱石に包まれて行った。その次に被告人が神が造りし結界に阻まれる。1度獣人の元に戻り、レイピアを受け取りこの結界を斬った。結界が一部が破壊される。この隙間から風に姿を変えこの鉱石をレイピアで切り剥がし空中へと逃げた。これにより新女神サラの身体に着いた石を払い彼女を回収した。.........ここまでだ』
「.........」
次々に映像と呼ばれた絵が大きく映し出される。そう言えば.........土の神はどうしたのか。まあ、でも.........結界を斬った事には変わりない。重罪だ。俺は許されはしない。今のサラならもう大丈夫なのかな?.........だがサラは最後まで自分を諦めないでくれと言っていた。
俺に何が出来るかな.........
『では審議を行う。ここに集められた全神に問う。有罪か、無罪か。この審判の天秤に各々応を乗せよ』
え?全神!?此処に全神が!!そして俺の審議を何故?
闘技場の上空に金の色をした天秤が現れる。えらく派手だ。眩しい.........
そしてそれはギギギッとデカい音をさせて左側の上皿が下がって行く。全然解らん!どちらが有罪でどちらが無罪なんだ.........いや、無罪は無いか。実際結界を斬った絵が有ったし。大人しくしておこう。もしかしたら、サラと最後に話をさせてくれるかも知れない。
俺は黙ったまま天秤を見上げていた。すると左に傾いていた上皿が今度はクククと上がって行く。ええ?何だ?そして何故だか釣り合った処で止まってしまった。
『ふむ.........成る程。さて、まだ応えておらん者も居るな。後8人。名を呼ぶので乗せてくれ』
審判神が一歩前に歩みを進める。
『水の女神』
ガシャンッと右へ下がる。
『夜の女神』
左へガシャンと戻る。
『土の神』
更に左へガシャンッと下がる。
『風の神』
右にガシャンッと1つ戻る。
『闇の神』
左へガシャンッと下がる。
『獣人神』
更に左へガシャンッと下がる。
『豊穣の女神』
右に1つガシャンッと戻る。
『.........新女神、サラ』
右に1つガシャンッと戻る。
『では、これで最後だ。審判神の名において、この裁決を下す』
最後にガシャンッと2つ分傾いたのは
右側の上皿だった。
『風神族アウィン・シータ・ウィングボルト。その方を【無罪】とする』
「え?」
ワ"ーーーーッとコロシアムが歓声で揺れた。
爺さんとシャザが俺に向かって走って来る。
あ?え?つまり右が無罪.....左が有罪?でも、なんで2人分右に傾いたんだ....?
『ふふ。私は有るお方の代弁者でもある。その票だ』
「有る、お方?」誰?神か?
『『異議あり!!』』
突如立ち上がった巨大。獣人神だ。いや、それどころではない。あちこちに手を挙げ立ち上がる男神達。まさか.........有罪の票はこいつら男神か.........?
『静粛に。意見が有るならば聞こう。但し、有りもしない事実はこの場では無意味。解っているとは思うが婚姻宣誓証を破棄させ、新女神を略奪する目的で私の審議を覆せるとは思わぬ事だ。では言ってみるが良い』
『くっ!神が造りし結界を壊したのだぞ!有罪にすべきだ!危険すぎる!』
『反逆罪だ!』
『業火で焼いてしまえ!』
『神族など新女神の伴侶に相応しくない!』
ふぅ、と息を吐く審判神。
『成る程。もう1度映像を観せた方が良いようだな。では少し前からにしようか』
再び映し出されたのは俺と土の神族ガイザックとの試合だった。絵が動いている。
『土の神族は土の神から力を分け与えられ実力では無く神の力にて風の神族と戦い敗れた。土の神は新女神を欲しがった。だが神族は負け、機会を失い掛けた。そして彼女を鉱石で囲い地中に引き摺り込もうとした。私を含め誰も助ける者など居なかった。事後ならば弾弓出来るが未遂は弱い為だ。しかし風の神族は禁忌を破ってまで助け出した。結界を斬り隙間を空けたのは伴侶を助ける為に取った行動であるのは明白だ。その後も暴れる訳でも無く逃げもしなかった。実に実直である』
『か、神の結界を斬ったのだぞ!力があり過ぎる.........危険だ!』
『斬ったのは技では無くレイピアだ。このレイピアは.........かつて戦いの神の元、技巧を奮っていた名工鍛冶職人ヤマアラシの神族ノーザスが最後に造った珠玉の銘品。風の神族でなくても斬れるさ』
『だが、神族だぞ?半分人間ではないか!神には神の伴侶が必要だ!』
『元々女神は人間だ。此処に居る女神は地上から寄せられたのだ。神同士の間に生まれた女神を除いたとしてもほぼ殆どが人間であるのだ。それに女神は伴侶が神で無くとも力に影響は無い。.........必要としているのは男神の方であろう?』
『『.................』』
『他には?』
「.........」
暗い銀髪、長身の審判神がスクリと席から立ち上がり左手を突き出した。すると丸い輪の様な物が無数に空中に現れる。その中にボンヤリと浮き出て来たものは、昨日のあの場面。俺がサラを助け出した一部始終の本物ソックリの絵だった。
『今回の詳細はこの映像を観てもらおう。最初に新女神であるサラが土の神グランゼウラが突如出した鉱石に包まれて行った。その次に被告人が神が造りし結界に阻まれる。1度獣人の元に戻り、レイピアを受け取りこの結界を斬った。結界が一部が破壊される。この隙間から風に姿を変えこの鉱石をレイピアで切り剥がし空中へと逃げた。これにより新女神サラの身体に着いた石を払い彼女を回収した。.........ここまでだ』
「.........」
次々に映像と呼ばれた絵が大きく映し出される。そう言えば.........土の神はどうしたのか。まあ、でも.........結界を斬った事には変わりない。重罪だ。俺は許されはしない。今のサラならもう大丈夫なのかな?.........だがサラは最後まで自分を諦めないでくれと言っていた。
俺に何が出来るかな.........
『では審議を行う。ここに集められた全神に問う。有罪か、無罪か。この審判の天秤に各々応を乗せよ』
え?全神!?此処に全神が!!そして俺の審議を何故?
闘技場の上空に金の色をした天秤が現れる。えらく派手だ。眩しい.........
そしてそれはギギギッとデカい音をさせて左側の上皿が下がって行く。全然解らん!どちらが有罪でどちらが無罪なんだ.........いや、無罪は無いか。実際結界を斬った絵が有ったし。大人しくしておこう。もしかしたら、サラと最後に話をさせてくれるかも知れない。
俺は黙ったまま天秤を見上げていた。すると左に傾いていた上皿が今度はクククと上がって行く。ええ?何だ?そして何故だか釣り合った処で止まってしまった。
『ふむ.........成る程。さて、まだ応えておらん者も居るな。後8人。名を呼ぶので乗せてくれ』
審判神が一歩前に歩みを進める。
『水の女神』
ガシャンッと右へ下がる。
『夜の女神』
左へガシャンと戻る。
『土の神』
更に左へガシャンッと下がる。
『風の神』
右にガシャンッと1つ戻る。
『闇の神』
左へガシャンッと下がる。
『獣人神』
更に左へガシャンッと下がる。
『豊穣の女神』
右に1つガシャンッと戻る。
『.........新女神、サラ』
右に1つガシャンッと戻る。
『では、これで最後だ。審判神の名において、この裁決を下す』
最後にガシャンッと2つ分傾いたのは
右側の上皿だった。
『風神族アウィン・シータ・ウィングボルト。その方を【無罪】とする』
「え?」
ワ"ーーーーッとコロシアムが歓声で揺れた。
爺さんとシャザが俺に向かって走って来る。
あ?え?つまり右が無罪.....左が有罪?でも、なんで2人分右に傾いたんだ....?
『ふふ。私は有るお方の代弁者でもある。その票だ』
「有る、お方?」誰?神か?
『『異議あり!!』』
突如立ち上がった巨大。獣人神だ。いや、それどころではない。あちこちに手を挙げ立ち上がる男神達。まさか.........有罪の票はこいつら男神か.........?
『静粛に。意見が有るならば聞こう。但し、有りもしない事実はこの場では無意味。解っているとは思うが婚姻宣誓証を破棄させ、新女神を略奪する目的で私の審議を覆せるとは思わぬ事だ。では言ってみるが良い』
『くっ!神が造りし結界を壊したのだぞ!有罪にすべきだ!危険すぎる!』
『反逆罪だ!』
『業火で焼いてしまえ!』
『神族など新女神の伴侶に相応しくない!』
ふぅ、と息を吐く審判神。
『成る程。もう1度映像を観せた方が良いようだな。では少し前からにしようか』
再び映し出されたのは俺と土の神族ガイザックとの試合だった。絵が動いている。
『土の神族は土の神から力を分け与えられ実力では無く神の力にて風の神族と戦い敗れた。土の神は新女神を欲しがった。だが神族は負け、機会を失い掛けた。そして彼女を鉱石で囲い地中に引き摺り込もうとした。私を含め誰も助ける者など居なかった。事後ならば弾弓出来るが未遂は弱い為だ。しかし風の神族は禁忌を破ってまで助け出した。結界を斬り隙間を空けたのは伴侶を助ける為に取った行動であるのは明白だ。その後も暴れる訳でも無く逃げもしなかった。実に実直である』
『か、神の結界を斬ったのだぞ!力があり過ぎる.........危険だ!』
『斬ったのは技では無くレイピアだ。このレイピアは.........かつて戦いの神の元、技巧を奮っていた名工鍛冶職人ヤマアラシの神族ノーザスが最後に造った珠玉の銘品。風の神族でなくても斬れるさ』
『だが、神族だぞ?半分人間ではないか!神には神の伴侶が必要だ!』
『元々女神は人間だ。此処に居る女神は地上から寄せられたのだ。神同士の間に生まれた女神を除いたとしてもほぼ殆どが人間であるのだ。それに女神は伴侶が神で無くとも力に影響は無い。.........必要としているのは男神の方であろう?』
『『.................』』
『他には?』
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