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15.コロロコロンとプレゼント探し
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「コリーン…君は…」
「はい?どうしましたか?」
「いや、何でも無いよ。そうだ、この実の使い方を教えてやろうか?」
何かを言い掛けたウィンダム王子がいつにも増して優しい顔を向けて来る。
「使い方…?」
そう言えば犬侍女が言っていたのは何だったかな?確か…言葉がどうとかって話をしていて…
すると彼の指がスッと伸びて来てコロロコロンの実の真ん中をツンっと突いた。するとピピピピッと真ん中から亀裂が走りパカンと弾ける様に四つに殻が割れたのだ。中にはピンクの身が二つ、黄色の身が二つ入っていた。しかも何故かクルクル回ってる!これがマジックフルーツ!
「こ、これは?」
「ピンクの方を食べてみて?大丈夫。コリーンは魔力耐性があるから仮令マジックフルーツを食べても酷い事にはならないと思うから…ふふっ」
「え、えぇ本当ですか?」
酷い事って、でも興味はある…
「変な事になったら助けて下さいよ?」
「ああ、任せといて?」
あ、ニヤついてる。絶対何かヤバげな物なんだ。でもでも…
私はジッとそのオレンジに似た果肉を見つめてみたが匂いも甘いし割と美味しそうに思えて。何より好奇心が勝ってしまった。ならば食すまでだ!と、ピンク色の一房を指で摘み出しそのままエイヤ!と口の中に放り込んだ。
「ん!甘しょっぱい!」
見た目に反し果物と言うよりも調理した蒸し芋の様な味にビビッとなる。なる程、びっくり菓子の意味が分かった気がする。これはこれで美味しい。後を引く味と言うか…少々頭は混乱するけれど。
咀嚼してごくんと飲み込んでから「で、使い方とは?」とウィンダム王子に聞こうとふっと顔を上げると…
口を手で押さえ涙目でプルプル震える男が。
『にゃ?』(にゃ?)
『にゃぁなーにゃーにゃ?』(あれどこかに猫が居ますか?)
「かっ…かわ…可愛いぃっ!」
『にゃ!!?』(は!!?)
「ヤバいヤバい!コリーンが可愛い過ぎる!!想像以上だ!」
『にゃ?にゃにゃ!?にゃ──っ!』(は?ええ!?え──っ!)
口から発せられた言葉が何故かにゃーにゃーと鳴く猫の様になっている!思わず口に手を当てるとプニュッと柔らかい弾力と同時にチクチク刺さる毛の感触。バッとそれに目を落とすと肉丘とフサフサの銀色の毛が生えた私の手が見えた。
『にぎゃ──っ!ぎにゃにゃにゃにゃ──!?』(きゃ──っ!どうなってるの──!?)
「うわぁコリーン、抱き締めても良い?抱っこしても良い?吸って良い?撫で回したい~リボンを付けて飼いたい程だ!あ、ちなみに耳も生えてるぞ?」
『ぎにゃ?』(ええ?)
サッと頭に手を乗せると何と固い耳が二つツンと生えている。余りの事に唖然と固まっている私にクックックッと可笑しそうに笑うウィンダム王子。
…え?…つまりコロロコロンって…
「はははっすまない、余りに慌てぶりが可愛くて。この実はな、種類によって一時的に違う動物の姿になる事が出来るんだ。今君が食べたのは『猫の実』だな。獣人が食べるとまんま猫の姿に変わるんだよ。驚いたか?」
『ぎにゃ…』(はい…)
「しかしやっぱりコリーンは魔力耐性をしっかり持ってるんだな。しかもかなり強い耐性を持っている。ほら、手と耳しか変わってないだろ?まあ、人間だからってのもあるだろうけどもう少し効果は強い筈なんだ」
そう言って私の猫耳をヨシヨシと撫でる。触られた耳はしっかりと神経が通っていてちゃんと彼の手の温かさを感じられた。
「心配するな。君ならすぐ元に戻るから。獣人でも精々三十分くらいかな。こいつは子供に人気のある菓子みたいな扱いなんだよ」
『にゃにゃぁ~』(そうだったんですね~)
他にもネズミやカピバラ、狐にヤマアラシなどなど沢山の種類があり、変化を楽しめるが中身は分からないのだそうだ。クジみたいな物だろうか?
「象とか麒麟とか大型が当たると大変でね、服が破けるから大人はあまりピンクの方は食わないな。戻った時に真っ裸になるから」
『ぎにゃゃ!』(ええぇ!)
「ちなみにこっちの黄色い身は一時的に聴力に作用する魔力が含有されているらしく、更に言語だけだけど、翻訳効果が確認されている。『変身と翻訳』という一粒で二度おいしい変わった実なんだ」
ちょっと待って!翻訳効果がある黄色い身の方が重要なんじゃないの?もう変わった実で済まされないでしょ!どれだけ凄いのよ!どういう進化をしたらそんな事になるのよマジックフルーツ~!!
「まあ、魔素の少ない場所に持って行くと途端にしぼんで跡形もなく蒸発するからバムダ以外にこの実が使える所は無いんだけど…」
するとウィンダム王子がハッとして私をジッと見つめて来る。今度は真剣なまなざしでボソッと呟き始めた。
『? にゃ?』(? 何ですか?)
「! ……待てよ?もしかしたらこれが外交の突破口になるかもな。コロロコロンを有効活用出来るかも知れない。そうか、そうだなうん、ナルーナの研究塔に提案して改良…加工してみようか」
『なぁ~?にゃーにんなん!』(やっと気付いた?この実の凄さに!)
「ふふっありがとう、コリーンのおかげで良い案が思い付いたよ。次の観光は第七島のナルーナにしような、可愛い可愛いにゃん子ちゃん?」
『シャーッ!』
誰がにゃん子よ!あ…今私猫だったわ。
***
「エンジンが故障しただと?じゃあ代わりの飛行船を用意しろ!」
「それは無理です。今回だって機体を確保するのにかなりの無理を他の出資者様達にしてしまって、もう我々だけでは収拾付かないところまで来ているんです…コリーン様の為だと思い堪えて来ましたが無理なものは無理ですよ!大人しく修理が終わるまで待って下さい!」
「何だと~っ!もうお前の所に融資はしないぞっそれでも良いのか!!」
そう言って融資先である飛行船の製造技師長である男とやり合っているのは言わずもがな侯爵だ。侯爵の無理な要望に他の日程を前倒しにし、日数を掛けてしっかりした点検もままならないまま次々にこなしていた為エンジンが悲鳴を上げたのだ。
半硬式飛行船であるこの船はエンベロープ(ガスが漏れないよう加工された膜材)の下側に沿ってキール(竜骨)を通した物で、軽量ではあるが大型化を可能とした新式だ。この枠組みにエンジンや船室を取り付けられる為、舵を取り易く長距離移動も可能になった。だが反面飛行船のエンジンにかなりの負担が掛かり部品が熱で溶解してしまい安全に飛行する事が難しい状態に陥ってしまったのだ。
「…それでも無理です。部品が無ければ修理もままなりません。最低でも全ての部品が揃い組み立てに三週間は必要で出発は出来ません。もしそれでも、と仰るなら走行中の安全はこちらは保証出来ませんので目的地まで辿り着けぬ可能性がある事を了承し遺書のご用意を」
「ぐ…ぬ…足元を見やがって~!」
「大人しく船便をご利用なさったらどうです?融資の件も…どちらにせよコリーン様の印のない次回の契約は打ち切りになるのですから」
「はあぁ~…分かった分かった。その代わりキッチリ三週間後に出発出来る様にしておくのだぞ?それ以上は流石に待てん!分かったな!」
「…尽力します」
侯爵はそう吐き捨てた後、飛行船事業の作業所の扉を思い切り蹴り上げドカドカと足音を立てながら侯爵家の馬車に乗って帰って行った。
「はぁ…全く、以前は書類の受け渡しだけだったからあの人の気質なんか気づかなかったが…あれじゃ逃げ出したくなるのも分かるな。コリーン様、ご無事だと良いけど」
そう頭を掻きながら呟く製造技師長。その一部始終の様子を別の扉の少し開いた隙間からハンチング帽を深く被った壮年の男が覗き見ていたのを侯爵は気づきはしなかった。
***
私の猫化は言っている間に早々に解け、ようやく人語を話せると安心してもう一度残ったコロロコロンを食べさせようとしてくる王子を威嚇しながら真っ直ぐに歩いて行く。バザールを抜けるとそこにはこぢんまりした商店がズラッと建ち並んでいた。
「ここから先はまあ日用品と言うより少し値を張る物が売ってる店が殆どだな」
暫くウインドーショッピングしながら歩くと確かに宝石を使った貴金属やドレス等を扱っている店が増えて来た。更にはこの先王都を輪を描く様に各階級の高い者の領地と屋敷が配置されていると言う。
「そうだ、折角だから何か贈らせてくれ。何が良い?ネックレスとかブローチとか…指輪は…ダイヤが散りばめられたブレスレットなんかどうだ?」
この人は…ホイホイと友達相手に貴金属を買い与えようなんて。それは違うでしょ。
「何もいりません」
「そう言うな。好きな宝石は無いのか?」
「ありません」
「じゃあコリーンはめちゃくちゃ可愛いからフリフリの可憐なドレスはどうだ?ああ、でも妖精と間違えられて妖精界に連れ去られるかもしれないか…どうしよう」
「よくもまあペラペラと訳の分からない事を言ってるんですか恥ずかしい」
「俺はコリーンにミミルキーの件でいつも助けられてるお礼がしたいだけだ。出来れば君が欲しい物を手に入れたい…ん!?それだ!ミミルキーだ」
「え?ミミルキー?」
何か閃いた様でウィンダム王子はダナンさん達を手招きして呼び寄せ、二言三言何か告げた後、突然転移動して姿を消してしまった。
「…えぇ何?」
「一時間程で戻られるとは仰ってられましたが…このままここに居ても仕方がありませんから、良ければ美術館や博物館などの施設をご案内致しますがどうされますか?」
「わぁ!美術館?行ってみたいですっ」
「承りました。ではどうぞ」
そう言うとララさんはクルリと私に背を向けスタンバイ。
ああ…やはりこれか。
「…あ、あの…流石に外では…」
「遠慮は要りません。護衛もし易くなりますし歩くより何倍も早く到着出来ます。さあお乗り下さい」
「でも~うー…(きっとスッゴイ目立つぅ)」
「コリーン様?」(カパッ)
「ヒィッ!わ、分かりましたぁ~っ」
久々のララさん強制ライドオン…あの黒い口に本能が勝てない(泣)
するとダナンさんがニコニコ並走しながら話し掛けて来た。
「これは蛇獣人の子守りの習性でね、親は幼い子を運ぶ時に背に乗せて移動するんです。いや~未来のララの子育てを垣間見れてとっても嬉しいです!」
「え?…子育て…」
つまり私は子ヘビ扱いされていると…なる程?
確かにダナンさんやララさんから見たら小さいかもですが…子ヘビサイズなんだ私。ん?
「蛇獣人さんは…卵生ですか?」
「ええ、卵生です。生まれる前の大きさまで腹の中で育てます。卵が柔らかいので生まれたら直ぐ殻を破って出て来ますけど。あ、キングコブラは蛇の中でも珍しく元々子育てしますよ。雌だけなんですが…この姿の我々は男女でちゃんと家庭を築きます」
「へぇ、そうなんですね。…あ!あの、私お二人が婚約されたのをさっき聞いたばかりで…ご婚約おめでとうございます!美男美女で凄くお似合いだと思います!」
慌てて何とか捻り出した言葉を口にするとみるみるとダナンさんの顔がクシャッと歪んでゆく。えっ!と思った瞬間ポロッと一筋の涙が彼の頬を伝っていった。
「はっ…すみません…。何だか人に改めて言われると…嬉しくて。此処まで来たんだなって。ははっ」
ダナンさんって…ララさんの事本当に好きなんだ…男の人でも泣いちゃうくらいだなんて…そんなに愛されてるなんてララさんが羨ましいな。
「お二人ならきっと良い家庭を作れますよ。ね?ララさん?」
私も嬉しくなってララさんに問い掛けてみる。今はライドオン中なので彼女の美しい黒髪しか見えていないがきっと前から見れば照れてるララさんの顔がそこに…
「チッ」
ピンクに染まる世界が一瞬で白く色を失くした。
誰かの、いや確実に今目の前から舌打ちが聞こえ…
「……あれ?」
***
黒いカラスが一羽大空を飛行していたがクンッと降下を始めた。タッと翼を折りたたみ降り立った場所は男の肩だ。嘴に何かを咥えている。
「あったか?俺も一枚見つけたぞ。よしよしこれで二枚揃ったな」
「カァ」
「うん、どちらも綺麗だ。大きさも丁度良いな。流石はミロ」
「ガガッ」
男はカラスの身体を優しく撫でつつ手の中にあるキラリと光るそれを見つめる。
「彼女は銀髪だから何でも合うし、この柔らかい虹色も似合うだろう」
「カァ!」
「宝石は要らないって言われてしまったからな。押し付けるのは違うだろ?あまり飛ばし過ぎて引かれてしまうのは困る…今はな」
「カァ~」
「ふふ…慎重?俺が?…そうだな、まさか俺が女性相手に贈り物に悩む日が来るとは…もうすっかり諦めていたのにな」
一人で歳を取って孤独に死を待つのだとそう覚悟を決めていた。何度見合いをしたが結局際まで決まり掛けた相手とも破局し、それ以後伴侶となる相手は現れなかった。
姿は上から下まで人型ではあるが彼は獣人だ。まさか種族が違う相手に惹かれるとは思いもしなかった。
「でも彼女と隣り合った時、あのイチゴの様な瞳を食べたいって本能で口にも出ていた。ああ…口説いてる自分にも驚いた…全く気持ちが追い付いてなかったしな。まあ、意味は伝わってなくて怖がられたんだが。それに彼女の驚く顔が見たくてわざわざこれを探しに来てしまう自分が可笑しくて…さ」
それは紛れも無い自覚に変わって行く。
「ああ~参った。スッカリやられてるよな、俺」
遠くを眺めながら可笑しそうに話す男の独白を黙って聞いていたカラスは、スリッと男の顔に頭を擦り付ける。彼は長い間寄り添い共に過ごして来た相棒だ。
「ありがとうミロ。さあ、可愛いあの子の喜ぶ姿を拝みに行こうか。楽しみだ」
「はい?どうしましたか?」
「いや、何でも無いよ。そうだ、この実の使い方を教えてやろうか?」
何かを言い掛けたウィンダム王子がいつにも増して優しい顔を向けて来る。
「使い方…?」
そう言えば犬侍女が言っていたのは何だったかな?確か…言葉がどうとかって話をしていて…
すると彼の指がスッと伸びて来てコロロコロンの実の真ん中をツンっと突いた。するとピピピピッと真ん中から亀裂が走りパカンと弾ける様に四つに殻が割れたのだ。中にはピンクの身が二つ、黄色の身が二つ入っていた。しかも何故かクルクル回ってる!これがマジックフルーツ!
「こ、これは?」
「ピンクの方を食べてみて?大丈夫。コリーンは魔力耐性があるから仮令マジックフルーツを食べても酷い事にはならないと思うから…ふふっ」
「え、えぇ本当ですか?」
酷い事って、でも興味はある…
「変な事になったら助けて下さいよ?」
「ああ、任せといて?」
あ、ニヤついてる。絶対何かヤバげな物なんだ。でもでも…
私はジッとそのオレンジに似た果肉を見つめてみたが匂いも甘いし割と美味しそうに思えて。何より好奇心が勝ってしまった。ならば食すまでだ!と、ピンク色の一房を指で摘み出しそのままエイヤ!と口の中に放り込んだ。
「ん!甘しょっぱい!」
見た目に反し果物と言うよりも調理した蒸し芋の様な味にビビッとなる。なる程、びっくり菓子の意味が分かった気がする。これはこれで美味しい。後を引く味と言うか…少々頭は混乱するけれど。
咀嚼してごくんと飲み込んでから「で、使い方とは?」とウィンダム王子に聞こうとふっと顔を上げると…
口を手で押さえ涙目でプルプル震える男が。
『にゃ?』(にゃ?)
『にゃぁなーにゃーにゃ?』(あれどこかに猫が居ますか?)
「かっ…かわ…可愛いぃっ!」
『にゃ!!?』(は!!?)
「ヤバいヤバい!コリーンが可愛い過ぎる!!想像以上だ!」
『にゃ?にゃにゃ!?にゃ──っ!』(は?ええ!?え──っ!)
口から発せられた言葉が何故かにゃーにゃーと鳴く猫の様になっている!思わず口に手を当てるとプニュッと柔らかい弾力と同時にチクチク刺さる毛の感触。バッとそれに目を落とすと肉丘とフサフサの銀色の毛が生えた私の手が見えた。
『にぎゃ──っ!ぎにゃにゃにゃにゃ──!?』(きゃ──っ!どうなってるの──!?)
「うわぁコリーン、抱き締めても良い?抱っこしても良い?吸って良い?撫で回したい~リボンを付けて飼いたい程だ!あ、ちなみに耳も生えてるぞ?」
『ぎにゃ?』(ええ?)
サッと頭に手を乗せると何と固い耳が二つツンと生えている。余りの事に唖然と固まっている私にクックックッと可笑しそうに笑うウィンダム王子。
…え?…つまりコロロコロンって…
「はははっすまない、余りに慌てぶりが可愛くて。この実はな、種類によって一時的に違う動物の姿になる事が出来るんだ。今君が食べたのは『猫の実』だな。獣人が食べるとまんま猫の姿に変わるんだよ。驚いたか?」
『ぎにゃ…』(はい…)
「しかしやっぱりコリーンは魔力耐性をしっかり持ってるんだな。しかもかなり強い耐性を持っている。ほら、手と耳しか変わってないだろ?まあ、人間だからってのもあるだろうけどもう少し効果は強い筈なんだ」
そう言って私の猫耳をヨシヨシと撫でる。触られた耳はしっかりと神経が通っていてちゃんと彼の手の温かさを感じられた。
「心配するな。君ならすぐ元に戻るから。獣人でも精々三十分くらいかな。こいつは子供に人気のある菓子みたいな扱いなんだよ」
『にゃにゃぁ~』(そうだったんですね~)
他にもネズミやカピバラ、狐にヤマアラシなどなど沢山の種類があり、変化を楽しめるが中身は分からないのだそうだ。クジみたいな物だろうか?
「象とか麒麟とか大型が当たると大変でね、服が破けるから大人はあまりピンクの方は食わないな。戻った時に真っ裸になるから」
『ぎにゃゃ!』(ええぇ!)
「ちなみにこっちの黄色い身は一時的に聴力に作用する魔力が含有されているらしく、更に言語だけだけど、翻訳効果が確認されている。『変身と翻訳』という一粒で二度おいしい変わった実なんだ」
ちょっと待って!翻訳効果がある黄色い身の方が重要なんじゃないの?もう変わった実で済まされないでしょ!どれだけ凄いのよ!どういう進化をしたらそんな事になるのよマジックフルーツ~!!
「まあ、魔素の少ない場所に持って行くと途端にしぼんで跡形もなく蒸発するからバムダ以外にこの実が使える所は無いんだけど…」
するとウィンダム王子がハッとして私をジッと見つめて来る。今度は真剣なまなざしでボソッと呟き始めた。
『? にゃ?』(? 何ですか?)
「! ……待てよ?もしかしたらこれが外交の突破口になるかもな。コロロコロンを有効活用出来るかも知れない。そうか、そうだなうん、ナルーナの研究塔に提案して改良…加工してみようか」
『なぁ~?にゃーにんなん!』(やっと気付いた?この実の凄さに!)
「ふふっありがとう、コリーンのおかげで良い案が思い付いたよ。次の観光は第七島のナルーナにしような、可愛い可愛いにゃん子ちゃん?」
『シャーッ!』
誰がにゃん子よ!あ…今私猫だったわ。
***
「エンジンが故障しただと?じゃあ代わりの飛行船を用意しろ!」
「それは無理です。今回だって機体を確保するのにかなりの無理を他の出資者様達にしてしまって、もう我々だけでは収拾付かないところまで来ているんです…コリーン様の為だと思い堪えて来ましたが無理なものは無理ですよ!大人しく修理が終わるまで待って下さい!」
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「…それでも無理です。部品が無ければ修理もままなりません。最低でも全ての部品が揃い組み立てに三週間は必要で出発は出来ません。もしそれでも、と仰るなら走行中の安全はこちらは保証出来ませんので目的地まで辿り着けぬ可能性がある事を了承し遺書のご用意を」
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「はあぁ~…分かった分かった。その代わりキッチリ三週間後に出発出来る様にしておくのだぞ?それ以上は流石に待てん!分かったな!」
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***
私の猫化は言っている間に早々に解け、ようやく人語を話せると安心してもう一度残ったコロロコロンを食べさせようとしてくる王子を威嚇しながら真っ直ぐに歩いて行く。バザールを抜けるとそこにはこぢんまりした商店がズラッと建ち並んでいた。
「ここから先はまあ日用品と言うより少し値を張る物が売ってる店が殆どだな」
暫くウインドーショッピングしながら歩くと確かに宝石を使った貴金属やドレス等を扱っている店が増えて来た。更にはこの先王都を輪を描く様に各階級の高い者の領地と屋敷が配置されていると言う。
「そうだ、折角だから何か贈らせてくれ。何が良い?ネックレスとかブローチとか…指輪は…ダイヤが散りばめられたブレスレットなんかどうだ?」
この人は…ホイホイと友達相手に貴金属を買い与えようなんて。それは違うでしょ。
「何もいりません」
「そう言うな。好きな宝石は無いのか?」
「ありません」
「じゃあコリーンはめちゃくちゃ可愛いからフリフリの可憐なドレスはどうだ?ああ、でも妖精と間違えられて妖精界に連れ去られるかもしれないか…どうしよう」
「よくもまあペラペラと訳の分からない事を言ってるんですか恥ずかしい」
「俺はコリーンにミミルキーの件でいつも助けられてるお礼がしたいだけだ。出来れば君が欲しい物を手に入れたい…ん!?それだ!ミミルキーだ」
「え?ミミルキー?」
何か閃いた様でウィンダム王子はダナンさん達を手招きして呼び寄せ、二言三言何か告げた後、突然転移動して姿を消してしまった。
「…えぇ何?」
「一時間程で戻られるとは仰ってられましたが…このままここに居ても仕方がありませんから、良ければ美術館や博物館などの施設をご案内致しますがどうされますか?」
「わぁ!美術館?行ってみたいですっ」
「承りました。ではどうぞ」
そう言うとララさんはクルリと私に背を向けスタンバイ。
ああ…やはりこれか。
「…あ、あの…流石に外では…」
「遠慮は要りません。護衛もし易くなりますし歩くより何倍も早く到着出来ます。さあお乗り下さい」
「でも~うー…(きっとスッゴイ目立つぅ)」
「コリーン様?」(カパッ)
「ヒィッ!わ、分かりましたぁ~っ」
久々のララさん強制ライドオン…あの黒い口に本能が勝てない(泣)
するとダナンさんがニコニコ並走しながら話し掛けて来た。
「これは蛇獣人の子守りの習性でね、親は幼い子を運ぶ時に背に乗せて移動するんです。いや~未来のララの子育てを垣間見れてとっても嬉しいです!」
「え?…子育て…」
つまり私は子ヘビ扱いされていると…なる程?
確かにダナンさんやララさんから見たら小さいかもですが…子ヘビサイズなんだ私。ん?
「蛇獣人さんは…卵生ですか?」
「ええ、卵生です。生まれる前の大きさまで腹の中で育てます。卵が柔らかいので生まれたら直ぐ殻を破って出て来ますけど。あ、キングコブラは蛇の中でも珍しく元々子育てしますよ。雌だけなんですが…この姿の我々は男女でちゃんと家庭を築きます」
「へぇ、そうなんですね。…あ!あの、私お二人が婚約されたのをさっき聞いたばかりで…ご婚約おめでとうございます!美男美女で凄くお似合いだと思います!」
慌てて何とか捻り出した言葉を口にするとみるみるとダナンさんの顔がクシャッと歪んでゆく。えっ!と思った瞬間ポロッと一筋の涙が彼の頬を伝っていった。
「はっ…すみません…。何だか人に改めて言われると…嬉しくて。此処まで来たんだなって。ははっ」
ダナンさんって…ララさんの事本当に好きなんだ…男の人でも泣いちゃうくらいだなんて…そんなに愛されてるなんてララさんが羨ましいな。
「お二人ならきっと良い家庭を作れますよ。ね?ララさん?」
私も嬉しくなってララさんに問い掛けてみる。今はライドオン中なので彼女の美しい黒髪しか見えていないがきっと前から見れば照れてるララさんの顔がそこに…
「チッ」
ピンクに染まる世界が一瞬で白く色を失くした。
誰かの、いや確実に今目の前から舌打ちが聞こえ…
「……あれ?」
***
黒いカラスが一羽大空を飛行していたがクンッと降下を始めた。タッと翼を折りたたみ降り立った場所は男の肩だ。嘴に何かを咥えている。
「あったか?俺も一枚見つけたぞ。よしよしこれで二枚揃ったな」
「カァ」
「うん、どちらも綺麗だ。大きさも丁度良いな。流石はミロ」
「ガガッ」
男はカラスの身体を優しく撫でつつ手の中にあるキラリと光るそれを見つめる。
「彼女は銀髪だから何でも合うし、この柔らかい虹色も似合うだろう」
「カァ!」
「宝石は要らないって言われてしまったからな。押し付けるのは違うだろ?あまり飛ばし過ぎて引かれてしまうのは困る…今はな」
「カァ~」
「ふふ…慎重?俺が?…そうだな、まさか俺が女性相手に贈り物に悩む日が来るとは…もうすっかり諦めていたのにな」
一人で歳を取って孤独に死を待つのだとそう覚悟を決めていた。何度見合いをしたが結局際まで決まり掛けた相手とも破局し、それ以後伴侶となる相手は現れなかった。
姿は上から下まで人型ではあるが彼は獣人だ。まさか種族が違う相手に惹かれるとは思いもしなかった。
「でも彼女と隣り合った時、あのイチゴの様な瞳を食べたいって本能で口にも出ていた。ああ…口説いてる自分にも驚いた…全く気持ちが追い付いてなかったしな。まあ、意味は伝わってなくて怖がられたんだが。それに彼女の驚く顔が見たくてわざわざこれを探しに来てしまう自分が可笑しくて…さ」
それは紛れも無い自覚に変わって行く。
「ああ~参った。スッカリやられてるよな、俺」
遠くを眺めながら可笑しそうに話す男の独白を黙って聞いていたカラスは、スリッと男の顔に頭を擦り付ける。彼は長い間寄り添い共に過ごして来た相棒だ。
「ありがとうミロ。さあ、可愛いあの子の喜ぶ姿を拝みに行こうか。楽しみだ」
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