35 / 50
第35部 fu
しおりを挟む
布団に入って眠っていると、突然目が覚めた。喉が渇いているようだ。背中に奇妙な汗をかいている。意識的にかいたのではない。
起き上がって額に触れる。額は熱く、対照的に掌は冷たかった。発熱しているようだ。またか、とシロップは思った。自分にとっては珍しくないことかもしれない。熱が出ることはあまりないが、特にいつも元気というわけでもない。必ずどこかに不調を感じる。つまりは、それがノーマルということでもある。
「ドコヘイクツモリデスカ?」
机の上からデスクの声が聞こえた。話すのに従って、彼の表面にある赤いランプが暗闇の中で点滅していた。
「公園に行ってくる」シロップは正直に答える。
「ナゼデス?」
「今、行かないといけないから」
熱があるというのに、頭は案外クリアだった。ほかの感覚もしっかりしている。寝間着の上からジャケットを羽織い、手袋とマフラーをつけた。しかし、今は、そんな装備が必要な季節だっただろうか? 分からない。ともかく、外は寒いような気がしたから、そうした。
玄関のドアを開けると、案の定冷たい風が顔に吹きつけてきた。反射的に目を閉じる。空に雲は一つもなく、真空の天空に光の固化した星々が散らばっていた。月は見えない。
カーブした坂道を上り、家々の前を通り過ぎて公園へ向かう。歩くと、歩いた感覚はちゃんと生じた。ここは夢の中ではないようだ。
二車線、計一本の道路。
左右に立ち並ぶ街灯。
丘の上にある公園の入り口に立ち、シロップは眼前に広がるグラウンドを見る。そちらには誰の影も見えない。ここに来る前から分かっていたことだが、ブランコの鎖が擦れる音が聞こえた。見るまでもなく、そこで遊ぶ彼女の存在が認識される。
「押してよ」
シロップが背後に立つと、ルンルンがそう言った。シロップは要求された通りにブランコを押す。繰り返すと、振れ幅の最大値が徐々に大きくなっていき、一定の値に達したところでそれ以上変化しなくなった。
隣に移動して、シロップもブランコに座る。金属音が微かに響く程度に漕いだ。
「ルンルンは、物の怪なの?」シロップは尋ねた。
「そうだよ」シロップの質問が終わる零コンマ二秒先にルンルンが答えた。
「私も?」
「それは知らないけど」
ルンルンは子どものように笑い声を上げている。確かにブランコは楽しそうだった。
シロップの方も楽しくなってくる。
「私、いつか死んでみたいな」シロップは言った。
「死ねば?」ルンルンが応じる。「殺してあげよっか?」
「そう……。いつか、そのときが来たら頼むかも」
起き上がって額に触れる。額は熱く、対照的に掌は冷たかった。発熱しているようだ。またか、とシロップは思った。自分にとっては珍しくないことかもしれない。熱が出ることはあまりないが、特にいつも元気というわけでもない。必ずどこかに不調を感じる。つまりは、それがノーマルということでもある。
「ドコヘイクツモリデスカ?」
机の上からデスクの声が聞こえた。話すのに従って、彼の表面にある赤いランプが暗闇の中で点滅していた。
「公園に行ってくる」シロップは正直に答える。
「ナゼデス?」
「今、行かないといけないから」
熱があるというのに、頭は案外クリアだった。ほかの感覚もしっかりしている。寝間着の上からジャケットを羽織い、手袋とマフラーをつけた。しかし、今は、そんな装備が必要な季節だっただろうか? 分からない。ともかく、外は寒いような気がしたから、そうした。
玄関のドアを開けると、案の定冷たい風が顔に吹きつけてきた。反射的に目を閉じる。空に雲は一つもなく、真空の天空に光の固化した星々が散らばっていた。月は見えない。
カーブした坂道を上り、家々の前を通り過ぎて公園へ向かう。歩くと、歩いた感覚はちゃんと生じた。ここは夢の中ではないようだ。
二車線、計一本の道路。
左右に立ち並ぶ街灯。
丘の上にある公園の入り口に立ち、シロップは眼前に広がるグラウンドを見る。そちらには誰の影も見えない。ここに来る前から分かっていたことだが、ブランコの鎖が擦れる音が聞こえた。見るまでもなく、そこで遊ぶ彼女の存在が認識される。
「押してよ」
シロップが背後に立つと、ルンルンがそう言った。シロップは要求された通りにブランコを押す。繰り返すと、振れ幅の最大値が徐々に大きくなっていき、一定の値に達したところでそれ以上変化しなくなった。
隣に移動して、シロップもブランコに座る。金属音が微かに響く程度に漕いだ。
「ルンルンは、物の怪なの?」シロップは尋ねた。
「そうだよ」シロップの質問が終わる零コンマ二秒先にルンルンが答えた。
「私も?」
「それは知らないけど」
ルンルンは子どものように笑い声を上げている。確かにブランコは楽しそうだった。
シロップの方も楽しくなってくる。
「私、いつか死んでみたいな」シロップは言った。
「死ねば?」ルンルンが応じる。「殺してあげよっか?」
「そう……。いつか、そのときが来たら頼むかも」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる