74 / 255
第8章
第74話 認知・認識は君だけのもの
しおりを挟む
午後の授業が始まった。
教室の中は喧騒で溢れ返っている。授業が始まっても、暫くの間はこんな感じだ。チャイムが鳴ったからといって、それですぐに授業が始まるわけでもない。教師はもう教室に到着していたが、何やら準備をしていて、まだ始められそうではなかった。
なんとなく、窓の外を眺める。
陽光が目に眩しかった。窓硝子を透過しても、その力が弱まることはない。熱は幾分緩和されるが、光に関しては直接浴びるのと大差ないように思えた。
光の正体は波らしい。こういう説明では分かりにくいが、しかし、それ以上言えないので仕方がない。つまり、光はそれ自体が物質ではなく、物質の運動だということだ。物質がなければ光も生じない。その物質の動きを、人間の目という器官で受容したときに、光として認識される。音についても同じことがいえる。
自分の見ている世界は、本当にこの通りではないかもしれない、と月夜は思った。以前にも考えたことの再演。すでに通った道をもう一度辿る不自然な行為。そうやって思考に筋道が生まれ、繰り返すことでどんどん深く刻み込まれていき、いつしかそれが信念のようになる。
世界が見ている通りではないというのは、おそらく正しい。注釈付きで、「人間にとっては」とするべきだろう。あくまで人間にとっては、世界はこのように見えるが、ほかの生き物には違って見えるに違いない。そして、人間の中でも多少のずれはあるだろうし、その人の置かれている状況によっても色々な見え方になるはずだ。
では、世界そのものはどうなっているのだろう?
世界を観察するには、必ず何かしらの主観に身を置かなくてはならないわけで、結局のところ、世界そのものの姿を見ることは不可能、という結論に辿り着く。しかしながら、そのように考えることを可能にしているのは、人間が言語というツールを持ち合わせているからであり、今考えたことも、実は人間の主観の範疇に収まってしまっている。
たとえ神になることができても、今度は神の主観に収まることになる。
あるいは、それをも超越する者を、神と呼ぶのだろうか?
と、
言語を用いて考える。
教室の喧騒が徐々に静まりつつあった。窓の外に向けていた目を、月夜は前方に戻す。
「はい、それでは授業を始めます」教師が言った。「今日も法律に関する授業です」
教室の中は喧騒で溢れ返っている。授業が始まっても、暫くの間はこんな感じだ。チャイムが鳴ったからといって、それですぐに授業が始まるわけでもない。教師はもう教室に到着していたが、何やら準備をしていて、まだ始められそうではなかった。
なんとなく、窓の外を眺める。
陽光が目に眩しかった。窓硝子を透過しても、その力が弱まることはない。熱は幾分緩和されるが、光に関しては直接浴びるのと大差ないように思えた。
光の正体は波らしい。こういう説明では分かりにくいが、しかし、それ以上言えないので仕方がない。つまり、光はそれ自体が物質ではなく、物質の運動だということだ。物質がなければ光も生じない。その物質の動きを、人間の目という器官で受容したときに、光として認識される。音についても同じことがいえる。
自分の見ている世界は、本当にこの通りではないかもしれない、と月夜は思った。以前にも考えたことの再演。すでに通った道をもう一度辿る不自然な行為。そうやって思考に筋道が生まれ、繰り返すことでどんどん深く刻み込まれていき、いつしかそれが信念のようになる。
世界が見ている通りではないというのは、おそらく正しい。注釈付きで、「人間にとっては」とするべきだろう。あくまで人間にとっては、世界はこのように見えるが、ほかの生き物には違って見えるに違いない。そして、人間の中でも多少のずれはあるだろうし、その人の置かれている状況によっても色々な見え方になるはずだ。
では、世界そのものはどうなっているのだろう?
世界を観察するには、必ず何かしらの主観に身を置かなくてはならないわけで、結局のところ、世界そのものの姿を見ることは不可能、という結論に辿り着く。しかしながら、そのように考えることを可能にしているのは、人間が言語というツールを持ち合わせているからであり、今考えたことも、実は人間の主観の範疇に収まってしまっている。
たとえ神になることができても、今度は神の主観に収まることになる。
あるいは、それをも超越する者を、神と呼ぶのだろうか?
と、
言語を用いて考える。
教室の喧騒が徐々に静まりつつあった。窓の外に向けていた目を、月夜は前方に戻す。
「はい、それでは授業を始めます」教師が言った。「今日も法律に関する授業です」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる