舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第10章までのあらすじ

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 高校生になった暗闇月夜は、当然ながら学校に通うようになった。高校生になったのに、学校に通わないというのは、高校生というレッテルだけあれば良ということだから、ペーパードライバーみたいなものだろう。しかし、現代ではそうしたレッテルを所持していることが、将来のために重要だとされている。

 さっそく話が脱線したが、実は脱線するほど話はしっかりしていない。今のところ、彼女の周りではこれといって目立った事件は起こっていない。事件などというと、如何にもミステリーみたいな雰囲気を醸し出してしまうが、この物語はミステリー、つまり探偵小説の類ではない。

 無理矢理に特異な事象と思われるものを引き出してみれば、彼女の知り合いには小夜という不思議な少女と、フィルという不思議な黒猫がいる、ということが挙げられるだろうか。そして、真昼という、これまた不思議な少年もいる。ただし、彼らは物語の上で別段重要な役割は担っていない。ただ、月夜にとってどうかは分からない。彼女にとっては数少ない知り合いだから、もしかすると、何らかの特別な感情を抱いているかもしれない。特別な感情というのはよく分からない表現だが。

 さらに、もっと頑張って、ほかに特異な事象と呼べるものがあるだろうかと考えてみると、月夜の自宅の周囲で、同様のタイプの皿が幾枚も見つかった、ということが挙げられるだろうか。しかし、爆弾が設置されていたとか、まきびしが撒かれていたというのと違って、玄関を出た先に皿が落ちていても、さほど困ったことにはならない。ご近所の視線を集めることにはなるかもしれないが、月夜は日常的に他者の視線を感じることがないので、それで勘定が合うといえばそれまでだ。

 本当にどうでも良いこととして、月夜は最後に不思議な少女と出会う。この不思議な少女というのは、小夜のことではないし、自分自身の中に隠れていた、新たな自分と出会ったのだというような、自己啓発本の背表紙に書かれているような内容を意味するものでもない。

 月夜はまだ死なないので、物語は続いていくものと思われる。

 その前に、私が死んでしまったらどうもこうもないのだが……。
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