150 / 255
第15章
第149話 突然憑依
しおりを挟む
黒い靄のような塊があった。それは奇妙に蠢いて、己の在り様を吟味しているように見える。部分的に顔や腕のような形が見えた。
「月夜?」黒い塊が首を傾げるような動きをする。
「……何?」月夜は応える。
「落ちたよ、それ」
黒い塊が腕を伸ばして、月夜が手から離したビニール袋を指さす。月夜は一度屈んでそれを拾い、もう一度正面の塊に目を向けた。
「……ルゥラ?」
「何?」
「皿を生み出したのは、貴女?」
「皿?」
「街や、それに、ここにも、沢山ある」
黒い塊は周囲に目を向ける。それから少し驚いたように声を上げた。
「……本当だ」
「ルゥラが生み出したんじゃないの?」
「私、知らないよ」黒い塊が首を振る。「でも、これができるのは私で……」
「月夜、離れた方がいい」足もとにいるフィルが声を上げた。
「なぜ?」
「いいから!」
突然、黒い塊が勢いを伴って爆ぜ、月夜の所へ激しく迫ってきた。月夜は咄嗟に後ろに身を引き、把手を掴んでドアを閉めようとする。金属製の可動部がぎしぎしと音を立てた。外れそうなほど木板が何度も捩れる。
室内から笑い声。
知らない声だった。
怒号のように覇気に満ちた声が徐々に高くなり、やがて楽しそうな笑い声になった。室内で何かが暴れている。ドアの動きがなくなった代わりに、振動が床を伝って月夜の足もとまで伝わってきた。皿の割れる音。砕けた陶器の破片がドアと床の隙間からこちらへ飛び出してくる。
一通り物音がしなくなってから、月夜はドアを開けた。皿の破片に邪魔をされて開けるのが大変だったが、どうにか向こうへと押しやる。摩擦で床が傷ついたかもしれない。
部屋の中央にルゥラが横たわる様が見えた。
彼女は口を少しだけ開いたまま、目を閉じて身動きをしない。
俯せになったまま、背中が微妙に上下運動をしていた。
彼女のもとへ駆け寄ろうと踏み出したとき、ドアの向こうから人影が姿を現した。
月夜は強引に首もとを掴まれる。
そのまま何度か前後に揺すられた。
「HAHAHAHAHA !」
わざとらしい笑い声。伸びた爪が首筋に食い込んで、血が滲み出るのが分かった。
「凄い力じゃないか」前後に揺する動作を唐突に止めて、大きな瞳が月夜を覗き込んだ。「もう少しで、殺してしまうところだったよ」
「月夜?」黒い塊が首を傾げるような動きをする。
「……何?」月夜は応える。
「落ちたよ、それ」
黒い塊が腕を伸ばして、月夜が手から離したビニール袋を指さす。月夜は一度屈んでそれを拾い、もう一度正面の塊に目を向けた。
「……ルゥラ?」
「何?」
「皿を生み出したのは、貴女?」
「皿?」
「街や、それに、ここにも、沢山ある」
黒い塊は周囲に目を向ける。それから少し驚いたように声を上げた。
「……本当だ」
「ルゥラが生み出したんじゃないの?」
「私、知らないよ」黒い塊が首を振る。「でも、これができるのは私で……」
「月夜、離れた方がいい」足もとにいるフィルが声を上げた。
「なぜ?」
「いいから!」
突然、黒い塊が勢いを伴って爆ぜ、月夜の所へ激しく迫ってきた。月夜は咄嗟に後ろに身を引き、把手を掴んでドアを閉めようとする。金属製の可動部がぎしぎしと音を立てた。外れそうなほど木板が何度も捩れる。
室内から笑い声。
知らない声だった。
怒号のように覇気に満ちた声が徐々に高くなり、やがて楽しそうな笑い声になった。室内で何かが暴れている。ドアの動きがなくなった代わりに、振動が床を伝って月夜の足もとまで伝わってきた。皿の割れる音。砕けた陶器の破片がドアと床の隙間からこちらへ飛び出してくる。
一通り物音がしなくなってから、月夜はドアを開けた。皿の破片に邪魔をされて開けるのが大変だったが、どうにか向こうへと押しやる。摩擦で床が傷ついたかもしれない。
部屋の中央にルゥラが横たわる様が見えた。
彼女は口を少しだけ開いたまま、目を閉じて身動きをしない。
俯せになったまま、背中が微妙に上下運動をしていた。
彼女のもとへ駆け寄ろうと踏み出したとき、ドアの向こうから人影が姿を現した。
月夜は強引に首もとを掴まれる。
そのまま何度か前後に揺すられた。
「HAHAHAHAHA !」
わざとらしい笑い声。伸びた爪が首筋に食い込んで、血が滲み出るのが分かった。
「凄い力じゃないか」前後に揺する動作を唐突に止めて、大きな瞳が月夜を覗き込んだ。「もう少しで、殺してしまうところだったよ」
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる