舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第20章

第192話 ( )

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「私は、どうするのが正解だった?」正面に立つルゥラに向かって、月夜は尋ねる。

「正解?」ルゥラはまた首を傾げた。「どうするのも正解ではないよ。大人しく、殺されればよかったんだよ」

「それは、誰にとっての正解?」

「私にとっての」ルゥラはくすくすと笑う。「当たり前じゃん。月夜、本当にお馬鹿さんなんだね」

「そうかもしれない」

「認めればいいってもんじゃないよ」

「可能性が有ることを認めただけで、私が本当に馬鹿かどうかは分からない」

「そういう言い方が、もうお馬鹿さん」

 背丈の関係で、ルゥラが近づくほど、彼女に下から覗き込まれるようになる。彼女の目は、いつか見た暖かさに包まれたものではなく、どこか冷酷さを纏っているように見えた。チープな述べ方だが、そうとしか表現できない。驚異となりえるものに種類はない。喜ばしいもの、恐れるべきものは、いつもシンプルな形をしている。おそらく、その種の感情が原初的なものであることに起因しているだろう。

 月夜を囲う皿のすぐ傍に立ち、ルゥラはじっとこちらを見つめてくる。

 月夜は、手を伸ばして、彼女を抱き締めたくなった。

 唐突な衝動。

 しかし、皿によって形成された円の外に腕を出すことはできない。

「さて、どうしようかな」月夜の周りをゆっくりと歩きながら、ルゥラが言った。「ここまで持ち堪えたんだから、すんなり殺してしまうのは、勿体ないよね」

「殺したければ、殺せばいい」月夜は応じる。「でも、私も生き物で、死ぬのは怖いから、できる限り抵抗する」

「できないよ」ルゥラは歩きながら一回転する。スケーターのように華麗な身振りだった。「だって、ほら。月夜、今、動けないんだよ。外に出られないんだから」

「方法はあるはず」

「ああ、そうか。フィルだね」

 一瞬、背後から強い衝撃。

 何が起きたのか分からないまま、月夜は前方につんのめる。しかし、皿の外には出られないから、目に見えない何かに跳ね返されて、受けた衝撃のまますぐに後方に押し戻される。

 腕の中からフィルが消えていた。

 痛みを無視して後ろを振り返る。

 焦点がすぐに合わない。

 前方に、黒い塊が浮かんでいる。

「邪魔しちゃ駄目だよ、フィル」その向こうでルゥラが笑った。
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