舞台装置は闇の中

羽上帆樽

文字の大きさ
202 / 255
第20章までのあらすじ

<<log2>>

しおりを挟む
 高校一年生の春、暗闇月夜は一人の少女と出会った。彼女はルゥラといい、自らが物の怪であることを自覚していた。一方、月夜の知り合いである小夜は、物の怪が月夜を殺すことを目的としていることを、予め伝えていた。そうであるにも関わらず、月夜はルゥラを自分の傍に置くことにする。つまり、小夜の忠告を無視したことになる。

 このように記述すれば、月夜が判断力のない、どうしようもない人物のように聞こえるが、人の判断というものは、その時、その場所の状況に深く依存する傾向があり、故に彼女がそのような判断をしたことに、彼女にすべて原因があるとはいえない。

 そもそも、人は環境に属するとともに、環境を形成する要素ともなりうる。したがって、環境から影響を受けるとともに、環境に影響を与える。その繰り返しが生じることで、人は環境を変え、それによって、自分自身をも変えていく。

 要するに、何が言いたいかというと(別に何も言いたくはないのだが)、月夜がとった行動は、論理的かつ明晰な判断のもとに成されたものだったが、それでも、このような結果が導かれた可能性も、ないとはいえないということだ。

 結果というものは、文字通り結果であって、それが実際に生じるまではどんなものか分からない。もちろん、ある程度の予測はできるが、予測が外れることはしばしばある。それは、人は思考する際に、その判断の基準となるフレームを設けるのに対して、人が属する環境にはフレームなどなく、すべての要素が含まれているからだ。この大小関係がある限り、人には現実のすべてを把握することはできず、それによって、予想外の結果が生じる可能性がいつもつきまとう。

 さて、話をもう少し生産的な方に寄せると、ある結果が得られたら、今度はその結果をどのように活かすかが重要となる。つまり、フィードバックをするということだ。これをしない限り、人は成長しないというのが、現代における一般的な解釈となっている。

 成長することを望んでいるか否か、という問題は別として、今回の件で何らかの結果が得られたわけだから、月夜は何らかのフィードバックを行うはずだ。それによって、自らの行動が軌道修正されるかどうかも、また別問題だが、しかし、何も変わらないということはないだろう。

 月夜は、まだ生きているわけだから、生きている限り、明日はやって来る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...