舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第22章

第214話 出るか否か

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 手もとが霞んで見えたかと思うと、身体が物干し竿にもたれかかるのが分かった。しかし、もたれかかろうと思ってもたれかかったわけではないので、多少の驚きが生じる。自分の身体に制御が利かないことに、頭の中の一部がパニックに陥っていた。

 持っていた洗濯物が宙に舞い、洗剤の匂いと、水分をまき散らしながら、ゆっくりと地面に向かって落ちていく。いや、洗濯物は水分を含んでいるから、本当はそれほどゆっくりとは落ちないはずだ。つまり、そう感じているだけで、そう感じるのは、自分の側に原因があるからにほかならない。

 身体がその場に座り込むのが分かった。関節の力が抜け、地面に両脚がつく。手の甲が地面に触れた。冷たい土の感触が伝わってくる。

 こういう状態を、朦朧としているというのかな、と客観的な分析をする自分がいることを確認。

 そして、その客観的な分析をしている自分がいることを確認しているのとは、別に客観的な分析をしている自分がいることを確認。

 感じるのは、温度、そして、匂い。

 浴びるように日差しを受けているはずなのに、刺すような痛みは感じられなかった。むしろ全体的には心地良くさえある。

 目を閉じて、その心地良さを味わおうと試みる。

 しかし、それを待ち受けていたかのように、意識が遠のくのを感じた。

 遊離。

 幽離。

 ……。

 ……。

 ……。

 >

 >

 >

 >?

 >?

 >?

 >月夜?

 >月夜?

 >月夜?

 >大丈夫か、月夜?

 >大丈夫か、月夜?

 >大丈夫か、月夜?

 >大丈夫か、しっかりするんだ、月夜?

 >大丈夫か、しっかりするんだ、月夜?

 >大丈夫か、しっかりするんだ、月夜?

 >大丈夫か、しっかりするんだ、返事をしろ、月夜?

 >大丈夫か、しっかりするんだ、返事をしろ、月夜?

 >大丈夫か、しっかりするんだ、返事をしろ、月夜?

 全体的には、彼女の身体は通常に近い状態だった。通常ではないのは意識の方だ。ハードの問題ではなく、ソフトの問題ということになる。しかし、人の場合、ハードとソフトの紐付けが強固なので、ソフトのみを安直に操作することができない。つまり、意識を操作したければ、必然的に身体も操作しなくてはならない。

 その身体が、何者かにひっかかれた。

 どこだ?

 腕。

 痛み。

 自分の内側にあるものが、外側へと漏れ出す危機を感じる。

 目を開ける。

 覚醒は加速度的に行われた。

 行った主体は誰か?

「月夜、しっかりしろ」

 月夜は、目の前に佇む黒猫を抱き締める。
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