舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第26章

第251話 暗い沙汰

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 ルーシに対象を眠らせる力があることを見抜いたのは、フィルだった。月夜にはほかに協力者はいないので、必然的にそういうことになる。小夜も協力者だが、彼女には最近会っていない。

 ルーシは、対象を眠らせ、それから、もう一人の彼でもって対象を殺す。どちらか一方の彼では成り立たない。日中に活動する方の彼が眠らせる役割を務め、夜間に活動する方の彼が殺す役割を務める。

 対象を眠らせられる範囲は、制限がないわけではないが、それでも広大だ。だから、月夜も何度も眠りに落ちた。彼の力はそれなりに影響力を持っているが、対象を限定することができる。したがって、月夜が眠ったからといって、その周囲にいるほかの者まで眠ってしまうとは限らない。

 またまたソファに座り、月夜はフィルからそんな話を聞いた。フィルは、月夜の様子がおかしいことに気がついていた。一緒にいるのだから当然だ。しかし、月夜は自分の様子がおかしいことに気がついていなかった。自分で自分は見えないのだから当然だ、と丸め込むことはできるだろうか。

 もう夜だった。

 眠らなければならない。

 眠らないと、ルーシに入れ替わりが生じる。もう一方の彼が出てくれば、また危ない状況に陥るに違いない。

「自覚はない」リビングの端の方に立ったままの姿勢で、ルーシが言った。「どうして、眠らせる?」

「今言ったような理由で、だ」フィルが応じた。

「確信は?」月夜が尋ねる。

「お前が身をもって分かっているだろう」

 そうかもしれない、と月夜は思う。

 家には布団が一つしかないので、月夜はルーシにその使用を勧めた。ルーシに、なぜか、と問われたので、眠るためだ、と答えると、彼は素直に従ってくれた。

「君も一緒?」

 問われて月夜は首を振る。

「なぜ?」

「三人では、狭いから」

 三人、という言葉を聞いて、ルーシがフィルに目を向ける。

「もちろん、俺も含まれる」フィルが言った。「お前より先客だからな」

「では、君はどこで眠る?」ルーシが月夜に尋ねる。

「ここで」そう言って、月夜は自分が座っているソファを示す。

 十数秒間、ルーシは立ったまま硬直していたが、やがて脚を動かして、リビングから出ていった。フィルが彼についていく。

 途中でフィルが振り返り、月夜に言った。

「作戦変更だ」

 二人がいなくなってからも、作戦変更、の意味を月夜は一人で考えた。フィルが言いたいこと、したいことは、彼女にはよく分からない。けれど、まったく分からないわけではない。少しだけ分かって、少しだけ分からない。あとの残った部分はどういう属性を帯びているのだろう、と少しだけ考えてみた。
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