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溺愛夢中
再会の日
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「見て、エディ。可哀想…」
「本当だ」
庭に咲く小さな野花が踏みつけられて潰れているのを見つけたカロリーナが、その様子に心を痛めている。
潰れた野花よりも、心を痛めたカロリーナの為にエドワードは惜しげもなく魔法を使い甦らせた。
「わぁ!凄いわ、エディ」
「君の笑顔が見られるならいくらでも」
手を繋ぎ、見つめ合って微笑み合う幼き婚約者のふたりと、そんなふたりを嬉しそうに見守る二組の夫婦。
「仲良くなれて良かったわ」
「すっかり夢中だな」
公爵夫妻がそう言えば、旧友の侯爵夫妻も頷く。
「いつもは人見知りするのよ」
「彼の優しい人柄故だろう」
何はともあれ、無事に顔合わせが済んだことに安堵する。この二組の夫婦も幼なじみ同士。互いに政略結婚ではあるものの、幼き頃から思い合い結ばれた。自分達の子供にも、同じような気持ちが育まれれて愛し合う仲になればと願っていたのだ。
そんなふたりに前世の記憶があることを、大人たちは知らない。辛く悲しい別れをしたことを、優しい両親たちに伝えることは出来ないと思っていた。
「ねぇ、カロリーナ」
「はい」
「君を必ず幸せにする」
「はい。一緒に幸せになりましょう」
柔らかく笑うカロリーナ。
この笑顔に再び巡り逢うことを願った。
300年。
それは長く苦しい道のりで、様々な環境に生まれてはカロリーナを探し求める年月だった。
何度か貴族に生まれ、政略結婚を推し進められて逃げられない時には自害した事もある。
カロリーナ以外には触りたくない。
カロリーナ以外とは結婚したくない。
探し続け、求め続けたひとりの女性。
今世で自分の家督がボアルネだと知った時には、ひとり快哉をあげ、文字を読めるようになってすぐに貴族名鑑を読み漁り、そこにアヴェーヌと記された家督を見つけカロリーナの名を目にした時には涙を流した。
だけど深窓の令嬢と呼ばれるカロリーナ。
その姿を見た者はなく、貴族名鑑にすら絵姿はない。逸る気持ちを抑え、だがきっとその転生を迎えたのだと思った。
そして迎えた10歳。
自分には政略結婚として結ばれた婚約者がいると両親から伝えられた。また別の女性だったら…そう思い不安に襲われるエドワードに告げられたのは、アヴェーヌ家の令嬢カロリーナとの婚約だった。
「ずっと屋敷に閉じ籠っていたの。お母様から誘われるお茶会も、貴族名鑑に載せる為の絵姿も、何もかもお断りしてきたわ」
「カロリーナ…」
「婚約者がボアルネ家のエドワード様だと聞いて嬉しかった」
あなたに逢いたかった…と微笑むカロリーナ。
柔らかな場所で眠り続ける意識の中、祈り続けた。
大好きな彼に逢いたい。
もう一度愛し合いたい。
やがて光に包まれ新たな生を賜った。
名はカロリーナ・アヴェーヌ。
貴族名鑑でエドワードの絵姿を見つけた時は、心が震え涙した。
エドワード以外、誰も私を見つけないで。
エドワード以外、誰も私に触らないで。
物心がついた頃から、家族や使用人以外との接触を避けて生活を送ってきた。
そして迎えた10歳。
自分に宛がわれた婚約者、エドワード・ボアルネ。
待ち望んだ愛する彼との再会に胸を弾ませる。
けれどエドワードが前世のエドワードなのか分からない。そうだとしても、記憶を残しているとは限らない。
私を覚えていなかったら?
私を愛してはくれなかったら?
様々な不安を抱えて臨んだ顔合わせの日。
目の前には前世の記憶と変わらぬ姿のエドワードがいる。自分をじっと見つめ…その目には今にも溢れそうなほどの涙を湛え、こちらに手を伸ばしてきた。
間違いない。
彼は私の愛したエドワードだ。
そう確信して伸ばされた手をとり包みこみ、彼のことを「エディ」と呼んだ。
かつて何度も呼んだ彼の愛称。
その名で呼ばれた彼は瞠目して破顔し、優しく大好きな声で「リーナ」と言った。
「あなたを愛してます、エドワード」
「カロリーナ、君に生涯の愛を捧げる」
300年振りに重なる唇。
その先を前世の記憶として知るふたりだが、如何せん10歳。知識はあれど、まだ早いと分かっている。
「早く君と愛し合いたい」
「私もよ、エディ」
子供らしく、可愛らしく。
ふたりは唇を重ね合わせる。
もう一度ふたりで生きる事が出来る喜び。
その思いでいっぱいのふたりは法悦に浸りながら、啄むような口付けを何度も何度も繰り返した。
「本当だ」
庭に咲く小さな野花が踏みつけられて潰れているのを見つけたカロリーナが、その様子に心を痛めている。
潰れた野花よりも、心を痛めたカロリーナの為にエドワードは惜しげもなく魔法を使い甦らせた。
「わぁ!凄いわ、エディ」
「君の笑顔が見られるならいくらでも」
手を繋ぎ、見つめ合って微笑み合う幼き婚約者のふたりと、そんなふたりを嬉しそうに見守る二組の夫婦。
「仲良くなれて良かったわ」
「すっかり夢中だな」
公爵夫妻がそう言えば、旧友の侯爵夫妻も頷く。
「いつもは人見知りするのよ」
「彼の優しい人柄故だろう」
何はともあれ、無事に顔合わせが済んだことに安堵する。この二組の夫婦も幼なじみ同士。互いに政略結婚ではあるものの、幼き頃から思い合い結ばれた。自分達の子供にも、同じような気持ちが育まれれて愛し合う仲になればと願っていたのだ。
そんなふたりに前世の記憶があることを、大人たちは知らない。辛く悲しい別れをしたことを、優しい両親たちに伝えることは出来ないと思っていた。
「ねぇ、カロリーナ」
「はい」
「君を必ず幸せにする」
「はい。一緒に幸せになりましょう」
柔らかく笑うカロリーナ。
この笑顔に再び巡り逢うことを願った。
300年。
それは長く苦しい道のりで、様々な環境に生まれてはカロリーナを探し求める年月だった。
何度か貴族に生まれ、政略結婚を推し進められて逃げられない時には自害した事もある。
カロリーナ以外には触りたくない。
カロリーナ以外とは結婚したくない。
探し続け、求め続けたひとりの女性。
今世で自分の家督がボアルネだと知った時には、ひとり快哉をあげ、文字を読めるようになってすぐに貴族名鑑を読み漁り、そこにアヴェーヌと記された家督を見つけカロリーナの名を目にした時には涙を流した。
だけど深窓の令嬢と呼ばれるカロリーナ。
その姿を見た者はなく、貴族名鑑にすら絵姿はない。逸る気持ちを抑え、だがきっとその転生を迎えたのだと思った。
そして迎えた10歳。
自分には政略結婚として結ばれた婚約者がいると両親から伝えられた。また別の女性だったら…そう思い不安に襲われるエドワードに告げられたのは、アヴェーヌ家の令嬢カロリーナとの婚約だった。
「ずっと屋敷に閉じ籠っていたの。お母様から誘われるお茶会も、貴族名鑑に載せる為の絵姿も、何もかもお断りしてきたわ」
「カロリーナ…」
「婚約者がボアルネ家のエドワード様だと聞いて嬉しかった」
あなたに逢いたかった…と微笑むカロリーナ。
柔らかな場所で眠り続ける意識の中、祈り続けた。
大好きな彼に逢いたい。
もう一度愛し合いたい。
やがて光に包まれ新たな生を賜った。
名はカロリーナ・アヴェーヌ。
貴族名鑑でエドワードの絵姿を見つけた時は、心が震え涙した。
エドワード以外、誰も私を見つけないで。
エドワード以外、誰も私に触らないで。
物心がついた頃から、家族や使用人以外との接触を避けて生活を送ってきた。
そして迎えた10歳。
自分に宛がわれた婚約者、エドワード・ボアルネ。
待ち望んだ愛する彼との再会に胸を弾ませる。
けれどエドワードが前世のエドワードなのか分からない。そうだとしても、記憶を残しているとは限らない。
私を覚えていなかったら?
私を愛してはくれなかったら?
様々な不安を抱えて臨んだ顔合わせの日。
目の前には前世の記憶と変わらぬ姿のエドワードがいる。自分をじっと見つめ…その目には今にも溢れそうなほどの涙を湛え、こちらに手を伸ばしてきた。
間違いない。
彼は私の愛したエドワードだ。
そう確信して伸ばされた手をとり包みこみ、彼のことを「エディ」と呼んだ。
かつて何度も呼んだ彼の愛称。
その名で呼ばれた彼は瞠目して破顔し、優しく大好きな声で「リーナ」と言った。
「あなたを愛してます、エドワード」
「カロリーナ、君に生涯の愛を捧げる」
300年振りに重なる唇。
その先を前世の記憶として知るふたりだが、如何せん10歳。知識はあれど、まだ早いと分かっている。
「早く君と愛し合いたい」
「私もよ、エディ」
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