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我慢比べ
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朝目が覚めるとやっぱりロベルトはいなくて、昨夜いた場所…そこに、あるはずのない温もりを求めて縋りついた。
「…ロベルト……」
「おはようございます」
僅かに残っていた香りに悶えていたら、ノックもなしにロベルトが入ってきた。それ、私だから許されるって分かってやってるよね?やたら満面の笑みなのは私が何をしていたのか分かっているからなのよね?
そんな爽やかな笑顔を見せられても、簡単には起きてあげないんだから。私は寝起きの悪い女なんだからねっ。……もう少し香りを堪能したいし。匂いがなくなるまでクンクンしてやる!と、シーツに顔を埋めた。
「…………ロベルト」
「はい」
「使っているコロンと同じものを寄越しなさい」
「畏まりました」
貴方が尻尾をブンブンしていることなんて、見なくとも分かるわ。声が弾んでいるもの。
「……お起きにならないんですか?」
ふんっ、起きてなんかあげないんだってば。まだまだこの匂いを堪能してやる。
「間もなく朝食のお時間ですよ」
「あっ…………何するのよ、邪魔しないで」
いつまでもクンクンしていたら、腰に手を回されヒョイッと持ち上げられてしまった。こんな対策もあるのね。でもシーツは離してあげない!
「食事はきちんとお取りくださいね、これ以上細くなったら折れてしまいます」
「そんな簡単に折れないわよ」
むしろコルセットの締め付け地獄に耐え抜いている、わりと丈夫な腰だわ。どんなに激しい房事でも耐えられてよ?
「……こんなに細くて…コルセットの必要があるんですか?」
「嗜みですもの、仕方ないわ。それよりおろしてくれる?まだ堪能したいの」
「本体がいるのに?」
あら。確かに、香りを強く感じると思った。つけてる本人がいるからだったのね、うっかりだわ。
「じゃぁ、ロベルトから直接嗅ぐ。おろして」
途端におろされ、ビシィッ!と尻尾を振りながら直立するロベルトの首筋に鼻先を寄せて、香りを堪能する。……いい匂い。
ロベルトは背が高いから爪先立ちにならないといけなくて、そうなるとふらつくのを支える為に、逞しく鍛えられた胸元に手を添えるしかないの。致し方ないのよ?たまたまそこにあるのが胸板なだけだわ。
「……………ふぅ…満足した」
「っ……それはようございました」
ふふんっ。さりげなく首筋に唇をつけてやった。
「さぁ、行きましょうか」
「…………………はい」
ロベルトは私と常に行動を共にする為、食事は一緒にとることになっている。食堂について食事をとり終わるまで、とても熱い視線を受け続けた。
我慢比べね。負ける気なんてしないけれど。
その後、部屋に戻って身仕度を始める為にロベルトは退出したのだけれど…些か早足だったのを私は見逃さなかった。
まずは一勝ゲットね。
******
ロベルトと繰り広げた攻防をエルザに話したら、あまり苛めてやるなと怒られたわ。いえ、正確には窘められた。
「殿方は色々と大変なのですから、あまり強い刺激をお与えになるのはお控えください」
外部の目がなければ、こうして気兼ねなくロベ トについて話すことが出来る。外では特大の猫を被っているから疲れるのよ。とはいえ、私がロベルトに夢中だという噂は既に広がり始めているけどね。発信元?それは企業秘密だわ。
さてさて。エルザに叱られ、ぶすっとしながら繊細な細工のような編み込みを施してもらっていると、ロベルトご帰還。
おやまぁ……スッキリした顔して。
そして、相変わらずノックなしだけれどエルザすら気にしていない。これは…イケる?援護してくれてる?エルザだけには、昔から散々ロベルトについて語ってきたものね。
「出来上がりました」
「素敵…ありがとう、エルザ」
「では、準備をして参ります」
エルザは一礼をして、パタン…と扉を閉めた。えぇ、完全に閉めましたわ。ありがとう。
「よくお似合いです」
「ありがとう。貴方も素敵よ」
騎士仕様のロベルトは、長い髪を高い位置でひとつに縛っている。動くたび、細い金糸が揺れてとても綺麗で…いつまでも触っていられる。
「誰にも触らせてはダメよ」
「仰せの通りに」
ロベルトの髪を指でくるくる弄っていると、ポケットから取り出した小瓶の中身を自分の手首に塗り、私の首筋に擦り付けてきた。
「…………いい香りだわ」
目を閉じてゆっくり呼吸をすれば、その香りが私のものなのか、それともロベルトのものなのか分からなくなる。まるでひとつに溶け合ったみたいで気持ちいい…………やだ、私まで変態だわ。
とか思いつつ、いつまでもやめないロベルトの戯れを享受していると、ノックの音。
「ご準備が整いました」
「今行くわ」
最後にロベルトへ近付き…思い切り香りを吸い込気み、ふうっ…と息を吐いて気合いをいれた。
******
執務室のテーブルに書類を広げ、キャスト候補を絞る為の話し合いが始まった。集まったのはざっと百三十名。連日の面接で声を枯らした事が、今となっては既に懐かしい。
「予定通り、男性達の好みにあたる者にはその数を記してあります」
エバンスが並べた絵姿の右下には、それぞれ数字が記されていた。見た目は大切なので、絵姿だけでどの女性と食事をしたりお酒を飲みたいのかを選んでもらった結果と言うことになる。
この屋敷だけでは大した人数にならないから、手分けしてあちこち派遣して得た貴重なデータであり、収集する際には他の人が誰を選んだのか分からないように徹底してもらっていた。
「ダントツの人気者から、少数派まで…予定通りね。ちなみにロベルトも投票したの?」
「俺はクリスティア様の騎士なので致しません」
「私の騎士でないならするの?」
「クリスティア様の絵姿があるのならば」
「そう、それなら無いから仕方ないわね」
私とロベルトのやり取りに驚く者はこの屋敷にはいない。それだけ近しい人を集めた。そして、広げt…うぉっほん…広がる噂は放置したまま、まずは屋敷内にいる使用人達へのアピールから始めることにしたわ。身近な人からの話であれば、より信憑性が増しますもの。いえ、噂は自然と広がっているだけですわよ?ウフフ♡
(使えない)王太子の婚約者などという有り難い肩書きをいただいてから、ずっと我慢してきたの。だからもうしない。
******
「お前みたいに真面目で堅苦しい女は嫌いだ。俺はアンジェリカと結婚する!婚約破棄だ!!」
定期のお茶会でそう声を張られた時は、思わず涙を流してしまった。だって嬉しかったんだもの。
「な、なぜ泣く!……まぁ、なんだ…そんなに俺の事が好きだと言うなら、おま────」
「なりませんわ!!それはなりません!真実の愛を貫きたいお気持ち、とてもとても分かります」
「そ、そうか?分かっ────」
「お手続きは私が済ませておきますから、殿下は何一つご心配なさらずお過ごしください。それでは、やる事がありますので失礼致します」
「ちょ、クリスティア、ま──────」
何か言っていたけれど、そんなの無視して足早に与えられている自室へと向かった。急いでお父様に手紙を書かなくてはならない。
「お嬢様!?」
「エルザ、すぐにランドルフとロベルトを呼んできてちょうだい」
「まさか…っ、畏まりました!」
縺れそうになる足を叱咤しながらなんとか自室へと辿り着き、予定より早い戻りに驚くエルザに指示を飛ばすと、全速力で手紙を書いてお父様の執務室まで届けるよう従者に渡した。
お返事を待つ間、実家や親友から贈られてきた宝物を鞄にポイポイ入れていく。部屋を変われと言われたら持ち出せるようにしておかないと、盗まれたら困る。ちなみに王太子から義務的に贈られたものは不要なのでどうぞ。
順調に仕分けを続けていたら、扉が大きな音をたててお父様が入ってきた。
「クリスティア!!」
「お父様!!」
ヒシッ…と抱き合い、これまでの苦労を無言のまま労い合う。長かったわ。苦節十二年…漸くこの時を迎えることが出来た。
「すぐに陛下へ話をつけてくる」
「お願い致します」
しっかりと頷き合い、駆け足で立ち去るお父様を見送ってから仕分けに戻り、そうこうしている内に再び大きな音と共に扉が開いた。
「クリスティア様!!」
そこにいたのは、複雑な感情を織り交ぜさせた瞳を揺らしているロベルト。息は乱れず、汗なんてかいていないけれど、いつもはきちんと纏められている髪が乱れ解れているから、急いで来てくれたのだと分かり胸が熱くなった。
「……ロベルト…」
本当ならお父様の時のように抱きつきたい。望まぬ婚約に縛られ、好きでもない男と過ごさなくてはいけない日々を耐えて十二年…もう心に蓋をしなくていいと思うと、我慢できなくなる。
「……ロベルト…エルザとランドルフは…?」
「え、あ……」
「置いてきたのね?」
「…………申し訳ございません」
きっとエルザはあの短い指示で全てを察し、的確な伝言をしてくれたのだろう。だからこそ…こうして貴方が駆け付けてくれたことが嬉しいの。
『俺より見目がいい騎士など目障りだ』
そんな理由で公爵家から連れてきたふたりの護衛騎士を外され…それでもふたりは王宮に留まり、私の傍にいてくれた。まぁ…ランドルフはエルザがいるからだろうけれど。
「今、お父様が陛下にお話をしに行っているわ」
「っ……では…」
「婚約破棄を言い渡されたけれど、予定通りこちらから叩きつけるわ」
私なりに思う悪女の笑みを浮かべたら、ロベルトは頬を緩めた。あら?怖くないのかしら。
「戻りましょう…公爵邸に」
「えぇ、みんなで戻るわよ」
距離を縮めることなく、私達は微笑みあった。
「…ロベルト……」
「おはようございます」
僅かに残っていた香りに悶えていたら、ノックもなしにロベルトが入ってきた。それ、私だから許されるって分かってやってるよね?やたら満面の笑みなのは私が何をしていたのか分かっているからなのよね?
そんな爽やかな笑顔を見せられても、簡単には起きてあげないんだから。私は寝起きの悪い女なんだからねっ。……もう少し香りを堪能したいし。匂いがなくなるまでクンクンしてやる!と、シーツに顔を埋めた。
「…………ロベルト」
「はい」
「使っているコロンと同じものを寄越しなさい」
「畏まりました」
貴方が尻尾をブンブンしていることなんて、見なくとも分かるわ。声が弾んでいるもの。
「……お起きにならないんですか?」
ふんっ、起きてなんかあげないんだってば。まだまだこの匂いを堪能してやる。
「間もなく朝食のお時間ですよ」
「あっ…………何するのよ、邪魔しないで」
いつまでもクンクンしていたら、腰に手を回されヒョイッと持ち上げられてしまった。こんな対策もあるのね。でもシーツは離してあげない!
「食事はきちんとお取りくださいね、これ以上細くなったら折れてしまいます」
「そんな簡単に折れないわよ」
むしろコルセットの締め付け地獄に耐え抜いている、わりと丈夫な腰だわ。どんなに激しい房事でも耐えられてよ?
「……こんなに細くて…コルセットの必要があるんですか?」
「嗜みですもの、仕方ないわ。それよりおろしてくれる?まだ堪能したいの」
「本体がいるのに?」
あら。確かに、香りを強く感じると思った。つけてる本人がいるからだったのね、うっかりだわ。
「じゃぁ、ロベルトから直接嗅ぐ。おろして」
途端におろされ、ビシィッ!と尻尾を振りながら直立するロベルトの首筋に鼻先を寄せて、香りを堪能する。……いい匂い。
ロベルトは背が高いから爪先立ちにならないといけなくて、そうなるとふらつくのを支える為に、逞しく鍛えられた胸元に手を添えるしかないの。致し方ないのよ?たまたまそこにあるのが胸板なだけだわ。
「……………ふぅ…満足した」
「っ……それはようございました」
ふふんっ。さりげなく首筋に唇をつけてやった。
「さぁ、行きましょうか」
「…………………はい」
ロベルトは私と常に行動を共にする為、食事は一緒にとることになっている。食堂について食事をとり終わるまで、とても熱い視線を受け続けた。
我慢比べね。負ける気なんてしないけれど。
その後、部屋に戻って身仕度を始める為にロベルトは退出したのだけれど…些か早足だったのを私は見逃さなかった。
まずは一勝ゲットね。
******
ロベルトと繰り広げた攻防をエルザに話したら、あまり苛めてやるなと怒られたわ。いえ、正確には窘められた。
「殿方は色々と大変なのですから、あまり強い刺激をお与えになるのはお控えください」
外部の目がなければ、こうして気兼ねなくロベ トについて話すことが出来る。外では特大の猫を被っているから疲れるのよ。とはいえ、私がロベルトに夢中だという噂は既に広がり始めているけどね。発信元?それは企業秘密だわ。
さてさて。エルザに叱られ、ぶすっとしながら繊細な細工のような編み込みを施してもらっていると、ロベルトご帰還。
おやまぁ……スッキリした顔して。
そして、相変わらずノックなしだけれどエルザすら気にしていない。これは…イケる?援護してくれてる?エルザだけには、昔から散々ロベルトについて語ってきたものね。
「出来上がりました」
「素敵…ありがとう、エルザ」
「では、準備をして参ります」
エルザは一礼をして、パタン…と扉を閉めた。えぇ、完全に閉めましたわ。ありがとう。
「よくお似合いです」
「ありがとう。貴方も素敵よ」
騎士仕様のロベルトは、長い髪を高い位置でひとつに縛っている。動くたび、細い金糸が揺れてとても綺麗で…いつまでも触っていられる。
「誰にも触らせてはダメよ」
「仰せの通りに」
ロベルトの髪を指でくるくる弄っていると、ポケットから取り出した小瓶の中身を自分の手首に塗り、私の首筋に擦り付けてきた。
「…………いい香りだわ」
目を閉じてゆっくり呼吸をすれば、その香りが私のものなのか、それともロベルトのものなのか分からなくなる。まるでひとつに溶け合ったみたいで気持ちいい…………やだ、私まで変態だわ。
とか思いつつ、いつまでもやめないロベルトの戯れを享受していると、ノックの音。
「ご準備が整いました」
「今行くわ」
最後にロベルトへ近付き…思い切り香りを吸い込気み、ふうっ…と息を吐いて気合いをいれた。
******
執務室のテーブルに書類を広げ、キャスト候補を絞る為の話し合いが始まった。集まったのはざっと百三十名。連日の面接で声を枯らした事が、今となっては既に懐かしい。
「予定通り、男性達の好みにあたる者にはその数を記してあります」
エバンスが並べた絵姿の右下には、それぞれ数字が記されていた。見た目は大切なので、絵姿だけでどの女性と食事をしたりお酒を飲みたいのかを選んでもらった結果と言うことになる。
この屋敷だけでは大した人数にならないから、手分けしてあちこち派遣して得た貴重なデータであり、収集する際には他の人が誰を選んだのか分からないように徹底してもらっていた。
「ダントツの人気者から、少数派まで…予定通りね。ちなみにロベルトも投票したの?」
「俺はクリスティア様の騎士なので致しません」
「私の騎士でないならするの?」
「クリスティア様の絵姿があるのならば」
「そう、それなら無いから仕方ないわね」
私とロベルトのやり取りに驚く者はこの屋敷にはいない。それだけ近しい人を集めた。そして、広げt…うぉっほん…広がる噂は放置したまま、まずは屋敷内にいる使用人達へのアピールから始めることにしたわ。身近な人からの話であれば、より信憑性が増しますもの。いえ、噂は自然と広がっているだけですわよ?ウフフ♡
(使えない)王太子の婚約者などという有り難い肩書きをいただいてから、ずっと我慢してきたの。だからもうしない。
******
「お前みたいに真面目で堅苦しい女は嫌いだ。俺はアンジェリカと結婚する!婚約破棄だ!!」
定期のお茶会でそう声を張られた時は、思わず涙を流してしまった。だって嬉しかったんだもの。
「な、なぜ泣く!……まぁ、なんだ…そんなに俺の事が好きだと言うなら、おま────」
「なりませんわ!!それはなりません!真実の愛を貫きたいお気持ち、とてもとても分かります」
「そ、そうか?分かっ────」
「お手続きは私が済ませておきますから、殿下は何一つご心配なさらずお過ごしください。それでは、やる事がありますので失礼致します」
「ちょ、クリスティア、ま──────」
何か言っていたけれど、そんなの無視して足早に与えられている自室へと向かった。急いでお父様に手紙を書かなくてはならない。
「お嬢様!?」
「エルザ、すぐにランドルフとロベルトを呼んできてちょうだい」
「まさか…っ、畏まりました!」
縺れそうになる足を叱咤しながらなんとか自室へと辿り着き、予定より早い戻りに驚くエルザに指示を飛ばすと、全速力で手紙を書いてお父様の執務室まで届けるよう従者に渡した。
お返事を待つ間、実家や親友から贈られてきた宝物を鞄にポイポイ入れていく。部屋を変われと言われたら持ち出せるようにしておかないと、盗まれたら困る。ちなみに王太子から義務的に贈られたものは不要なのでどうぞ。
順調に仕分けを続けていたら、扉が大きな音をたててお父様が入ってきた。
「クリスティア!!」
「お父様!!」
ヒシッ…と抱き合い、これまでの苦労を無言のまま労い合う。長かったわ。苦節十二年…漸くこの時を迎えることが出来た。
「すぐに陛下へ話をつけてくる」
「お願い致します」
しっかりと頷き合い、駆け足で立ち去るお父様を見送ってから仕分けに戻り、そうこうしている内に再び大きな音と共に扉が開いた。
「クリスティア様!!」
そこにいたのは、複雑な感情を織り交ぜさせた瞳を揺らしているロベルト。息は乱れず、汗なんてかいていないけれど、いつもはきちんと纏められている髪が乱れ解れているから、急いで来てくれたのだと分かり胸が熱くなった。
「……ロベルト…」
本当ならお父様の時のように抱きつきたい。望まぬ婚約に縛られ、好きでもない男と過ごさなくてはいけない日々を耐えて十二年…もう心に蓋をしなくていいと思うと、我慢できなくなる。
「……ロベルト…エルザとランドルフは…?」
「え、あ……」
「置いてきたのね?」
「…………申し訳ございません」
きっとエルザはあの短い指示で全てを察し、的確な伝言をしてくれたのだろう。だからこそ…こうして貴方が駆け付けてくれたことが嬉しいの。
『俺より見目がいい騎士など目障りだ』
そんな理由で公爵家から連れてきたふたりの護衛騎士を外され…それでもふたりは王宮に留まり、私の傍にいてくれた。まぁ…ランドルフはエルザがいるからだろうけれど。
「今、お父様が陛下にお話をしに行っているわ」
「っ……では…」
「婚約破棄を言い渡されたけれど、予定通りこちらから叩きつけるわ」
私なりに思う悪女の笑みを浮かべたら、ロベルトは頬を緩めた。あら?怖くないのかしら。
「戻りましょう…公爵邸に」
「えぇ、みんなで戻るわよ」
距離を縮めることなく、私達は微笑みあった。
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