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新season前にざまぁ(読み飛ばしても無問題)
sideアレギラ伯爵 -ざまぁ 2/4-
※アレギラ伯爵のざまぁです。
※お読み頂かなくとも、繋がります。
※やっちまいな!!と言う方のみどうぞ。
────────────────────
どうしてこんなことに…何度そう思おうと、現実は何も変わらない。
今日…娘トレーシアの裁きが行われ、爵位と領地を返上する手続きをして足取り重く帰宅すると、そこには多くの役人が来ていた。
爵位と領地を返上しただけでは足りない分は、屋敷内にあるものを売却するのだという。
代々受け継いできた銀食器や宝石類…家具や絨毯など、目につくものが根こそぎ運ばれていく。
「では、明日の昼までには出ていくように」
それだけを言い残して、役人は去った。
残されたのは全てを失うことになって何も考えられない私と、剥き出しの床に座り込んでただ泣くだけの妻と……私達を睨み付ける息子。
「あんた達は……っ…」
娘可愛さに甘やかしてきた自覚はある。
人より早く体を成長させた娘は、常に多くの子息に囲まれていて…それがいつからか王弟にまで可愛いがられるようになり、やがて様々な貴族達と親交を深めるようになっていた。
その親交が清いものではないことなど気付いていたが…王弟がいるのだから無体なことなどないだろうと…罪になるようなことはないだろうと、息子の意見を突き返してきた。
「俺は言いましたよね?…あいつは人間なんかではない…本能のままに生きる獣だと…そう言いましたよね!?あらゆる人に迷惑をかけ、陥れ、挙げ句命を奪うようなヒトモドキだと!!」
そうだ…散々言われてきた。
娘がどんな風に言われているのか…どこそこの婚約者を寝取っただのなんだのと…
そのたび、妹に向かってなんてことを言うんだ!と息子を叱りつけていた。
そして……十三年前の事件後、息子は家を出た。
「俺はもうこの家に関係のない人間です。籍も抜けているし、あんた達は他人だ。今日ここに来たのは…今後、一切の関係を断ち切る為のことにすぎない」
「……隣国に…行くのか……」
「あんた達のせいで、隣国に住む親族まで肩身の狭い思いをしているんだぞ…っ、俺が行くことでさらに迷惑をかけると分かってて、行くわけないだろう!?」
「じゃぁ、」
「あんた達に一生会わずに住む場所だ。こんな家に生まれた事を不憫に思う人達に、これまで助けてもらってきたが…もうこれ以上は……」
息子はこの十三年間、騎士の宿舎に入っていて一度も帰ってこなかった。
腐った家など継ぐつもりはないと、成人になると同時に貴族籍すら自ら抜けて…
「今までの俺を評価してくださる方が、遠い国でやり直すきっかけをくださった」
「わ、わたくしたちも────」
「連れていくわけないだろう?諸悪の根源はあのヒトモドキだが、それを放置したあんた達にも責任は多分にあるんだ」
「そんな……」
「俺はもう行くから。あぁ、そうそう…さるお方が、あんた達の子供として生まれた事をなかったことにしてくださるそうだ。俺は孤児出身ということだな。良かったじゃないか、あんた達の子供は可愛い娘だけだってことだ」
十三年ぶりに会った息子は、使い込まれた鞄ひとつを肩に掛け…振り向くことなく立ち去った。
「あなた……」
さめざめと泣き続ける妻に、かけてやる言葉も気力も持ち合わせていない。
多額の持参金で目当てで娶り、それを元手に事業を拡大して成功を納めては資産を増やし続け…しかしその資産も十三年前に娘が起こした事件で支払った慰謝料として殆どを失い…そこからは転がり落ちるようだった。
それでも、娘には多くの有力貴族がついているのだからと…いざとなれば売り飛ばせばいいと…そう思っていたのに……
「…あなた……モリス子爵は助けてくださらないのかしら…あんなに言っていたのだし…」
体調が悪いからと裁きの場に赴く事を拒否した妻は、あそこで何が証明されたのかを知らない。
娘が言っていたことを信じ…娘のしてきたことを正当化するだけだ。
「子爵は…トレーシアと何も…一切関係していなかった。助けてもらえるはずがない」
「そんなっ…だって…」
「全てはトレーシアの妄言だった…それについては王家も証拠を提出された」
「王家……なぜ…」
私とて、トレーシアの言葉全てを鵜呑みにしていたわけでなく…けれどあそこまで徹底して真実のように話すのだから、モリス子爵と数回は情を交わしているのだと思っていた。
それならば、そこをついて責任を取らせればいいと…押し付けてしまえばいいと…
「わたくし…実家に……」
「恐らく無理だ…今頃、多くの親族が爵位を返上していることだろうよ…」
私達の居場所は、もうこの国にはない。
平民として生きようにも、巻き込み同じように平民となった者が許さないだろう。
「……遠くの国に…共に行くか…?」
それなりの愛はあった。
他の女を抱いたり愛したりすることは多々あったが、離縁してまでとは思うこともなく…
「わたくしは……」
******
元妻が乗る乗り合い馬車を見送り、私はなるべく節約するために歩き始めた。
僅か残っていた衣類や宝飾品を売り、そこで得たものが全財産だ。
元妻は実家に向かうと言っていたが、恐らく受け入れられることはないだろう。
娘を増長させたのは、私達夫婦なのだから。
求められるままに物を与え、露出度の高いドレスも異性への接し方も諌めることなく…それでいい縁が繋がるならと放置した。
実際、体を使い篭絡した者は様々な便宜を図ってくれていたようだが、それが我が家の利となることはなく。
「アレギラ伯爵」
不意に名を呼ばれて振り向くと、同時に首筋が熱くなり…視界に赤い飛沫が飛び込んできた。
「なっ……あ゛………」
倒れこむ私を一瞥した目の前の人物は、手に持つ剣についた血を凪ぎ払うと鞘に納め、まるで何事もなかったかのように立ち去っていく。
「あ゛……あ゛………」
首から流れ出る血は止まらず、薄れゆく意識の中で私は漸く己の罪と向き合った。
許されるはずかないことは分かっていたのに
許されてはいけないのに
ふと浮かんだのは、馬車で去った元妻のこと
彼女もきっと今頃…………
「ありがとう、これが成功報酬だ」
完全に意識が閉じる直前、かつて多額の慰謝料を支払った夫婦が……そこにいたような気がした…
※お読み頂かなくとも、繋がります。
※やっちまいな!!と言う方のみどうぞ。
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どうしてこんなことに…何度そう思おうと、現実は何も変わらない。
今日…娘トレーシアの裁きが行われ、爵位と領地を返上する手続きをして足取り重く帰宅すると、そこには多くの役人が来ていた。
爵位と領地を返上しただけでは足りない分は、屋敷内にあるものを売却するのだという。
代々受け継いできた銀食器や宝石類…家具や絨毯など、目につくものが根こそぎ運ばれていく。
「では、明日の昼までには出ていくように」
それだけを言い残して、役人は去った。
残されたのは全てを失うことになって何も考えられない私と、剥き出しの床に座り込んでただ泣くだけの妻と……私達を睨み付ける息子。
「あんた達は……っ…」
娘可愛さに甘やかしてきた自覚はある。
人より早く体を成長させた娘は、常に多くの子息に囲まれていて…それがいつからか王弟にまで可愛いがられるようになり、やがて様々な貴族達と親交を深めるようになっていた。
その親交が清いものではないことなど気付いていたが…王弟がいるのだから無体なことなどないだろうと…罪になるようなことはないだろうと、息子の意見を突き返してきた。
「俺は言いましたよね?…あいつは人間なんかではない…本能のままに生きる獣だと…そう言いましたよね!?あらゆる人に迷惑をかけ、陥れ、挙げ句命を奪うようなヒトモドキだと!!」
そうだ…散々言われてきた。
娘がどんな風に言われているのか…どこそこの婚約者を寝取っただのなんだのと…
そのたび、妹に向かってなんてことを言うんだ!と息子を叱りつけていた。
そして……十三年前の事件後、息子は家を出た。
「俺はもうこの家に関係のない人間です。籍も抜けているし、あんた達は他人だ。今日ここに来たのは…今後、一切の関係を断ち切る為のことにすぎない」
「……隣国に…行くのか……」
「あんた達のせいで、隣国に住む親族まで肩身の狭い思いをしているんだぞ…っ、俺が行くことでさらに迷惑をかけると分かってて、行くわけないだろう!?」
「じゃぁ、」
「あんた達に一生会わずに住む場所だ。こんな家に生まれた事を不憫に思う人達に、これまで助けてもらってきたが…もうこれ以上は……」
息子はこの十三年間、騎士の宿舎に入っていて一度も帰ってこなかった。
腐った家など継ぐつもりはないと、成人になると同時に貴族籍すら自ら抜けて…
「今までの俺を評価してくださる方が、遠い国でやり直すきっかけをくださった」
「わ、わたくしたちも────」
「連れていくわけないだろう?諸悪の根源はあのヒトモドキだが、それを放置したあんた達にも責任は多分にあるんだ」
「そんな……」
「俺はもう行くから。あぁ、そうそう…さるお方が、あんた達の子供として生まれた事をなかったことにしてくださるそうだ。俺は孤児出身ということだな。良かったじゃないか、あんた達の子供は可愛い娘だけだってことだ」
十三年ぶりに会った息子は、使い込まれた鞄ひとつを肩に掛け…振り向くことなく立ち去った。
「あなた……」
さめざめと泣き続ける妻に、かけてやる言葉も気力も持ち合わせていない。
多額の持参金で目当てで娶り、それを元手に事業を拡大して成功を納めては資産を増やし続け…しかしその資産も十三年前に娘が起こした事件で支払った慰謝料として殆どを失い…そこからは転がり落ちるようだった。
それでも、娘には多くの有力貴族がついているのだからと…いざとなれば売り飛ばせばいいと…そう思っていたのに……
「…あなた……モリス子爵は助けてくださらないのかしら…あんなに言っていたのだし…」
体調が悪いからと裁きの場に赴く事を拒否した妻は、あそこで何が証明されたのかを知らない。
娘が言っていたことを信じ…娘のしてきたことを正当化するだけだ。
「子爵は…トレーシアと何も…一切関係していなかった。助けてもらえるはずがない」
「そんなっ…だって…」
「全てはトレーシアの妄言だった…それについては王家も証拠を提出された」
「王家……なぜ…」
私とて、トレーシアの言葉全てを鵜呑みにしていたわけでなく…けれどあそこまで徹底して真実のように話すのだから、モリス子爵と数回は情を交わしているのだと思っていた。
それならば、そこをついて責任を取らせればいいと…押し付けてしまえばいいと…
「わたくし…実家に……」
「恐らく無理だ…今頃、多くの親族が爵位を返上していることだろうよ…」
私達の居場所は、もうこの国にはない。
平民として生きようにも、巻き込み同じように平民となった者が許さないだろう。
「……遠くの国に…共に行くか…?」
それなりの愛はあった。
他の女を抱いたり愛したりすることは多々あったが、離縁してまでとは思うこともなく…
「わたくしは……」
******
元妻が乗る乗り合い馬車を見送り、私はなるべく節約するために歩き始めた。
僅か残っていた衣類や宝飾品を売り、そこで得たものが全財産だ。
元妻は実家に向かうと言っていたが、恐らく受け入れられることはないだろう。
娘を増長させたのは、私達夫婦なのだから。
求められるままに物を与え、露出度の高いドレスも異性への接し方も諌めることなく…それでいい縁が繋がるならと放置した。
実際、体を使い篭絡した者は様々な便宜を図ってくれていたようだが、それが我が家の利となることはなく。
「アレギラ伯爵」
不意に名を呼ばれて振り向くと、同時に首筋が熱くなり…視界に赤い飛沫が飛び込んできた。
「なっ……あ゛………」
倒れこむ私を一瞥した目の前の人物は、手に持つ剣についた血を凪ぎ払うと鞘に納め、まるで何事もなかったかのように立ち去っていく。
「あ゛……あ゛………」
首から流れ出る血は止まらず、薄れゆく意識の中で私は漸く己の罪と向き合った。
許されるはずかないことは分かっていたのに
許されてはいけないのに
ふと浮かんだのは、馬車で去った元妻のこと
彼女もきっと今頃…………
「ありがとう、これが成功報酬だ」
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