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伝統
フォルクス王国、この国の王家には受け継がれてきたとある伝統があった。
王位を継ぐ者は国王の直系男児のみであり、建国から一度として例外は無い。
そして不思議なことに、直系の血を継ぐ男児は必ず同じ色を持って生まれてくる。
現国王陛下の息子である王太子マクシミリアンとその弟セドリックも例に漏れず、シルバーブロンドと紫色の瞳を父親から受け継いだ。
兄マクシミリアンは読書や絵画鑑賞を好むことから室内で過ごす事が多く、スラリとして細身。
弟セドリックは騎士団統括を務める叔父に憧れ鍛錬を積んでおり、一見すると細身に見えるが鍛え上げた肉体を持つ。
話は戻り受け継がれてきた伝統だが、これは王家と極一部の限られた者だけが知ること。
表向き、一夫一妻制を謳うフォルクス王国。
生涯ただひとりだけを伴侶として貫く姿勢は、国内外から多くの支持を集め称賛されている。
必ずや世継ぎとなる男児を儲ける事も。
だが長い歴史の中にはなかなか子宝に恵まれず苦悩する者達もいた。
けれど王位を継いできたのは“父親”の色をそのまま受け継ぐ直系の男児。
次期国王となる王太子が一定期間子宝に恵まれなかった場合、側妃を娶り“畑”を変えるのではなく与える“種”を変えるのだ。
直系男児である兄弟であれば子に受け継がれる色は同じもの、その血筋を疑う者はいない。
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王太子夫妻が結婚して3年。
あらゆる方法を試すも授からない様子に、痺れを切らした国王はセドリックに“種付け”をするよう王命を出した。
セドリックの息子を王太子夫妻の子として偽る案も出たが、国王はそれらを一蹴。
王太子妃ミレイユは新たに友好国となった国の王女であり、より強固な関係性を結ぶ為には是が非でもミレイユに産んでもらいたい。
「お前に種付けの才がある事は証明されている。何がなんでも王太子妃を孕ませろ」
王子とはいえ国政の駒に過ぎないセドリックに拒否権などなく、愛する妻と生まれたばかりの息子に暫しの別れを告げて城へ戻った。
ミレイユとの房事は侍医らが定めた日程で行われ、目出度く懐妊となれば数回で終わるが、月のものが来てしまうとまた房事に励む必要があり、懐妊となるまで繰り返される。
セドリックに求められるのは“種付け”の役目であり、それ以上の交流は必要とされない。
そう定められているはずなのに、ミレイユは心を通わせなければ授かるものも授かれないと涙を流してまでそれを望み、国王の判断により寄り添うことを義務付けられてしまった。
「あれはどうもお前に気があるようだな。あれは見目もいい。レイチェルよりふくよかだがその分抱き心地も良かろうよ」
そう言われたセドリックは表情こそ変えないが拳をキツく握り込み、下卑た笑みを浮かべている父王に内心で悪態をつく。
表向きは妻である王妃だけを愛しているように見せかけ、何人もの愛人を抱えるお前と一緒にしてくれるなと。
そして重い足取りで向かうのはミレイユが待つというサロン。
長い廊下をゆっくり歩きながら、窓から見える城下へと視線を移した。
「………レイチェル…」
本当は嫌だと突っぱねたかった伝統。
初めての顔合わせから恋い慕うレイチェルと心を通わせられるようになり、夫婦となってからは心身ともに幸せを感じる日々だったのに。
『被せられる罪など幾らでもある』
それは言外にレイチェルを亡きものにするぞという脅しであり、実際にそうするのが父王であることも知っているから…だからこそ受け入れざるを得なかった。
初めてミレイユとの房事に向かう時は老人でも臍まで反り返るという精力剤を飲み、直前に届けられたレイチェルの下着につく匂いを思い切り吸い込んでから臨んだ。
雰囲気を出す為と言って灯りは最小限に、目を瞑って脳裏にレイチェルを思い浮かべて。
そこまでしてもミレイユの声が聞こえると一瞬にして現実に引き戻されてしまい、萎えそうになるものを必死で奮い立たせては早く務めを終えるべく肉付きのいい体に腰を打ち付けた。
愛する妻ではない女の中へ子種を注ぐことに罪悪感を感じながら。
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