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贈り物
しおりを挟む国王の読み通り、王太子妃ミレイユが心を寄せているのは夫であるマクシミリアンではなく義弟のセドリック。
輿入れをして来た際に一目で恋慕の情を抱き、フォルクスの王家に嫁ぐ者として伝統を聞かされていたミレイユは、密かに避妊薬を飲んでいた。
念願叶い、セドリックが“種付け”の為に城へ移るも接触出来るのは決められた数日のみ。
薄暗い寝室では名前を呼ばれることも丁寧な愛撫を施されることもない。
そして気付いてしまった。
気持ちよくて嬉しくていつもしがみつくように抱き着いていたが、チラっと見えたセドリックは目を瞑った状態で腰を打ち付けており、視界からミレイユを消していることに。
房事が終わればセドリックは自室へと戻ってしまい、朝までその腕に抱かれる事はない。
「奥様を真に想うセドリック様のお心にご負担を掛けていることは理解しております…わたくしとの房事はあくまでも世継ぎを儲ける為に必要なだけだからと…ですが…ですが義務としてだけ通ずるのは…ただの孕み腹だと言われているようで心が痛むのです…っ…」
自分も義務として向き合っているだけだが、肌を合わせる以上はそれなりの交流を持つべきではないかと国王へ直談判したミレイユ。
避妊薬の効果で予定通り月のものを迎えると、次の房事までの期間お茶をしたり食事を共にしたり、まるで婚約者か妻のような振る舞いでセドリックを傍に置き続けた。
たとえセドリックが冷えた表情をしていても。
そして迎えた3度目の房事。
5日間をかけて行われるこの瞬間を心待ちにしていたミレイユは願いを口に出した。
「あの……夫の丁寧な解しが早い懐妊に繋がるとも言われているようですわ…だから……」
相変わらず薄暗い寝室で、先に寝台へあがっていたミレイユは恥じらいの素振りを見せつつセドリックへ足を開く。
愛撫をしてくれと求めているのだ。
「………夫の解し…ですか…」
「えぇ……ですからセドリック様……」
これがレイチェルなら、セドリックは言われずとも喰らいついているところ。
むしろ『恥ずかしい』『やめて』と身を捩るレイチェルを組み敷き、大きく広げさせた足の間にいつも顔を埋めていたのだ。
溢れ出す蜜を啜り、もっと出せと舌を使って刺激すれば細い体を震わせたレイチェル。
子種を注ぐ時は必ず唇を重ね、ひとつに溶け合うような快楽に酔い知れることが出来た。
「……“夫”の解しが必要なのであれば兄上を呼ばせましょう」
「…え……」
「私に出来るのはあくまで種を妃殿下へ捧げることだけですから」
使用人を呼ぼうとするセドリックを止め、いつも通りでいいからと房事に臨んだ。
いつも通り、目を瞑るセドリックにしがみついて体の奥へ熱を受け止める。
決して実ることはない子種を。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
普段のセドリックは自室で執務にあたる。
婿入りしたアンダーソン侯爵家を継ぐのはレイチェルとの間に生まれた息子だが、その時まで当主代行を務めるのが役目。
今はまだ義父が現役なのでセドリックは補佐として執務に携わっており、書類をやり取りする為頻繁に家令が訪ねてきていた。
“手土産”を持って。
「こちらとこちら、それからこちらにも確認のうえ署名をと申しつかっております」
「分かった…………ところでケヴィン…」
心得ております、と言わんばかりの微笑みを見せた家令のケヴィンが大きな鞄から取り出したのは、淡い黄緑色をした包み。
「ではセドリック様、また明日お伺い致します」
ケヴィンが退室したあと、細い金色のリボンを解いて包みの中から姿を現したのは白いレース。
セドリックが自ら選んで用意したレイチェルの下着である。
「……はぁぁぁ……レイチェルの匂いがする…」
重要なのは“使用済み”であること。
股に当てる箇所を鼻に押し付け匂いを堪能すると今度はペロリと舐めた。
「……レイチェル……会いたい……」
ミレイユが孕まない限り城への軟禁は続く。
もう2ヶ月もレイチェルに触れるどころか顔を見ることも出来ておらず、知らず溜め息を漏らす事が多くなった。
そんなセドリックを気の毒に思った使用人達がレイチェルの“使用済み下着”を届けるようになったのだが、セドリックはそれを手に取り夜な夜な自分自身を慰めている。
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