記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
184 / 476
第14章 まどろむ世界のその先へ

第184話 共通の目的

しおりを挟む
「"共通の目的"……? それは何なんだ?」

 ロギウス、バクト、そしてイトーさんまでもを結ぶこの三人の"共通の目的"。
 俺はそれが何なのかを三人に尋ねた。

「すまねえな、ゼロラ。お前さんであっても詳細までは説明できねえ」
「だが、"誰の意志"によって"共通の目的"を持っているかぐらいは、貴様に教えてもいいだろう」

 イトーさんもバクトも目的の詳細までは話してくれないようだが、その目的に関わっている人物についてロギウスが話し始めてくれた。

「僕達は先代勇者である【慈愛の勇者】ユメ様の意志の元で動いている」
「先代勇者の……!?」

 当代勇者、【栄光の勇者】レイキースの先代、【慈愛の勇者】ユメ。
 この三人は一体何故、先代勇者の意志の元に……?

「ユメ様って……確か【伝説の魔王】に無理矢理結婚させられて、人知れず亡くなったんですよね……?」

 ラルフルも先代勇者とこの三人の関係が気になって尋ねる。

 だが、その言葉を聞いた時、三人の目はどこか怒りが籠ったものへと豹変した。
 あまりの変化に怯えるラルフルだったが、三人とも冷静さを取り戻すように気持ちを整えなおした。

「すまねえな、ラルフル。実は……その話は"真っ赤な誤解"なんだよ」

 誤解? イトーさんはそう言うが、それは伝承に間違いがあるということか?

「【慈愛の勇者】ユメ……。あいつは、"無理矢理結婚した"のではない。【伝説の魔王】に"自ら進んで求婚を申し出た"のだ」
「そ、そんな……!? でもそれじゃあ、ユメ様は人類を敵に回したということに……!?」

 バクトが続けた説明に、ラルフルが困惑する。俺だって同じ気持ちだ。

「ユメ様は人類を敵に回したのではない。今となっては僕達にもはっきりと詳細を知ることはできないが……彼女は、【伝説の魔王】に本気で惚れて 、その中で"人と魔の共存"という道を見出そうとしたのではないかと思っている。彼女はそもそも……勇者としてはあまりにも……"誰に対しても"優しすぎる人だった」
「"人と魔の共存"だと……?」

 この三人は先代勇者について、これまでの伝承をひっくり返すような話を続けている。
 それも嘘を言っているようには見えない。

「教えてくれ……。あんたら三人と先代勇者。その関係を……」

 俺は真剣に三人の方を見て訴えかけた。何としても知りたいという必死の願いを込めて――

「……いいだろう。一番重大な部分は伏せるけど、そこまで真剣な目をされたら僕達もある程度は話さないわけにはいくまい」



 俺の願いを感じ取ったロギウスは事情を説明してくれた。

「そもそも僕はユメ様の死に際に立ち会ってたんだ」
「それじゃあ……ロギウスも魔王城にいたのか?」
「いや……ユメ様の死に場所は魔王城じゃない。……このルクガイア王国の領内だ」

 先代勇者は……ルクガイア王国の領内で死んだ……?

「僕がユメ様を見つけたのは本当に偶然だった。あの時の彼女は全身傷だらけで満身創痍……。自らの死期を悟られていた」
「それは……魔物にやられたのか……?」
「いや……。手を下したのは当時のルクガイア王国の貴族――その手中にある者だ。ユメ様が抱いていた"人と魔の共存"という理想を知って、妬んだ人間だったんだろうね……!」

 ロギウスは重く、苦しく、怒りを込めた声で説明した。
 その話が本当ならば、先代勇者は人類の手によって――"貴族の傲慢"によって殺されたのか……?

「ユメ様の体はすでに限界だった。僕に使える回復魔法でも、持っていた回復薬でも、彼女を助けることはできなかった……。そこで僕はルクガイア王国において唯一ともいえる高度な医療技術を持つ、バクト公爵に助けを求めた」

 そう言ってロギウスはバクトに話を振るように目線を向けた。

「俺はロギウスに頼まれてユメの治療に当たった。……だが、この俺の力をもってしても、すでに手遅れだった……」

 バクトから溢れる後悔の念が混じった説明。己の非力さをバクトが語る姿は普段からは想像できなかった。

「そしてユメ様はまだ意識が残っている間に、僕とバクト公爵にこう言った――」


『私は……一度に大勢の命を……守ろうとし過ぎたのかな……?』


「――そう言ってユメ様は息を引き取った」

 ロギウスの口から語られる。先代勇者の死に関する真実。
 あまりに伝承とかけ離れた内容だったが、この三人の目が『これこそが真実である』ということを強く物語っていた。

「そ……そんなことって……。じゃ、じゃあなんで、ユメ様の死は伝承のように語られてきたのですか!?」

 話の内容に俺と同じく驚愕するラルフル。その理由もロギウスは話してくれた。

「もしユメ様の死が……本当の出来事が"そのまま"語られようとした場合、ユメ様を妬んでいた貴族によってその歴史は"人類を裏切った最悪の勇者"として捻じ曲げられてしまっていただろう。手を下した当時の貴族は自分がユメ様を殺したという事実を隠し、自らを"最悪の勇者の策略から人類を救った英雄"にしようとしていたんだ」

 己の利権を守るために非道な行いを平然とやってきた当時の貴族達。吐き気さえ催す程の邪悪さだ。

「だから僕達はユメ様が悪役にならないように結託することにした。ユメ様の師匠であるイトー理刀斎にもこの国に来てもらい、事情を説明して協力を願い――さらにもう一人、"元々貴族に激しい恨みを持つ天才"の力も借りてね」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...