記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第14章 まどろむ世界のその先へ

第185話 先代勇者の真実

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 その後、ロギウス達は感情を押し殺すように淡々と説明を続けた。

「僕達はユメ様の評価が後世に悪評として残らないように、ユメ様を"人類のために犠牲になった英雄"として事実をこちらから捻じ曲げることにした」
「殿下と俺は内政に根回しをして、ユメを"人類のために犠牲になった英雄"として伝承に残すようにした」

 ロギウスとバクトは悪評を広めないために、さらなる事実の改変を――

「俺は弟子であるユメを殺すように仕向けた貴族を探し当てて……二度と口をきけないようにした」

 イトーさんは先代勇者を殺した貴族への口封じを――

「そしてユメ様が"残したもの"――僕達が今尚結託している"共通の目的"に値するものを守るためのシステム作成を、今この場にいない僕達の四人目の協力者、元ルクガイア王国騎士団二番隊隊長のドクター・フロストに依頼した」

 さらに語られるもう一人の協力者、ドクター・フロストが"共通の目的"を守る仕組みを作った……。

「そして僕達四人は今も尚、"共通の目的"のために一応の協力関係を続けている。もっとも、それぞれ"個人の目的"のためになるとお互いが敵対関係なることは覚悟の上だったけどね」

 ロギウス達はそれぞれ別の意志を持ちながら、先代勇者の名誉を守るため、"共通の目的"を守るために裏でつながり続けていたのか……。



 あまりにも壮大で、衝撃的な事実。それを聞かされた俺とラルフルは言葉が出ない。

 だが……そうなってくるともう一つ。大きな疑問が出てくる。

「す、すみません……。もし今までの話が全て真実なら……【伝説の魔王】は実は"悪い人ではなかった"……ということになるのですか?」

 俺も抱いていた疑問を、ラルフルは口にした。

「……それを断言することは僕達にもできない。ただ――ユメ様が【伝説の魔王】と結ばれてから、魔王軍の侵攻が衰え始めたのは事実だ」
「手始めだったのか、【伝説の魔王】はルクガイア王国領内の侵攻拠点であった当時の地底魔城――現在のギャングレオ城を放棄した」
「【伝説の魔王】もユメに絆された――そう考えるのが自然なのかもな。ユメは……【伝説の魔王】の心までも動かしたんだろう……」

 ロギウス、バクト、イトーさんが語ることで少し見えてくる【伝説の魔王】の人物像。
 もしかしたら本当に……先代勇者がなしえようとした"人と魔の共存"が叶っていたのかもしれない……。

「そ……そんな……そんな……?」

 その話を聞いたラルフルの複雑な心境が声の震え方から分かる。
 ラルフルは両親を魔王に殺された身だ。いつだったかラルフルが語っていた『【伝説の魔王】が自分達を襲った真実』への答えはまだ完全には出ていない。
 マカロンが【伝説の魔王】に父親を殺させるように頼んだのは事実だが、『なぜ【伝説の魔王】はマカロンの願いを聞いたのか?』という疑問の答えは見えてこない。

 ラルフルは苦悩故か、黙り込んでしまった。

「【伝説の魔王】について知ることはもうできない。だがユメ様のことで僕はこう考えている。今こうして僕達四人のうちの三人が同じ勢力に揃うことになったのは、『ユメ様の"遺志を継ぐ者"が現れたからではないか?』 とね」
「それに俺は思うんだ、ゼロラ。記憶のないお前さんこそがその"遺志を継ぐ者"なんじゃねえかとな」

 俺が……先代勇者の"遺志を継ぐ者"だって……?

「俺達三人を含め、ラルフルにガルペラ侯爵、スタアラ魔法聖堂やギャングレオ盗賊団を結び付けていた中心にいるのは、ゼロラ。貴様だ」

 確かに俺はそれらの騒動にすべて関わっていた。俺の意志でずっと関わっていた。

 だが……そう考えるのは安直すぎる気もする。

「根拠なんてない短絡的な考えだとは僕も思う。でもユメ様が望んだ"人と魔の共存"と僕達が目指す改革は似ているところがある。"あらゆる命が手を取り合える世界"の実現。僕もユメ様の志の元、これまであなた達とは別で改革の計画を考えていたんだ。そんなあなた達と僕が今はこうして手を組んでいる。安易な言葉だけど……これは"運命"なのかもしれない」

 ロギウスが口にした"運命"という言葉。漠然としているが、どこか馴染む感覚のするその言葉。
 先代勇者の遺志を俺が受け継いでるかなんて分からない。

 だが……俺達の目指す改革への気持ちはより大きなものとなった。

「ラルフル。お前には色々苦しい話かもしれない。だが……今はお前の力も貸してくれ」
「……え? ゼ、ゼロラさん……?」

 俺は俯くラルフルに声をかけた。
 俺の運命を変えた"最初の一人"。今では俺を救えるほどに強くなった、俺と同じ"魔力ゼロ"の少年。

「お前達も……協力してくれるか?」

 俺は三人にも願い出た。

「愛弟子の気持ちと友人の気持ち……。その両方に来られたら、断る訳にいかねえだろ?」

 イトーさんは笑顔で答えてくれた。

「……いいだろう。貴様の力は俺も認めている。俺も俺が望む目的の為に、今は手を貸してやる」

 バクトもぶっきらぼうにしながらも応じてくれた。

「水臭い申し出だよ、ゼロラ殿。……僕の方こそ、よろしく頼む」

 ロギウスは俺に頭を下げて了承してくれた。

「ゼロラさん……。自分には……【伝説の魔王】がどんな存在だったのかはまだ気になります。ですが、今は自分の力がこの国の役に立つのなら、喜んで協力します!」

 ラルフルもいつもの調子に戻って協力を誓ってくれた。


 これからの改革への戦いはより一層厳しいものとなる。
 それでも俺は、こいつらと一緒なら実現できると信じた。
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