記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第16章 自分はあの日から変わりました

第224話 とある侯爵の華麗なる計画

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 ガルペラ侯爵の朝は早いのです。今日は昨日行われたヒーローショーの更なる考察を重ねるのです。
 確かに昨日のヒーローショーは大盛況だったですが、そこで胡坐をかいてはいけないのです。
 まだまだ設備の強化もイベント管理も必要なのです。

「――ですので、今日はお二方に来てもらったのです。ご足労感謝なのです」

 こういう時こそ、このお二方の出番なのです!



「てやんでい! ショーのステージ設備の強化なんて血が騒ぐでい! このギャングレオ盗賊団建設現場主任・ヤカタに任せるでい!」

 まずはヤカタさんなのです! 設備などの建設なら、この人の出番なのです!

「あっしの計算によると、ショーの広告費用をこれぐらいにすれば、無理ない範囲での集客効果が期待できやす。このギャングレオ盗賊団企画営業部長・ネモトにかかれば、この程度の計算は造作もないですねい」

 流石はネモトさんなのです! もう広告費用の計算を出してしまったのです!

「てやんでい。それにしてもヒーローショーとは面白い物もあったもんでい」
「これはビジネスの匂いがプンプンしやすね。あっしの勘がそう告げてやす」

 ヤカタさんもネモトさんもヒーローショーに好印象のようです。これは期待できそうです!

「ガルペラ様がヒーローショーのためにギャングレオ盗賊団と結託して何かを計画している……。止めたほうがいいのかしら?」
「何を言っているのですか、ローゼス! ローゼスにも"ヘンショ・クイーン"としての役作りを頑張ってもらうのです!」
「あれは勘弁願いたいです……一応……」

 ローゼスは頭を押さえてしまったですが、"ヘンショ・クイーン"を演じているローゼスは輝いていたのです。
 現に昨日の夜中もローゼスが自室で"ヘンショ・クイーン"の衣装を着て、鏡の前で決めポーズをとっていたのを見たのです。
 これはローゼスのためでもあるのです。私の私利私欲ではないのです。

「では皆さん! ヒーローショーのために頑張るのです!」
「てやんでい! 承知でい!」
「あっしも助力しやしょう」
「あぁ……複雑……」





 舞台と宣伝の準備は整ったのです。次は役者の準備なのです。
 こちらについても準備はできているのです。

「ガルペラ様。お客人がお見えです」
「早速来てくれたのです! お通しするのです!」

 ローゼスに言われて、早速役者さんに部屋に入ってもらったのです。

「フォフォフォ。敏腕と名高いガルペラ侯爵にお呼びいただけますとは、このオ・ジー・チャン、恐縮の至りですじゃ」
「俺までお呼ばれしちゃったじゃん。孫のオ・レイ・ジャンじゃん。よろしくお願いしますじゃん」

 チャン老師とお孫さんのジャンさんなのです。
 引き受けてくれるか不安だったのですが、ゼロラさんの名前を出したら二つ返事でオッケーしてくれたのです。

「仮にも高名な武闘家とそのお孫さんをヒーローショーなんて舞台に出して大丈夫なのでしょうか……?」

 ローゼス、細かいことを気にしたら負けなのです。

「チャン老師にはキャプテン・サラダバーの師匠、"マスター・ベジタリアン"の役をお願いするのです」
「ほう。主人公の師匠役じゃな。喜んでお引き受けいたしますぞ」

 やっぱり主人公が強くなるためには師匠が必要不可欠なのです。王道こそ正義なのです。

「そしてジャンさんには敵役であるヘンショッカーの組織の鬼軍曹、"アンチ・ヤサイージェント"の役をお願いするのです」
「それじゃんけど……俺が"鬼軍曹"って似合わないじゃん?」

 むぅ……確かにそうなのです。
 ジャンさんは私より年上とはいえ、まだ若いのです。鬼軍曹感が足りないのです。
 誰かもっと適任な人はいないのですか――





 コンッ コンッ コンッ

「あら? ガルペラ様。また別のお客人みたいです」
「お客人なのです? どんな人なのです?」
「なんでもオジャル伯爵の母上だとか……」

 あのオジャル伯爵の母上なのです!?
 あの人とは色々あったのですけど、"円卓会議"ではお世話になったのです。
 ここはちゃんと挨拶しておくのです。

「ローゼス、お通しするのです」
「かしこまりました」

 私の言葉通りにローゼスがオジャル伯爵の母上を通してくれたのです。

「ガルペラ侯爵。お初にお目にかかるざます。わらわはオジャル伯爵の母、ザ・マスざます」
「こちらこそ初めましてなのです。私がガルペラ侯爵なのです」

 オジャル伯爵の母上――ザ・マス夫人はいかにも高貴なマダムといった人だったのです。

「近くを通りかかったので、息子の件での謝罪も含めて挨拶に参らせてもらったざます。お取込み中、失礼だったざましょうか?」
「そんなことはないのです。ガルペラ侯爵邸は手続きさえ踏んでいただければ、いつでもどなたでも歓迎なのです」

 ゼロラさんが最初にここへ来た時と同じ轍は踏まないのです。
 私の家臣達にもちゃんと言い聞かせているから、大丈夫な人しかやってこないのです。

「むむ!? そこのご婦人……そなたからは何やら武の気配を感じるのう……! そなたを見ていると、若き日のことを思い出す……!」

 チャン老師が物思いに語り始めたのです。

「修行のため、とある軍隊国家で鬼軍曹の指南を受けた日のことを……!」
「じいちゃん……。この人を見て何でそんなことを思い出すじゃん?」

 チャン老師も失礼なのです。こんな高貴なマダムが鬼軍曹だなんて――





「ホホホホ。流石は噂に名高いチャン老師ざます。武術師範をお辞めになっても、わらわの奥底に眠る"軍曹マダム"の魂を読み当てるざますとは」

 当たっているのです!? "軍曹マダム"って何なのです!?

 でも……それが本当なら、これは適任者の出現なのです!

「ザ・マス夫人! どうかこの台本を読んでほしいのです! そしてよろしければ協力してほしいのです!」
「台本? お芝居ざますか。どれどれ――」

 ザ・マス夫人は私が渡した台本にスラスラと目を通してくれたのです。

「――成程ざます。この"アンチ・ヤサイージェント"という役はわらわにやらせてほしいざます。必ずや良きものにしてみせるざます」

 思った通りなのです! これで役者が揃ったのです!
 公演はまだ先の予定なのです。ゼロラさんやラルフル君が帰って来た時に盛大にお披露目するのです!

「次のショーも盛大に盛り上げていくのです! オー! なのです!」
「うむ。わしも腕が鳴るのう!」
「俺が来た意味、結局ないじゃん……」
「ホホホホ、ざます」



「私もまた……"ヘンショ・クイーン"をやらないといけないのですね……」
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